語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫  第9光」聞いて行かれませんか。

 

テイト国 ジュンスの館

リビングに置かれたヤシの木が青々と葉を繁らせていますが、大きな窓の外は色彩のない白い世界が広がっています。

「雪、雪、雪。来る日も来る日も雪ばっかり。ここの大窓は、白い砂浜と青い海が見渡せるトロピカルな風景が自慢だったのにーー。今はまっしろ。ずーとまっしろ。ぐすん」

青いロングガウンに身を包んだ27歳のジュンスが珍しく嘆いています。

「ぶつぶつ言ってないで、魔法でそこに南国の風景を映し出したらいいんじゃないですか?」

びっくりした顔でチャンミンをみつめるジュンス。

「チャンミン。天才。そうする」

 

シャラン。

ジュンスが手を振ると窓はスクリーンの様に南国の風景に変わりました。

「あー。嬉しい!好きなものはパワーがでますーー」

16歳のチャンミンは頬に人差し指を当てて、ふうとため息をつきます。

「・・・単純ですね。それにしても、外は寒気が強いのに、屋内は快適ですね。乾燥もしていない。過ごしやすいです」

「うはん。でしょう。音を光に変え、音を電気に変える今開発中のテクノロジーのおかげデス。ボクの歌声は素晴らしいエネルギーを産むのです。エヘン」

「ああ、なるほど。だから、超音波ボイスでよく歌っているんですね。はじめて聞いた時はイルカと交信しているのかと思いました」

「ん?よくわかりましたねー。イルカと交信しているコト。誰にも気づかれていないと思っていましたノニー」

「・・・・今、冗談で言ったんですけど。ジュンスのカリスマ。ホントなんですね」

チャンミンからの珍しい褒め言葉に氣を良くしたジュンスは朗々と歌を歌います。

 

心地よい旋律の中、チャンミンは物思いに耽ります。

「それにしても、ジェジュン。どこでどうしているかな。ああ、あの予言の日、ジェジュンと一緒にいれば良かった」

「あの日、邪気の発信源を抑えようと、館の上空で見張っていた。だが見定めることが出来なくて残念デシタ」

歌を歌っていたジュンスは、ちゃんとチャンミンの小声を聞き取っていました。チャンミンはクセの強い黒髪をくしゃっと握ります。

「まさか、結界で守られた祈りびとの館から出るとは思わなかった」

「起こる事には意味があるデス。ジェジュンは宿命を背負っているんです。大丈夫。元気でイマス。私たちの光なんですカラー」

「ジェジュンに逢いたい」

「逢えますヨー。信ジマショー」

「ジュンスがいうと軽く聞こえる」

「ソーデスカー。真面目に言ってますのにー」

何かを振り払うように頭を左右に振り、椅子から立ち上がるチャンミン。

「私、勉強してきます」

「がんばってねー」

ドアに手をかけたチャンミンが振り返ります。

「先日びいる村に帰ってみたんですけど、食糧庫が襲われる事件が起こり困っていました。ジュンスの魔法で守れませんか?」

「へ?テイト国全域の村々の食糧庫に魔法をかける?いや無理、魔法ってね、『集中力』なんデスヨー。自然界の力を少し借りて生み出すイリュージョンなの。ムリ。いくらボクでも、そんな集中力ありません。持続サセラレマセン」

「なんだ。魔法って万能なのかと思っていました。じゃあ、セキュリティーに有効なICチップの開発に挑んでみます」

「実はチャンミンの方が魔法使いなんじゃないかって気がしてキマシタ。毒舌なくろい魔法使い」

「褒め言葉として受け取っておきます」

 

チャンミンを見送った後、白いソファーに身を預け、目を伏せるジュンス。

「ここ数年イルカに頼んでユチョンやジェジュンを捜索しているけど見つけられないんだよなあ。それにしても、さっき何かに気になったんだヨネ。んーー・・・くろい魔法・・・継続・・」

ジュンスの頭になにか引っかかるものがあるようです。眉間にしわを刻み真剣な表情で考え込みはじめました。

 

続く。