語り部アロマが紡ぐ
「リトルラブ ワンハート」聞いていかれませんか。

都会の喧騒から離れた自然豊かな片田舎にノスタルジックな洋館が建ち並ぶ幼稚園がありました。
情操教育に重きをおいた園長は、読み書き・計算の知育教育より、自然との触れ合いや、四季の変化を五感で感じる育成を大切にしたカリキュラムを組み、ハイソサイティーな知識人や貴族の人気を集めていました。富裕層の子女が集い、その寄付金でセキュリティの高い寄宿舎と園を運営していました。  

先生が全園児の前で、新しいお友達を紹介します。 
「今日からここのお友達になる6才のキム・ジェジュン君です。みんなよろしくね」
先生のおしりに隠れるように入ってきたジェジュンは、そおっと周囲のこどもたちをのぞいてみます。

すっと近寄った背の高い男の子が手を差し出します。
「おはよう。ぼくユノっていうんだ。同い年だね。ジェジュン。一緒に遊ぼ」

にかっとわらうユノの手に、そっと自分の手を添えるジェジュン。
「うん。遊ぼ。・・・ユノ」

ユノは白いちいさな手をぎゅっと握り、先生の影から引っ張り出します。

「あっ」
バランスを崩したジェジュンは、転ぶと思ってぎゅと目をつむります。

ぽふっ
ふんわり抱きとめられた感覚に、ふしぎに思ったジェジュンは目を開けます。

サラサラな金髪がくりんとしたグレイの瞳を引き立て、ミルクのような白い肌に、ピンク色の頬と唇が華を添えます。
愛らしい花のようなジェジュンが見上げると、そこにはユノの優しい笑顔がありました。
薄茶色のくせっ毛に利発そうな黒い瞳をキラキラさせてジェジュンを見つめています。
「ジェジュン。可愛い。ぼくがいちばんに見つけたから、ぼくのだよ。みんなもわかった?ジェジュはぼくのだからね」
ジェジュンを抱きしめ、まわりのお友達に宣言するユノ。  

「せんせー。ユノが独り占めしまーす」
おませで社交的な、ひとつ下のユチョンが先生に言いつけます。

「だめだよ。人間はペットじゃないから独り占めできません。って先生がいってたもん」
ユノに注意するのは2歳下のチャンミン。曲がったことが大嫌いで、一度聞いたことは正確に記憶する賢さを持っています。  

「うきゃーん。かわいい。お人形さんみたいだね」
ジェジュンの可愛らしさを素直に褒めるのは、陽気で運動神経抜群のジュンス。ユチョンと同い年です。

個性を伸ばすことをモットーとした園の方針として、年齢別のクラス分けはなく、その日やりたい項目ごとに個々に集って、大きい子は小さい子の面倒をみながらやり遂げるシステムをとっていました。
しかし、グループというのは自然にできてくるもので、似たようなメンバーが集まることが常でした。ユノとユチョン、ジュンス、チャンミンはいつも同じグループで行動していました。
 

そこへ、今日からはジェジュンが加わるようです。
はたして、どんな幼稚園生活になるのでしょう。