語り部アロマが紡ぐ

「東方日誌 二十頁」聞いていかれませんか。

 

大きな湖と豊かな森を持つキム村 

 

満月が照らす祈祷所

「うははん。だから、『ジェジュンが望む結婚』ってのが大事だったんだよ」

「兄様?」

昔を思い返すように目を細めるジュンス。

「ジェジュンが生まれたとき、あまりに美しい赤ちゃんだったから、光輝いていて。それこそ、鬼が魅せられそうなくらい綺麗な赤ちゃんだったんだ。普通と違うことにはなにかしら意味があるだろう。ジェジュンに災いが降りかからないようにするために父母が占い師に見せ、お告げを受けた。

『神様にことのほか愛されたお子じゃ。この子の望まぬ性交をしてはならぬ。この村を滅ぼすほどの大きな災いが起こるであろう。』と。

父母は考えた。これ程の美貌であれば男であっても、好色な高官の目に留まるだろう。召し上げられたら逆らえぬ。しかし、女として育てても、女が見劣りするほど美しいのだから村の男が手を出すかもしれない。

考えたあげく、『巫女』にすることを思いついたんだ。村の出生届には女として出した。

成長するにつれ、癒しの力があることがわかり益々巫女らしくなっていったんだ。

僕はジェジュンの秘密を守るためにそばにいた。村に災いが訪れないようジェジュンの純潔を守っていたんだ」

「兄様・・」

「うん。ジェジュン。ジェジュンが望むなら、この男と添い遂げることに反対しない。ユノ様なら、一生ジェジュンを守ってくれそうだ。僕はお役御免になるわけだね。うはん」

男の身でありながらなぜ巫女として生きねばならなかったのか、その謎が解けたジェジュンははらはらと涙をこぼします。

「では、わらわは恋をしてもよいのですか?

生涯童のように清いままで生きねばならぬわけではないと・・愛しい人に触れてもよいと・・・ユノ様への溢れる想いが止められず・・・

いっそわらわの心が石になればと願ったこともありました。もう悩まずともよいと・・・」

ユノと出会ってからの胸の中の葛藤を兄にぶつけるジェジュン。

「すまなかった。苦しんだんだね。ジェジュン。相思相愛であれば、なんの障害もない。ジェジュンの想いを出していいんだよ」

「わらわは・・ジェジュンは、ユノ様に触れたい。触れられたい。

・・・・ジェジュンはユノ様が恋しい」

最後の言葉は絞り出すようで・・・ジュンスの目にも涙が溢れます。

「うはん。その心のままに。ユノ様はちゃんと答えてくれるよね」

ユノのほうを向き、当然帰ってくるはずの返事を待ちます。

「無論だ」

目に涙をため、いつもよりも光輝くジェジュンの瞳を見つめ、その白い手を両手で包み込み、優しい低い声で想いを告げるユノ。

「ジェジュン。愛している。私と共に生きてくれるか」

「はい。ユノ様」

はれやかに微笑むジェジュン。まるで花が綻ぶようです。

 

「・・・すまぬがジュンス。席を外してくれ」

「えっ?・・・あ、ああ。わかった。僕が遠くに行くまで待てよ。じゃ」

パタンと扉を閉めた途端

「っあ。・・ユノっさま。んっ・・」

ばさっとした衣擦れの音とともに、ジェジュンの色っぽい声が聞こえてきました。

「あのやろうっ・・まっいいか。ジェジュン。幸せにね」

駆けてゆくジュンス。

 

月灯り照らす祈祷所はユノとジェジュンの初夜の床になったのでございます。