語り部アロマが紡ぐ

「旅行」聞いていかれませんか。

 

2024年春 日本 高原のグランピングテントの中

 

チチッ。チュン。チュチュン。

「ふわぁ~。鳥の鳴き声が目覚まし代わりなんてめっちゃステキ。夕べは小さな星がすごくたくさん瞬いているのが見れてロマンティックな夜だったし、すっごい贅沢だ」

張りのあるシーツに埋もれながら、白に負けない輝きを放つ肌の両腕を頭上にあげて思いっきり伸びをするジェジュン。

しなやかに反る細腰に腕を回して、ぐっと引き寄せるユノの手はためらいもなくジェジュンの素肌をまさぐります。

「んー。もうちょっと寝よ。ジェジュン」

「寝よって?この手は何なのかな。ユノ」

「えっ。それ聞いちゃう?可愛いジェジュンに火をつけてるのさ。ねっ」

甘く優しく見つめてきて、クッと口角を上げるユノ。男の色気が駄々洩れです。

 

「ねっじゃない。開園前の花畑独り占めタイムを楽しむんだから。起きる!よっ」

腹筋で跳ね起き、ユノのたくましい腕を振り払います。素早くシャツをはおり、ベッドに横たわるユノの頬を白い指でそっと撫でて、ふんわり表情を緩め花のような唇を艶めかせます。

「起きて。ゆのぅ。ユノと腕組んで花が見たいなぁ」

「白昼堂々、外で腕を組める・・・いいな。それ。よし!起きるぞ」

がばっと起きて、引き締まった裸体を惜しげもなく晒し服を取りに歩くユノ。

「切り替えが素早い。いつ見ても良い男だね。ユノ」

 

うすく朝霧がかかる花畑を、帽子を目深に被ったユノとジェジュンは宣言通り腕を組んで広い園内を歩いていきます。5月初旬の平日、テント宿泊者だけがはるか遠くにいるだけです。

 

樹木を見上げれば、朝陽に新緑が透けてペリドット色に輝きます。一面に咲き誇るポピーやディジー。特にネモフィラは空の青さと、地上の花青が相乗効果を生み出し優しい蒼い世界が広がっていました。

 

ネモフィラの丘にふたりっきりでしばし佇みます。

「なんてキレイ!僕、やっぱり花が好きだなぁ。制作中のアルバムタイトルは『フラワーガーデン』なんだよ。うふん。本物だぁ」

大きな目をキラキラさせて笑うジェジュンを見つめるユノ。

「俺は花よりも華やぐジェジュンのほうがキレイだと思うぞ。ジェジュンが大好きだ」

スンとすました顔でテレもせず話すユノに、ジェジュンは頬を染めます。

「そういうことを外でさらっと言わないでよ。ドキドキするでしょ」

「アッハッハ。仕事じゃなくプライベートの旅行だからな。いつもより開放的になっているかも」

「うふん。旅行、お忍びで来れちゃうもんだね。今の日本は観光客が多くて、サングラスにマスクと帽子つけたら芸能人でも全然バレない。ありがたいなぁ」

「おう。この解放感、楽しもうぜ」

 

花公園前に予約していたワンボックスカーのハイヤーが待っていました。

「キム様こちらです!」

手を挙げて運転手さんが呼んでくれます。

「さあ、お乗りください。今入ってきたバスは韓国のお客さんを乗せているようです。降りてくる前に!」

「ありがとう!よろしくお願いします」

素早く車内に入ります。外からみたら真っ黒なスモークガラスは車内からは風景がクリアに見えます。

「VIP仕様でございます。収穫したばかりのイチゴとスイカ、白川水源のナチュラルウォーターのサービスもありますよ。今から大観峰にご案内します。しばし阿蘇の景色をお楽しみください」

「イチゴ!新鮮なイチゴだって!やった!めっちゃ嬉しい」

ユノさん、大喜びです。皿に載せられているカットされたスイカをピックで口に入れるジェジュン。

「スイカって夏の食べ物だと思ってた。味が濃くて甘味が強い。ミネラルたっぷりって感じだ。うっま」

「熊本には植木というスイカの名産地があるのです。4月から8月頃までがシーズンですね。水がきれいな熊本の野菜は特別に美味しいんですよ」

ドアが閉められ運転手はアクリル板で遮蔽されている運転席に移動します。お客様の会話は聞こえない構造のようです。

 

滑るように走り出す車窓には、阿蘇の広大な新緑の草原が陽光を浴びてくっきりとその姿を誇っています。放牧された牛の姿も見えました。

「キレイ。きれいって言葉しか出てこないよ。お天気が良くて最高の眺めだね。あっ、牛だ。自由に草を食んでるねぇ。夕べのバーベキューの肉って・・あれのお仲間かしら」

「ジェジュ。イチゴがめちゃうまっ。ミネラルウォーターなんて口に含んだら粘膜に沁み込んで飲み下す前になくなりそうだぞ。なんだ、これ」

「あっは。ユノったら。日本の食品は美味しいからつい食べ過ぎちゃって体重管理が大変になるよね。わっ!この水、沁み込むようで体が喜んでいる気がするねっ」

お互いにあーんと食べさせあったり、景色を眺めたり、ふたりのための空間を愉しみます。

 

停車し、ガチャンとドアが開きます。

「さあ、大観峰です。ここから阿蘇の火口をご覧になれます」

帽子とサングラスをつけ車外に降り立ちます。

「うわあ。すごい。眼下に街がある。鳥になって空の上から眺めているみたいだ」

「周囲の山々は阿蘇山の火口だってよ。街が火山口に収まっているって、どんだけデカい山なんだって話だよな」

「噴火口に街がある?え、怖くない?噴火したりしないの?」

ふたりで携帯を操作して検索してみます。

「大丈夫じゃないのか。ネットで見ると9万年前にできたカルデラ大地だってさ。でも、あそこから煙が出ているよーな」

「噴煙が出てるのは中岳だって。活火山って書いてあるよっ!ゆの」

「大丈夫だよ。観光地なんだから。危なかったら観光客は来られないはずだろ」

「そっか。そうだね」

 

「キム様。そろそろ昼食のレストランに参りましょう。予定通りお連れ様方と合流できると会社から連絡が入りました」

「よっしゃ!」

運転手さんの言葉に大きくジャンプして喜ぶユンジェ。

 

リゾートホテルのレストラン「メテオ」

全面に木があしらわれた茶色く広い空間は温かみがあり、給仕の人の礼儀正しさから格式のあるレストランだと感じられました。

パテーションで区切られたテーブルに案内されます。

「うきゃん。ひさしぶり!ユノ。ジェジュン。相変わらず仲がいいねえ」

「はーい。呼び出す所が日本とか。俺も来たかったから気が利いているというか、なんにせよ、ありがとね」

「おん。私たちを待たせるとは。いい度胸ですね」

着席しているユチョンとチャンミンの手元にはすでにビールが。ジュンスはワイングラスに入ったミネラルウォーターです。

「おまたせ。阿蘇の自然を堪能してきたんだ。みんなも見たでしょ。めっちゃきれいな新緑の世界」

「おう。プライベート旅行がこんなにワクワクするとは思わなかったぞ。海外旅行なんて仕事で何度も行っているはずなのになぁ。あっはっは」

「ジュンス!金髪だ。顔付きもシュッとしててカッコいいね」

「うはん。ライブやったばっかりなんだ!ダンスもバッチリできた!」

 「さすがカリスマ。昔は聞き流していましたが、この頃本当にジュンスはカリスマだと実感していますよ」

「うははん。チャンミンに褒められた。・・明日は嵐かな」


五人が揃って着席したところでオードブルが運ばれてきました。九重産の色とりどりの野菜サラダ、濃厚な味のパテ、ミニトマトの甘煮の3種盛りです。ジェジュンとユノはワインを頼みました。空になった皿が引かれ、すぐにトウモロコシの冷製スープが運ばれます。パン皿にスライスされたバケットが置かれ、少なくなった水は速やかに注ぎ足されます。

「うははん。パンあったかいし、おいしいね」

そしてメインディッシュのおおいた和牛フィレ肉ステーキの脇には、バターが溶けかかったポテト、甘く煮た人参、軽くローストされたアスパラ、ヤングコーン、トマト、ししとうが色鮮やかに積み上げられています。

「おうっ。ロースじゃなくフィレ肉なのが嬉しいねえ。おいら食べたら素直に太るから制限が大変なのよ~」

「ゆちょんは、実はゴム人間なんじゃないの?痩せたり太ったり変幻自在じゃん」

「もはや芸能人ではないと言われていると分かっていますか?ユチョン」

「はい。反省してます。自己管理ちゃんとやります。くすん」

 

デザートと珈琲が提供されます。

「美味しかったし、給仕してくれる人の心配りが秀逸で気持ち良く食べられたねっ」

「おお。うまかった」

 

「この後がメインイベントのドラムタオの野外ステージだよ。日本の友人がこっそり来られるなら絶対見た方が良いって太鼓判押していたから、みんなのスケジュールをチェックして今日で予定を組んだんだ。14時からの公演だって。早めに行こうか」

 

「じゃあ俺達のワンボックスカーに集合な」

「運転手さんが手招きしてくれるから、分かるよ」

それぞれバラバラにレストランから出て、車に乗り込み移動します。

 

野外劇場 TAOの丘

千年前から毎春行われる野焼きの効果で若緑色の草原が稜線をなめらかに辿る景色が拡がる。野外舞台の背景は雄大な阿蘇の五岳のみ。人工物が目に入らないシンプルな板張りの舞台は演者だけが彩りを魅せる、まさに天空の舞台です。

 

丘に建つ白い建物の中で、人目を避けるため早めにチケットを手に入れた5人。まだ館内に人はほとんどいません。

「開演15分前にならないと席には行けないようですね」

「2階になんか展示物があるって。行って見よ。ジェジュン」

「うん!ジュンス」

「おいらたちもいこっか」

「おう」

「ええ」

 

立ち並ぶトルソーが纏うのは華やかな舞台衣装の数々でした。

ジェジュンが目をキラキラさせて見て回ります。

「デザイナー・コシノジュンコが手掛けた衣装だって。華やかだけど、和風?着物風?なんかきりっとしていてめっちゃくちゃかっこいい」

ユノがジェジュンの後をついて歩きます。

「重厚感がある衣装だが、アーム周りは動きやすそうだ。素材も軽い」

 

ユスは首をかしげています。

「和太鼓演奏だよね。これほどの衣装がこんなに要るの?これじゃあミュージカルだよ」

「おいら、太鼓は上裸でハチマキ締めて叩いているイメージしかないんだけど~」

「ユチョーン。そのイメージとは違うんだって。感動するって聞いたよ」

「そっか。じゃあ、期待してみようかな~」

「世界に進出して公演するレベルなのでしょう。楽しみです」

 

階下からざわざわと観光客の声が聞こえてきました。

「開演前までテラスに避難しようか」

ルーフトップテラス

床板だけが景色の空間を切り取る開放的な、言い換えれば無防備な空間にテーブルと椅子だけがあります。

「うははん。はじっこ行くと山から落ちそう」

「空が広い、空しかない。めっちゃくちゃいい天気!目に入る景色が美しい!いや、空にこんなに感動できるなんて、ちょっとすごいかも~」

「ホントだね。旅先の風景ってキレイに見えるものだけど、ここのはなんかスゴイ。特別感があるねー。うはん」


「UVカットの帽子とパーカー、サングラスとマスクが必須ってホントだったね。顔隠すためじゃなくて紫外線から肌を守んなきゃだよ」

「ジェジュンは日に焼けるとヤケドみたいになって大変だからな。ちゃんとジッパー上げて守っておけ」

「あ、10分前です。行きましょう」

 

白い建物から出ても目の前に舞台は見当たりません。

「ん?どこに進めばいいんだ?」

「あそこにスタッフの人が立ってる。チケットを確認するみたい」

緑の草原の端まで歩いていくと、遠く阿蘇の五岳が見渡せます。

立っている場より低い位置に扇形のすり鉢状に下る客席があり、一番下に木の舞台が見えました。

「席は2列目か。席と席の間は一人分空けてあるんだ。へえ、ゆったり見られるね」

「俺達が最後っぽいから、最前列には客を入れないんだな。おおっ。舞台を独り占めしている気分だ」

「舞台、何もないよ。照明もマイクも幕もない。太鼓すらないよ~?」

 

14時になり開演のアナウンスが入ります。

舞台両脇の小屋から大きな太鼓が2台引き出され舞台中央に並びます。

太鼓を運んできた黒い服の人達は小屋に下がり、

代わりに白い袖なしの着物風衣装に重厚な朱赤の紐を数本組み紐のように飾られた帯を纏った女性がバチを手に厳かに歩いてきます。

左右から歩み寄った二人の女性がそれぞれの太鼓を前にバチを構えます。

ヒュッ

息吹を合図に同時に叩き響き渡る太鼓の振動

屋根も囲いもなく、阿蘇の自然に鳴り渡る波動を正面から受けとる人間も振動します。

女性であるにも関わらず力強いバチさばき。思わず見惚れてしまいます。

 

太鼓の大きな音がカモフラージュになるのか、数人の男性演者が黒と銀の衣装を纏い、静かに舞台上に数個の太鼓を配置しバチを構えます。

 

揃ったところで、女性の息吹を合図に一斉に太鼓を打ち鳴らします。

大太鼓の上に跨がって、ながいバチで演奏したり、ベルトで腰に太鼓をくくりつけ袴のような衣装を大きく翻し、相互に移動しながら演奏したり、舞台袖の小屋に引っ込み再度登場するときには衣装を変えてきます。12名程の演者が入れ替わり、立ち代わり太鼓の演奏を披露します。

太鼓を伴奏として、袴を外し動きやすい衣装の男性演者が銀色の長い棒を持って、タンと床に打ち付けたり、大きく車輪のように回したり棒術の舞を魅せることもありました。

女性は衣装を変えて登場し横笛を吹きます。口元にマイクがあり音色は明瞭に会場に響き渡ります。遠く天に届けと言わんばかりに。音色が止まり、笛に添えていた両手を一つにまとめてから口元から降ろす仕草がとても美しく儀礼的でした。

 

後半になると客席にも拍手の合いの手を求めてきて演者と観客との一体感も楽しめました。次が最後の演奏になりますと説明されて初めて45分の公演時間が過ぎ去ろうとしていることに気が付きました。隣と話すには遠すぎる距離が、ひとり舞台に集中できたようです。

 

ワンボックスカーで帰路につく5人。

「うはん。良かったねー。太鼓の演奏もすごかったけど、衣装が素敵で、何より絵になる舞台だった。写真撮影禁止なのが残念に感じるくらい、どこを撮っても美しかった。雄大な自然が背景の天空の舞台ってフレーズは伊達じゃないね。まさに天界の神に奉納しているかのような和の舞台だったなあ」

「うん。神秘的でステキだった。異世界みたいだったね。僕もあの舞台で歌ってみたいな。どんだけ派手な衣装着ても様になりそうだよね」

 

「ジュンスは舞台から落ちるからダメだよ~ん。手すり無かったぞ」

「ユチョンは45分も体力が持たないね。途中で息切れして小屋から出て来なくなるな。うはん」

「ああ、想像できますね。標高1000mのうすい酸素じゃあ、まずムリでしょう」

「言い返せないのがくやしい。くすん」

 

「演者が本気で全力でやっている感がよかったな。強い日差しに負けずに舞って演奏して観客を魅了していて。俺達も11月からの日本のライブ頑張んなきゃだな。チャンミン」

「げっ。さらに頑張れと?あなたみたいな体力お化けと一緒に動かされる身になってくださいよ。私は要領よくやりたいです!」

「本気でやるから感動するんだよ。チャンミン。手を抜いちゃダメだよ」

「ジェジュン。あなた。ユノと一緒にステージに立ってごらんなさい。全く。私の苦労を思い知らせてやりたい」

「チャンミンは俺より2つも若いんだから頑張れ。なっ」

「ユノは見た目が若返っているじゃないですか。あなたバケモノでしょ」

「うふん。僕もそう思う!ユノはいくつになってもステキだよ」

「ジェジュァ。可愛いジェジュンがそばに居てくれるからだよ」

「ゆのぅ」

(((相も変わらず万年新婚夫婦かよ!)))

 

 

試練を乗り越え、大舞台に響きわたる煌めく5人の神のハーモニーが聞ける日を

心待ちにしているファンがいることを確認し合える6月10日

大切なこの日に、我らの願いよ。

世界に届け。

 

Fin.

 

過去作品の目次はこちら

 

 

語り部アロマが2012年6月からこのブログで物語を描き始めて12年が経ちました。

これまでの全作品紹介のページはこちらです。

 

王冠1過去作品紹介ページ王冠2

 

ユンジェペンにとって6月10日は特別な日です。

愛しいユンジェの仲睦まじい様子を描きたいと思い小さな作品を語らせていただきます。2024年春のユンジェを想像して描いてみました。

 

22作品目となる「旅行」全1話

 

それでは、明日の朝8時

一緒にユンジェ結婚記念日を祝いましょう赤薔薇

 

 

 

 

語り部アロマが紡ぐ

「象る」聞いていかれませんか。

 

2023年春 韓国

 

ユノside――――

 

ユノとジェジュンの愛の巣であるマンションのリビング

 

「ジェジュァ―。ただいま!やっと休みだ。やっと帰ってこられた。ほんとにドラマの撮影ってなんでこんなに詰め込みでやるんだろ。体力バカと言われる俺でも、ん?寝ている・・な」

180㎝越えの男が横になっても手足が伸ばせるほどの大きな白いソファーに横たわり静かな寝息を立てている麗人。ユノは床に胡坐をかいて座面に手を当て、その上に顎をのせてじっくりと眺めます。

 

白いTシャツの上に桜色のふんわりしたシャツを羽織った美麗な人。春の柔らかな日差しと淡い色の服がレフ版のように光を反射し、触れれば吸い付くようなキメの細やかな白い肌はほんのり発光して、まるで祝福の光の中に存在しているようです。

顔のパーツの完璧な配置は、神による極上の造形物であり、美の化身といわれるのも頷けます。長い睫毛が白い頬に影を落とし、あわく開いた紅色の唇は艶やかで、丸みがあり、そこから醸し出される儚げな雰囲気は、出会った十代の頃から変わらず誘われているようで、目が離せなくなる。その姿はもう何年も目にしているのに、目が合うたびに心臓がドキンと大きな鼓動を響かせる。大勢の中にいても、ジェジュンにだけライトが当たっているかのように浮かび上がって見えるのは、惚れた弱みではないことは同意を示す周囲の声からも明らかだ。でも、この唯一無二の美人は、俺のジェジュンなんだよなと優越感に浸りアーモンドアイを細めた。

手を伸ばしたくなる衝動を抑え込み、今少し、ジェジュンの寝顔を堪能しようと決めたユノは自身のぽってりした唇に艶を与えた。

 

「起こしてしまうと、饒舌に言葉を紡ぐ柔らかな唇と、好奇心を称えた黒曜石の瞳が活き活きと動き出してしまうから、ゆっくり眺められないんだよな。どうしても愛しさが溢れ、抱き寄せて唇を塞ぎたくなるからな。

 

37歳になっても美しいと見惚れさせる顔立ちを保っているのがスゴイよな。今は前髪短めで眉くっきりで凛々しさが勝っているけど、10代の頃はサラサラな黒髪が顔にかかるような髪型で、白い肌はやわらかそうで、いい香りがしそうで、なんだっけ。フェロモン?ジェロモン?を放出している!ってネットに書かれたな。俯いた顔でも、目元が髪で隠れていても最上級の美貌だと知らしめて、ファンにため息をつかせるとはどういうこと?天使なの?なんてコメントもあったよな。

 

肌がキレイなのはもちろん好きだが、この花びらみたいな唇がいい。ほんのり口を緩めて花の色に染められてさ、キスを誘っているとしか思えない。なーんて、考える奴は俺だけじゃなくて山ほどいるんだ。昔からジェジュンが移動する時はSPを増やさなきゃいけないもんな。あー。そういえば、どっかのバカに際どい距離まで迫られたことがあったな。思い出してもムカつく。俺のジェジュンなのに!気安く触ろうとか考えるな。全く。

 

鼻筋もスッキリしていて、顔のパーツの配置が黄金比なのか、遠目でも整っているから一際目立つ。いつまでもその顔を、その姿を見ていたいと思わせる。ジェジュンの傍にいると、周囲の空気まで華やいで、そのオーラを自分もあやかりたいと人が寄ってくる。こいつの人懐っこい性格や話し方も相まって取り囲まれているのが常だな。男所帯の兵役中ですら取り巻きができていたっけ。なあ、おかしくないか?

 

でも、一番好きなのは瞳だ。くっきり二重の大きな目で涙袋もぷっくりしてて、上目使いで見つめられるとかなりヤバイ。人より黒目が大きいのか、すごくキュートでさ、でも優しさが感じられて、時に切なさを込めたような眼をするときなんか、心臓が鷲掴みされたようになる。思い出すと心臓がバクバクする。あー見たい。見つめられたい。起こしたい。

 

童話だとキスすれば姫は目覚めるよな」

 

男二人分の体重にソファーがぎしりと軋む。

美麗な横顔と人から評価されるユノ。吐息が触れるほど近寄り、眠り姫の唇を厚い唇でしっかり覆い、ちゅっと音を立て離れた。

眠り姫は、ゆっくり瞼を上げ、黒目がちな瞳に光が入る。頬がくっとあがり、口角を引き上げられた唇が弧を描く。

 

「うふん。お帰り。ゆの。姫とか言われてめちゃ嬉しい!ユノの眼差しが僕の顔を辿って褒めてくれるのが嬉しくって、もっと聞いていたくて、ちょっと狸寝入りしちゃってたけど。もうドキドキだよっ。出るわけないけど女性ホルモン出ちゃってる気がする。あっは」

 

両腕をユノの背に回して自分に引き寄せるジェジュン。

ジェジュンの頬がユノの長い首筋にぴったりと沿い、互いの体温と常より速い鼓動を伝え合う。熱いのは肌なのか心なのか。

クスクスと笑う声が、ふたりの部屋に響いていた。

 

 

ジェジュンside―――――

 

「もうすぐ着くってLINEがあった。ああ、もう本当に久しぶりだ。5日後に休みが取れそうだって聞いてから、僕のスケジュールを調節して休みをもぎ取り、ヘアサロンとエステに無理言って予約ねじ込んで、今日の為に準備したんだから!

キッチンには昨日からタレに漬け込んだ肉や自家製のキムチ、日本のトウモロコシやスイカに卵、納豆に豆腐、山芋も手に入れてある。ユノはドラマの撮影で、ずっと冷めた弁当ばかりだろうから、焼き立ての肉や、温かくて滋養のある低カロリーの日本食も食べさせてあげたい。

もちろん、僕自身のお手入れも念入りにしたんだぁ。全身の金箔パックは、血の巡りが良くなって、マイナスイオンや微弱な電流が肌の細胞を活性化してくれるんだって。実際、パック後はしっとりして細胞一個一個がパンッと張って輝くからめちゃめちゃキレイ!髪もトリートメントして艶々のサラサラだし、いい匂い。うふん。ユノにきれいだと思ってもらえたら僕はすっごく幸せ!ああ、あの真っ直ぐ射抜くようなユノの眼差しに見つめてほしい。キレイだって褒められたい。

 

ユノはめちゃくちゃいい男だからモテる。老若男女問わず。僕のライバルはすごく多いから、すこしも気が抜けない。何時も、どんな時でも、ユノの眼差しを惹きつけたいんだ。誰よりも魅了したい。

ユノの視線が僕の目や口や体を辿る。そうして僕は僕のカタチを象られて、自分の境界線が分かる。大気と僕自身の境界を認識できるのはユノがいるからだ。視線で僕を辿って、その骨ばった長い指が僕の肌をなぞる。僕は僕として存在していると安心できるんだよ。

もし、世界に自分しかいなくて、鏡も水面もなかったら、僕は自分の瞳の色も分からないし、美しいのかどうかもわからない。声を出しても応えてくれる人がいなければ会話もできない。笑ったりできそうもないからすごくつまらないし、きっと寂しくてすぐに死んでしまうだろうな。

でも、僕は大勢の人間がいるこの世界に生きている。

ユノがいて、チャンミンやジュンスやユチョンがいて、1日に日本と韓国を3~4回往復したりするほど多忙だったけど東方神起として華やかに舞台に立った日々の同じ記憶がある。それを見守ってくれているファンの眼差しや熱い思い、声援、ライブ会場の赤い光の海や、鼓膜のみならず臓腑をも震わす音響が感動を伴って記憶に残っている。それは、心よりも深いところにある魂にまで刻み込まれているんだろうな。思い出すと沸々と身体の奥底から歓喜が溢れてくる。すごいことだなぁ。

人の想いは永遠だと聞いたことがあるけれど、これほど多くの人々の眼差しに捉えてもらえた東方神起は幸せだ。その時が存在していた事実は消えない。今は叶わなくても、5人が揃って舞台に立ち、5つのスポットライトに照らされながら紡ぎ出すハーモニーに、ファンたちの高らかな叫びと細い嗚咽と手が痛くなるほどの拍手で迎えられる未来を想像する。願いは具体的に思い浮かべたほうが叶いやすいから。

ああ、これは、すごく幸せな時間だ・・・」

ソファーに倒れ込み甘美なイメージに身を委ね、いつしか眠りに落ちるジェジュン。

 

ユノがリビングに足を踏み入れるまで、あと少し。

 

 

おまけのユスミンside―――――

 

「この光景を目にした感想を述べなければ出られない部屋」に閉じ込められたチャンミンとジュンスとユチョン

 

「おん。これは、なんの冗談ですか?」

眉を吊り上げ、口をへの字に曲げてもなお、秀麗な美貌を誇る男チャンミンが呟く。

 

「うははん。ヘンだよねー。同じ部屋にボクら3人がいて、宙に浮いている壁みたいなスクリーンに映像が映し出されて、ユノとジェジュンの独り言を聴かされているなんてヘンだよねー。ボク、ファンミーティングの準備のため車で移動中デシタのにー」

黒のキーネックシャツに黒のジャケットと、空港ジュンスと言われた黒歴史とは違い、ちゃんと似合う服を着ているジュンス君。

 

「きっと夢だよ。うん。さっさと感想を言って夢から醒めればいいだけのことだよ。たぶん」

太ったりやつれたりイケメンだったり、ホントに同一人物か?と問いたくなる演技派な男ユチョンは、同時におおらかで適応力に秀でていました。

 

「ユチョーン。割り切るのが早い。でも、感想って・・・うははん。こんな光景、5人で合宿している時と変わんないカラ。ユノとジェジュンがいちゃいちゃしているのは公然の秘密ってやつじゃん。空気と一緒と思わなきゃ、やってられなかったよねー。だから今更感想とかないデスヨ。ボク」

 

「ジェジュン、美容に関して特に何もしていませんとか言ってなかったっけ。何?全身金箔パックって。仏像かい。ああ、だから歳取らないんだ。ふーん」

 

「・・ユチョン。もはや投げやりですね。

ユノのジェジュン狂いは長年傍で眺めてきたから知ってます。ジェジュン切れになると猛獣と化すから定期的に補充させないと、ユノが使い物にならなくなりますからね」

 

「ジェジュンは猛獣使いってか?」

 

「はん。飴と鞭は使いようだということです。

ジェジュンにしてもユノは精神安定剤ですよ。世話好きで人に構いたがるくせに、ユノという特定の人にだけ構い倒してほしがる困ったちゃんですから。

それぞれ単品で放置していたら人が群がってしょうがないですから、ユノとジェジュンはセットにしておいた方が世界は平和なんです」

 

「ユンジェは世界平和なんだぁ。うははん。いいね!」

「てか、ユンジェを操るチャンミン。最強じゃね」

「その通りですが。何か?」

「ナンデモアリマセン。でもさ、ジェジュンは5人を望んでくれているんだね」

「ボクもデスヨ。健康に、末永く好きなことをし、ファンの皆さんとずっとコミュニケーションがとれるアーティストになりたい。うはん。その一場面で、5人で歌えたらステキじゃないデスカー」

「あはん。そういうのもいいな」

「私としては、もっと派手にしたいですね」

 

3人が感想を述べたところで、カッシャーーーンと金属音が響いた。

「あ、帰れそうだねぇ」

「うはん。よかったデスー」

 

「兄さんたちのきらびやかで美しい瞬間をそばで見守ることができて、とても嬉しかったです」

小さな声で呟き微笑んだチャンミンには、気が付かない振りをしてあげるユスでした。

 

 

試練を乗り越え、大舞台に響きわたる煌めく5人の神のハーモニーが聞ける日を

心待ちにしているファンがいることを確認し合える6月10日

大切なこの日に、我らの願いよ。

世界に届け。

 

Fin.

 

過去作品の目次はこちら

 

予告「象る」

 

語り部アロマが2012年6月からこのブログで物語を描き始めて11年が経ちました。

これまでの全作品紹介のページはこちらです。

 

ユンジェペンにとって6月10日は特別な日です。

愛しいユンジェの仲睦まじい様子を描きたいと思い

小さな作品を語らせていただきます。

2023年春のリアル設定のユンジェを想像して描いてみました。

 

21作品目となる

2023年ユンジェ結婚記念日小説「象る-かたどる-」全1話

 

それでは、明日の朝8時

一緒にユンジェ結婚記念日を祝いましょう。

 

 

 

語り部アロマが紡ぐ

「魅力」聞いていかれませんか。

 

2022年5月 韓国

 

ユノとジェジュンの愛の巣であるマンションのリビングで、ジェジュンはYouTubeの動画を大きな壁面に投影して見ています。

「キャー!韓国でキングと呼ばれているのは、5人の東方神起とBIGBANGのふたつのグループ!でしょ。でしょ!

で、MR除去した生歌でわかる、一人一人の実力が完璧だって!うんうん!その通りだよっ。ユノーーー。これ、一緒に観よう!!」

ジェジュンのよく通る明るい声を聴いて、お風呂上がりのユノがバスローブのままリビングにやってきました。

「ジェジュン。どしたの?」

「うふふ。見て。ユノの大好きな『ミロティック』だよ!」

一時停止していた動画をスタートさせます。

 

流れてきたのは伴奏なしのジェジュン、チャンミン、ジュンス、ユチョン、ユノの歌声と透過性が高い映像。自然と歌声のみに集中します。

「2008年頃のライブ映像か。14年前だから俺は22歳か。めちゃ若いな」

「うん。ユノはナイフみたいにシャープでさ。セクシーだよね。この頃ってめちゃめちゃ忙しくって移動中にしか睡眠取れなかったよね。今考えると恐ろしいスケジュールこなしてたね」

「ああ。若いってすごいよな。なんか、時代のエネルギーも熱かったし、俺達の情熱も抑えきれないくらい溢れてた」

「ペンの熱狂ぶりも凄かった。ちょっと引くレベルのことも、あったねえ・・・」

「今みたいにマナーを守るなんてなくて、自分の感情をぶつけるのが当たり前な風潮だったからな。あっはっはっは」

「・・・そうやって、笑い飛ばせるユノの精神力。惚れ惚れするよ」

「おっ。今更か。なら、もっと魅せつけなきゃいけないかな。俺のジェジュン」

バスローブの胸元をはだけさせ、ぐっとジェジュンとの距離を詰めるユノ。

 

ユノの長い頸に白い腕を絡めて、熱いキスをしかけてきたのはジェジュンでした。

少し前まではドラマの役作りのためにがっつり筋肉がついた太い腕でしたが、トレーニングを止めた今は、滑らかな白い肌が際立つ、本人曰く赤ちゃんみたいな腕に戻っています。

 

細く筋張った長い指がその腕を掴みます。

「ジェジュンの肌は、手に馴染む。やわらかくて、あったかくて、時に紅く熱くなる・・・。俺はぞくぞくするんだ」

 

ユノの言葉に、花弁のような唇が艶やかに光ります。

「僕はね、ユノの声が好きだよ。こうして身体を密着させるとね、波の音みたいに僕に響いてくる。そして僕はユノと同調するんだ。その感じがたまんないんだよ」

 

ユノのアーモンドアイの瞳は、力強く真っ直ぐで、相手の奥底まで見通すようです。

「ジェジュの声は晴れやかで、柔らかで、ずっと聞いていたい。俺の傷ついた部分が治っていくみたいだ」

「あっはっ。じゃあ、僕はユノの薬箱だね」

「ああ、そうだ。ホントは俺だけのジェジュンでいてほしいけど、なにせ、この天使の翼はデカくて、俺の腕の中だけに留まっちゃくれないからな」

「うふん。僕の心の一番いいところに住んでいるのはユノだよ。ユノがいるから僕はがんばれる」

「俺もジェジュンがいるから何度でも立ち向かえる。俺の情熱の源はジェジュンだ」

「大好きだよ。ユノ」

「愛してる。俺のジェジュン」

 

ベッドでまどろむジェジュン。

ミネラルウォーターのペットボトルふたつを、キレイに並べられていた冷蔵庫の中から持ってきたユノは、ひとつを手渡します。

心地よくヒンヤリした水で、乾いた喉を潤したジェジュンは話します。

「2020年からのコロナ禍で時代の雰囲気が大分変ったね。日本での活動が再開できたけど、今流行りの曲は、リズムやアレンジが主役って感じで、軽くてノリがいいけど、あっという間に消費されていく。人気投票とか動画の再生回数とかの数字で優劣が決まるような風潮だけど、それに倣うのは違う気がするんだ」

 

水を飲み干したユノが答えます。

「ああ。俺達は、東方神起は、誰にも真似できない唯一無二の存在として、いつも全力で最高のパフォーマンスを提供し続けるアーティストだ。

韓国人だけど、日本語で歌って、日本語で挨拶できる。外国語で歌っているはずなのに涙を誘うバラードや、心に染み入る歌詞が日本人に好感を持って迎えてもらえる。ポージングの美しさは長年の努力の積み重ねの賜物だし、ライブで臨機応変な対応ができるのも、こなしてきた場数が違うからだ。何より、カッコいいを体現して維持している。何なら、観客の予想を超えてくるところが俺達の魅力だろう。

プレッシャーは凄いけど、応えてくれる観客がいるから頑張れる。

2004年熱狂のデビューと日本での活動、2009年休止があって、2011年再始動、そして2017年から2年間兵役を経て2018年にrebootしただろ。長いドラマティックな歴史をペンのみんなも知ってくれている。俺達がダメージ受けてへこんでいる姿や華々しくライブ活動している姿も知っている。確か、サジンを一番撮られたアイドルってギネスに載ったこともあったな。

インターネット上にはいろんな映像が星のかけらみたいに散らばっていて、アクセスすれば見返すことができる。共有できるんだ。面白いよな。がむしゃらにかんばって来た過去の東方神起を見て、ペンになる人もいるだろうし。常に全力で頑張ってきてよかったと改めて思うよ」

「うん。その通りだ。ユノは情熱財閥だね。東方神起のリーダーはやっぱりユノだよ。うん」

「東方神起のリードボーカルはジェジュンだろ。そういえば、『六等星』って歌、良かったぞ」

「うん。ジュンスと5人の頃の味をだそうとハーモニー響かせて、すごく心地よくて、これだよ、これ!気持ちティー!って感じで歌った。楽しかったよっ。

ジュンスもねっ、ミュージカルの役じゃなく、歌手シアとしてテレビに出られて嬉しいってめっちゃ喜んでた。あっはっ。ただ、DEATH NOTEのミュージカルで忙しくって声の調子が良くなくて残念がってた。本調子なら、ボクの声はもっとのびやかでキレイに響き渡らせられるのにってさ。」

「あっはっはっは。ジュンスが本調子ならもっとすごいんだ。さすがだな。それにしても、『気持ちティー』って新しい言葉か!ジェジュンは天才だな。外国語なのに、こんなに使いこなせるなんて!ホント、すごいよ」

「集中して頑張れるもの、コツコツ努力を積み重ねられるものが、僕は歌だったり、言葉なんだ。そういえば、チャンミンはこの頃ゴルフに夢中なんだって?」

「そうなんだ。仕事の前でも、ちょっとでも時間があけば練習に行っちゃうぐらいハマっている。もしかして仕事よりゴルフの方が好きなんじゃないかと思う時もある」

「うふん。大丈夫。『東方神起』が一番だよ。僕たち5人ともねっ」

 

「そうだな。そういえば、ユチョンはプロデュースの仕事をするって。自分が前面に出て俳優活動すると、いやがらせがすごいから、一歩引いて動くことにしたそうだ」

「俳優同士の足の引っ張り合いってコワイね。でも、ニュース画像みたけど、ユチョン、いい表情で笑っていたし、体形もいい感じに仕上がっていたから安心した。30代で裏方に徹することないもんね。プロデュースした子たちが活躍すれば、ユチョンにも注目が集まる。また表舞台に出られるよ」

「ああ。神の名を与えられた俺達5人の魅力は、まだまだこれからさ」

 

試練を乗り越え、大舞台に響きわたる煌めく5人の神のハーモニーが聞ける日を

心待ちにしているペンがいることを確認し合える6月10日

大切なこの日に、我らの願いよ。

世界に届け。

 

Fin.

 

過去作品の目次は前記事

 

 

語り部アロマが2012年6月からこのブログで物語を描き始めて10年が経ちました。この節目に、これまでの全作品を紹介させていただきます。

 

2012年6月「東方城物語」 

 

   最終話 全10話

音楽の神々が住まう魔法の城 広間には5つの玉座がございます

 

2012年6月「来世への約束」

 

   最終話 全10話

フランス革命前夜、貴族の子息ジェジュンと平民ユノと交わした小さな約束

 

2012年8月「ルネサンス幻影」

 

  3-1  4-1   6-1  7-1  8-1  9-1 9-5  10-1  11-1  11-5  11-10  11-15   12-1   12-5   12-10   13-1   14-1   15-1  16   17-1  17-5   最終話 全80話

文芸復興華やかなりしイタリアでの5人の日常を、今に伝わりし芸術品を織り交ぜて描きました。イタリア旅行気分を味わえます

 

2012年12月「そらのはなし」

 

  5  10 15   20  最終話 全25話

アンという女の子の呟きから、大天使を5人に見立て、空の上での彼らの使命を描く

 

2013年2月「バンパイアkiss」

 

 5 10  15  20  最終話 全26話

Mainの世界観に触発された作品。バンパイアのジェジュンと、人間ユノとの関りを描く

 

2013年3月「桜夢」

 

 5 9  最終話 全11話

平安の世の桜の精霊と若人の一途な、そして刹那な愛の姿

 

2013年5月「極上の未来」

 

 5   10  15   20   25   30 35   40   最終話  全45話

14才のジェジュンが本当の幸せを手にするまでの成長物語

 

2013年8月「雨の記憶」

 

 5 10    15   20   25   最終話 

全31話

ジェジュンの言葉に感応し、

紡ぎ出した龍神雷神風神

天上界と人間界を結んだ壮大なファンタジー

 

2013年11月「リトルラブ」

 

 5    15 20   25  最終話 全28話

幼い5人のわちゃわちゃと、青年期の5人のチームワークが秀逸 

 

2013年12月「そらのはなしエピソード」

 

 最終話 全4話

天使へ願いを届けた小犬の物語

 

2014年3月「地上に花 夜空に星」

 

  5   10   15      20   25   30  40   最終話  全45話

麗しい5人が通う東方高校。腐女子の目線で彼らを愛でましょう。東方神起腐女子入門書ともいえます

 

2014年11月「東方日誌」 

 

  5 10  15        20    25 30     35     最終話   全40話

韓国ドラマ「夜警日誌」の後日談。東方街でのユンジェの恋模様と街を守る5人の活躍を描く

 

2016年7月「石想アドバンス」

 

  3  6  10  15    20   25   30    35    45    55    60 65   70   75    80    83     85    90    95    100   105   110    116    120   125 130    最終話 全136話

パワーストーンの波動が人に力を与えてくれる冒険物語。序盤の恋に目覚めていくジェジュンの葛藤が愛らしく、5人のわちゃわちゃが盛りだくさんです

 

2017年6月「天の羽衣」

 

  5 10   15   20   最終話 全22話

天人ジェジュンが女装姿で地上に降り立った。領主ユノとの物語

 

2018年6月「水の想い」

 

  最終話 全2話

ユンジェ結婚記念日小説 「雨の記憶」の設定に寄せて

あなたの奏でる「ひとつの音」とは

 

2019年2月「輝きの姫」 

 

  3 6   9 12 15   20   24   30    35    40   45    50   55    60   65    70   75  80   85   89   95   101   105    110   115    120    122 125   130   最終話 全136話

「陽水金連なり、光らぬ石が積み上がる時、反転した漆黒により祈りは封じられ、太陽は熱を失う。荒廃の世に新たな光は灯るや」という言い伝えを紐解いていくファンタジー冒険物語。ドラゴンや妖精のいる世界で、戦士や賢者、魔法使いとして、呪いの解放に挑む5人の姿です

 

2019年6月「朝食」   全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

2020年6月「電話」   全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

2021年6月「蜜月」   全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

2022年6月「魅力」   全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

2023年6月「象る」   全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

2024年6月「旅行」  全1話

 

ユンジェ結婚記念日小説 リアル設定

 

ユンジェペンにとって6月10日は特別な日です。

愛しいユンジェの仲睦まじい様子を描きたいと思い、小さな作品を語らせていただきます。

2022年5月のリアル設定のユンジェを想像して描いてみました。

20作品目となる「魅力」全1話

それでは、明日の朝8時

一緒にユンジェ結婚記念日を祝いましょう。

 

 

 

語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第136光最終話」聞いていかれませんか。

 

テイト国 王宮

 

5人はジュンスの館で睡眠を取った翌朝、魔法で王宮にやってきました。

白い革張りの大きなソファーが半円形をかたどって置かれ、白い壁には大きな絵が飾られています。背の高い金のスタンドライトがアクセントになっています。

「ここは、特級戦士の称号を授けられた時に魔法で移動させられた場所だ」

「うん。ユノ。黄金のブレスレットを付けてもらったよね」

 

「ようこそ。暗黒時代を終わらせた特別な勇者たちよ」

白いソファーから立ち上がり微笑む30代の男性は5人に歩み寄り、皆にソファーに掛けるよう促します。

「私はテイト国を統治する者のひとりで、ジュノと申します」

 

「賢者チャンミン。あなたの豊かな知識と素晴らしい閃きは多くの困難を救いました。ありがとう」

 

「勇者ユノ。あなたの真摯な思いは周囲の者の思いを動かすほどでした。よき方向へ導いてくれてありがとう」

 

「勇者ジェジュン。あなたが生来もつ快活さと感性の高さに加え、他者を救いたいという大いなる愛を備えた。その愛が奇跡を生んだのです。ありがとう」

 

「神官ユチョン。あなたの繊細な感情は、他者の心の機微まで触れることができる。今少しの休養の後、また神官として務めてください。ありがとう」

 

「白い魔法使いジュンス。あなたの友を想う一途な心が、暗黒時代を終焉に導いた。ありがとう」

 

「特別な勇者の証として、王国からダイヤを散りばめた金のブレスレットを授けます」

パンと手を叩き合図をすると、ブレスレットとドライバーが載せられたビロードのトレイが五つ運ばれていました。

それぞれ手首にはめてもらうユノ、ジェジュン、チャンミン、ユチョン、ジュンス。

ユノとジェジュンは2連のブレスレットになりました。

 

「ジュノ。俺は神官に戻れるのかな?」

「もちろんです。ユチョンの強い集中力を持つ素晴らしい精神力は他に類を見ないものです。もう、ひとりで苦しみを抱え込んだりはしないでしょう。家族がいる。友がいる。仲間もいる。周囲との交流をもっと自由にもって、おおらかな心で仕事に励めばよいのです」

「うん。わかった」

 

「あ、ジュンス。シャッキーが寂しがっていますから顔を見せてあげてください」

「おう。愛しのシャッキー!今行きますよー」

ジュンスは部屋を出て行ってしまいました。

「シャッキーって?」

ジェジュンが聞くとジュノが答えてくれました

「ジュンスの犬なのですが、家族に任せっきりなのです。悪い飼い主でしょう」

「ジュノとジュンスが家族?」

「はい。私とジュンスは双子です。二卵性なので似ていませんが」

「へえ、テイト国を統治するジュノと双子なんだ。え・・・ジュンスって」

「自分には国の統治能力はないからと、幼少期にはすでに宣言しておりました。外に飛び出し、白い魔法使いになりましたね」

「一歩間違えば、ジュンスは王様ってこと?」

ちょっと苦笑いで答えるジュノ。

「そう、ともいえますかね」

「えーーーーっ」

 

王都の森

多くの樹木と小川がある森林公園にやってきたユノとジェジュンとチャンミン

雪は解け、気温は徐々に上がり、もう冷たい風に凍えることはなくなりました。木々は一斉に新芽を膨らませています。木蓮はいち早く白い大きな花を枝に付け、桜の木は枝先に蕾を付けて開花の時を今か今かと待っているようです。

「花が咲くと、なんかうれしいね」

ジェジュンが木蓮を見つけ微笑みます。そんなジェジュンの顔をじっと見つめるユノ。

「花がきれいだと笑うジェジュンの方がずっときれいだ。大好きだよ。ジェジュン」

「うふふ。好きって言われるとハートがキュンとするね。しあわせだなあ。僕もユノが好きだよ」

 

「俺のお姫さま。輝きの姫。やっと捕まえた」

熱いまなざしを向けてくるユノに、ちょっと申し訳なさそうに話し出すジェジュン。

「あのね。ユノ。僕、白い魔法使いになりたいんだ。だからしばらく修行にいかなくっちゃいけないんだけど」

「えーーー。やだ。離れ離れになるのはいやだ。そうだ。俺もその修行受ければいいんじゃねえか!」

「もう!ユノは魔法使いになる気ないくせに」

「そうだけど。ジェジュンと離れるのはヤダ」

「駄々っ子か!」

 

ユノとジェジュンのじゃれ合う姿を、すこし距離を取ってベンチに座り、

寂しそうに見つめるチャンミンに、ひとりの男が声をかけます。

「若者よ。君は私が恋人を病で亡くした時と同じ目をしている。つらいね。でも、その心を少しでも軽くできるかもしれないよ。私が詠んだソネットがあるんだが、聞いてみないか?」

「はあ。どうぞ」

チャンミンの隣に腰かけた男は厚い本を膝に置き、あるページを開き読み上げます。

 

「君を夏の日にたとえようか。

いや、君のほうがずっと美しく、おだやかだ。

荒々しい風は五月のいじらしい蕾をいじめるし、

なによりも夏はあまりにあっけなく去っていく。

時に天なる瞳はあまりに暑く輝き、

かとおもうとその黄金の顔はしばしば曇る。

どんなに美しいものもいつかその美をはぎ取られるのが宿命、

偶然によるか、自然の摂理によるかの違いはあっても。

でも君の永遠の夏を色あせたりはさせない、

もちろん君の美しさはいつまでも君のものだ、

まして死神に君がその陰の中でさまよっているなんて自慢話をさせてたまるか、

永遠の詩の中で君は時そのものへと熟しているのだから。

ひとが息をし、目がものを見るかぎり、この詩は生き、君にいのちを与えつつづける」

 

じっと聞き入っていたチャンミンの眼に涙が溢れて零れ落ちます。

「あれ、なんで涙が?目の奥が熱くなって・・・」

しばし、流れる涙をそのままに、心の中でソネットを反復してみるチャンミン

深く息を吸って、ふーーとはいていきます。

「私の恋心は、生きている限り消えない。そしてジェジュンを見るたび、思い出すたびに私の中で永遠の命を吹き込み続ける」

「さよう。尊い恋心を消す必要はない。君の中で永遠の命を持たせればいい。そして君の輝きの一つとなるのだ」

「なんだろう。悔しさが消えて、奇麗なジェジュンが微笑んでいる。すごく暖かい」

「うまく昇華できたようだね。よかった」

「ありがとう。あなたの名前は?」

男は厚い本を抱え直し、立ち上がります。

「我が名はウイリアム・シェイクスピア。ではな。若者よ」

 

さあ、ここらで物語の幕を下ろすことにいたしましょう。

2年半の長きにわたる連載を、ご愛読くださった方々に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

それでは、皆さま。ごきげんよう。

語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第135光」聞いていかれませんか。

 

テイト国 さいかい街

 

昔語りのおばあさんの家を後にした5人は、さいかい街の食堂に行きました。

ユノは以前食べられなかったチキンライスを注文します。

チャンミンとユチョンはラーメン。

ジュンスはひつまぶし。

ジェジュンはかつ丼です。

 

食事を待ちながら、ジュンスは皆に相談します。

「中央広場に魔法で現れると大勢の人を驚かせてしまイマス。ましてや陽が落ちた暗闇ではパニックを引き起こすかもしれませんネ。どうしまショウ」

「だったら図書館の2階に、河に面した広いバルコニーがありました。そこに移動してはどうでしょう。夜は無人なはずです」

「OK。そこにしまショウ」

 

おのおの注文した料理が配膳されてきました。

「このラーメン・・・めちゃくちゃ旨い。『らーめん丸富』って覚えておこう」

「おや。私のラーメンの器には『SHIN-SHINラーメン』って書いてありますよ。豚骨スープ最高です!」

「あつた蓬莱軒って記してある丸い器にウナギが敷き詰められて、お茶碗に盛り薬味によって4つの味を楽しめるなんて、すごくファンタスティックです!うははん」

ジュンスの声に頷くユチョン。

「料理のアートだな。そのひつまぶしもラーメンも」

「このカツ丼、すっごくうまい。ごはんの上にサクサクの衣のカツがドーンとのって、下に甘めの味付けに煮た玉ねぎと卵とじがたまんない。こんなに美味しいものがあるってことに感動だよ!」

ユノは黙々とチキンライスを頬張っていました。

 

日が落ちた頃、5人は図書館のバルコニーに移動しました。

「あっは。広場にランタンを手に持った人たちがたくさんいる。丸い光が散らばってるみたいでキレイだ」

ふっと

灯りが一斉に消えて、真っ暗な空間になります。

 

向かいの川岸から

ヒューーーーーと高い音が聞こえたかと思ったら

 

ドドーーーン

 

腹の奥まで響いてくる重厚な音と共に、夜空に大きな無数の光のすじが、まるで花びらのように開き、すっと消えていきました。

「なんだ。あれは・・」

ざわつく群衆の声は、次々と上がる花火の迫力のある、それでいて儚い美しさに、だんだんと感嘆の声に変わっていきました。

 

ドーーーン

 

夜空に打ち上がると、地上で見上げる人々の笑顔を明るく照らし出します。

5人も見たことのないこの光景に見とれていました。

 「ふぉふぉふぉ。どうじゃ。ワシのイベントは」

すっとバルコニーに現れた獅子梵に、ユノが反応します。

「獅子梵様!すごいです。」

「ワシは世界樹を隠し続けていることを疑問に感じる時があってな。すべての者に目にしてほしい。その存在を感じてほしいと思うことがある。これを叶える手段を考えてみたのじゃ。

我が名の『梵』の字は樹の上を風が吹く様を表すのじゃよ。ワシは神の栄光をどのように表すべきか、神の誉れとなるために何をなすべきかを500年間探し求めていた。

これがワシの集大成じゃ。

まさしく『世界樹を一瞬だけ表す花火』じゃ。

もちろん本物は秘すべきもの。であるが、そのような象徴をすべての者の目に見える形に現したかったのじゃ。

ほうら、見みるがいい。黄金の打ち上げ花火じゃ」

 

今まで打ちあがっては花開き消えてから、次の花火が打ち上げられていましたが、

あでやかに、はなやかな速射連発花火に変わります。

バンバンバンと無数の大音響が響き渡り

周囲を黄金色に染め上げるほどの大輪の花々が夜空を占領します。

燃え広がった火花は地上に向かい舞い落ちて

静かに消えていきました。

 

大音響の余韻なのか、自分の感動の振動なのかジンジンとした痺れが身体を包んでいます。

「想像以上の創造物ができた。ワシは大満足じゃ。皆が同じ思いで花火を見上げ、感嘆の歓声をあげる。天空に皆の『善』の思いを打ち上げるようじゃろう。これがどれほど宇宙に響くか、ワシには計り知れん。

光らぬ石が積みあがってしまったから、暗黒時代が訪れたのじゃ。まあ、そのおかげで太陽の有難さが身に染みたじゃろうがな。うむ。そう考えると、暗黒時代は必要であったのかもしれんな。

ねたみ、絶望、自己否定、憎悪、悲嘆などの思念波が押し寄せると世界樹の粒子が乱れる。

反対に、魂を躍動させる輝きとは、喜び、感動、希望、挑戦心、立ち直る心の強さであるな。それらの波動は世界樹を強くしてくれるものじゃ。

ユノ。ジェジュン。チャンミン。ジュンス。ユチョン。

お互いを思いやり、助け合い、信じあうことができる発達した文明をつくることが神の願いじゃ。多くの者の幸せな姿こそ、次なる希望の糧となる。希望とは魂の躍動じゃ。ワクワクする心じゃ。お互いを慈しみ、喜びの多い、愛に溢れた統合の時代を創りあげようぞ。

ひとりひとりが持つココロの大陽の存在を知らしめ、太陽を輝かせることこそ神の栄光を現わすことにほかならんとワシは確信しておる!」

「はいっ。獅子梵様」

 

続く

語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第134光」聞いていかれませんか。

 

テイト国 さいかい街

 

ジソコの家に招かれたユノとジェジュンとチャンミンとジュンスとユチョンは産まれて間もない赤ちゃんユンジェを順番に抱っこしています。

昔語りのおばあさんが喜びます。

「これほど優れた方々に抱っこしてもらえて、ユンジェは幸せ者じゃ。

まだ乳飲み子のうちに強い男に抱きかかえられると健康で丈夫に育つというじゃろう。これは、強い菌をもらえるからじゃ。

人間は細菌に助けられて生きておる。まだ赤子のうちに良い菌と接すると胃液で溶かされず、腸内細菌として住み着いてくれるのじゃ。これは一生の財産となる。

清潔にと誰とも接せずに育つと、免疫力の弱い子になってしまうのでな。他人との触れ合いは大切なのじゃよ」

「ジソコも抱っこしてほしい!」

「いいよっ。おいで」

ジェジュンは、しゃがんで両手を広げてくれました。嬉々として飛び込むジソコ。

「うふふ。めっちゃしあわせっ」

「僕もだよっ」

それぞれのHugタイムが終わり、クフクフ笑っているジソコ。

「5人ともめったにお目にかかれないレベルのきれいなお顔とスラっとしたスタイル!オーラも個々に違ってすごくキレイだし、ジソコ一生分のラッキーを使ってる気分で、なんかフワフワしちゃう」

ジソコの頭を撫でて、ユノが目線を合わせて聞きます。

「ジソコ。俺たちは黄土色のドラゴンに助けてもらったんだ。お礼を伝えたいんだけど、どうすればいいかな」

「ああ、ゆうべ夢に黄土色のドラゴンが出てきたのはこのためだったのね。

『我は地球を、自然界を助けたのだ。大地を、川や海を、木々を、大気を愛おしめば良い』

って言ってた。これが答えになるかな。ユノ」

「ああ。ありがとう。ジソコ」

 

「おばあさん。さいかい街に大きな河はありますか?」

ジュンスの問いに答えるおばあさん。

「大きな河は街の中央広場のそばに流れているよ。そういえば、今夜河でイベントあるそうじゃ。普段、日が暮れたら外出はしないものなのに、何があるのだろうと皆が噂しておった」

「ジソコも広場に行きたい!」

「女子供は夜、外を出歩くもんじゃないよ。わざわざ広場まで行かずとも、夜空を見上げればいいそうじゃ。庭から見ような」

「はぁい」

 

続く

語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第133光」聞いていかれませんか。

 

テイト国 じゅもり村

 

ジェジュンが両手を組んで、目をキラキラさせます。

「さいかい街!僕とユノが出逢った街。チャンミンとも巡り会えた街。大きな街には可能性がたくさんあるんだねっ」

ユノが頷きます。

「黄土色のドラゴンにもお礼を言いたいしな。ジソコに頼めば伝えてもらえるかな」

「ジソコって、旅立ちの日に現れた元気な女の子ですか?」

「そうそう!チャンミン、イケメンさんって言われていたねっ。不思議な力と勇気をもった女の子だよ」

 

「なんだか、お知り合いがいるようデスネ。では、その子をイメージしてください。近くに移動できるよう魔法をかけますカラ」

「おう。了解!」

ジュンスの依頼に、ユノが元気に答えます。

 

テイト国 さいかい街

 

石造りの大きな建物がいくつもある街中ではなく、すこし郊外の家の前に5人は移動しました。

「あの家が、昔語りのおばあさんの家だ。ジソコと両親も一緒に住んでいる」

「ユノがジソコを連れ出してきて。僕だと見た目が違うから説明しなくっちゃだもん」

「わかた」

 

大きなリンゴの木の下で待つジェジュンとチャンミンとジュンスとユチョン。紅く熟れたリンゴをもいで、カシュっとかじるユチョン。

「世界はホントに広いんだなあ。昨日と今日でどれだけ初めての光景を見たことか。びっくりだよ。オリオンのベルトから出てよかった」

「ホント。ヨカッタ。ユチョンとこうして過ごせて。うはん」

「・・・ありがと。ジュンス」

 

ジェジュンもリンゴを摘んで、パキッとふたつに割り、半分をチャンミンに渡します。

「ありがとう。ジェジュン、そのリンゴを割れる握力、すごくないですか?」

「あ、それ、ユノにも言われた。そうかなあ。誰でもできるんじゃない」

「・・・」

絶対クリアしてやると決心するチャンミンでした。

 

ユノと手を繋いでリンゴの木に向かって来た女の子が叫びます。

「きゃああーーーー。こんなにも見目麗しい殿方がわんさかいるなんて、この先もうないわ。ジソコ嬉しいっ」

「やあ、ジソコ。久しぶりっ」

ジェジュンが手を振って応えます。

ピタッとジソコの動きが止まり、じっと白い衣の金髪のジェジュンを見つめます。

「金色のオーラが輝いてる!白いベールを被ってる感じがなくなってるよ。めちゃめちゃきれいだ!ジェジュン!

あれっ。見た目がだいぶ変ったねっ。前も見る人を幸せな気持ちにしてくれる美人なお兄さんだったけど、さらにキレイさを上書きしてくるなんて、ジェジュン、スゴイ。大好き!!」

小首を傾げて、はにかんだような笑顔を見せるジェジュン。

「あっは。ありがとう。ジソコも可愛いよ」

 

「うふん。ジソコ、お姉ちゃんになったんだよ。弟が生まれたんだ」

「うわっ。おめでとう!」

「くふっ、名前がね、えっとね。ホントはユノとジェジュンってつけたかったけど、双子じゃなかったからね、パパと考えて『ユンジェ』にしたの。どう?」

「俺達を一緒に呼ぶとユンジェっていうのか。なんか・・いいな」

「うわあ。可愛いし呼びやすい。良い名前だねっ」

「きゃあーー。ふたりに褒めてもらえてジソコ嬉しいっ」

 

「ジソコはオーラが見えるそうですね」

「そうだよ。チャンミンはね、エメラルドグリーン!きれいねっ」

「へえ、ボクは何色デスカ?ジュンスっていいます」

「ジュンスは、黄色!マリーゴールドの花みたいなあったかい黄色」

「・・・・俺も知りたい。名前はユチョン」

「ユチョンは・・いろんな色が重なってる。いつか白になるのかなって感じだよ」

「白って色なのか?」

「うん。絵の具の色は混ぜると黒になっちゃうけど、光は白になるよ」

ジュンスがユチョンの両手を握って言い含めます。

「ユチョン。明るく生きマショウ。落ち込んだらすぐ相談スルデスヨ!」

「わ、わかったよ。ジュンス」

「ユノは燃えるような赤だっけ」

「そうそう。でもね、所々キラキラしてて、前よりすっごくキレイになってるよっ」

 

続く