語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第65光」聞いていかれませんか。

 

テイト国 旅の途中

 

チャンミンがアイパッドに地図画面を開いて説明します。

「びわ湖はこの方向です。先ほどドローンを飛ばして移動距離を算出しました。夕刻までに宿のある村に辿り着けるようにタイムスケジュールは私が管理しますね」

「チャンミン。すごい。僕、気が向くままに移動してたから野宿なんてしょっちゅうだったよ」

「俺も」

「私は絶対野宿は嫌です。温かい夕食を欠くなんてことはあり得ません」

「ふふっ。頼もしいなあ」

「寄り道も楽しいもんだと思うが」

「はい。てきぱき歩きましょー」

ユノの言葉をすっぱりぶった切るチャンミンです。

 

歩きながら、洞窟で黄土色のドラゴンを助けた話やジソコの勇気などジェジュンが話してくれるのを、目をキラキラさせ嬉しそうに相槌をうつチャンミン。

 

ある日ユノは水を汲みに行き、ジェジュンは昼食の食材を切っていました。

チャンミンは読みかけの本を読んでいて、ふと顔をあげるとジェジュンの姿がありません。

「ジェジュン。ジェジュン!どこにいますか!」

大きな声でジェジュンの名を呼び探し回るチャンミン。頭上からパラパラと木の葉が落ちてきたと思ったら、木の枝からぴょんと飛び降りてジェジュンが現れました。

「はぁい。チャンミン。探さなくても大丈夫だよ。ジジがオレンジの木に登っちゃったから捕まえにいってた」

オレンジの木の枝を咥えてジェジュンの腕に抱かれている子猫のジジ。

「動物が不測の動きをするのはしかたがありません。でもジェジュンは人間だから、ちゃんと伝えてから行動してください」

「へっ?なにげに怒られてる?僕」

「怒っていません。お願いしているのです。黙って私の前から消えたりしないでください」

バンビのような黒目がちの目をウルウルさせながら見つめてきます。

「わ、わかった。今度から気を付ける」

 

ジェジュンが料理を続けている横で、咥えていたオレンジの木の枝をリュックの中に入れ込もうとジジが頑張っていました。

 

続く