語り部アロマが紡ぐ
「極上の未来 scene30」聞いていかれませんか。
チャンミンの館。夕食の時間です。
両腕、両足首につけた金細工の飾りからシャラン、チャランと、きれいな音を響かせ、現れたのは、金の刺繍が入った、あでやかなオレンジ色のベールを纏ったモモです。
「お待たせしました。お兄様」
「ああ、紹介しよう。私の妹のモモだ。
こちらはジェジュン。今日から我が屋敷に住むことになった」
「はじめまして。ジェジュン」
「はじめまして。モモ」
ジェジュンの顔をじーっと見つめながら、モモが尋ねます。
「お兄様。同居される方は、殿方と伺ったのですが・・」
「僕。男です」
小さな声でつぶやくジェジュン。
チャンミンもモモも、その場にかしずく侍女たちも大笑いです。
「なんて美しい殿方でしょう。『天使のような』とタルニャが言っていた通りだわ。
ねえ。お兄様。ジェジュンの前なら、ベールなしでも大丈夫じゃないかしら」
「ああ、かまわない」
「よかったわね。みんな」
「はい。モモ様」
侍女たちは、目元だけ出して、巻き込んでいたベールを緩め、可愛い笑顔を見せます。
和やかな雰囲気で食事が進みます。
「ジェジュンは、お仕事、なさっているの?」
「はい。モデルと声楽家です」
「私と同い年でしょうに、すごいわ」
「チャンミンの、お仕事は何?」
「お兄様は『先見のチャンミン』と呼ばれているの。」
モモの答えに、説明を加えるチャンミン。
「A かB かの選択をするとき、私に、意見を求める金持ちが多いのです。謝礼はお金であったり、招かれて美味しい食事や、観光や貢物であったり。そして、その宴の最中に、別の依頼を受ける。
なんてことの連鎖で、私は常に忙しいのです」
ジェジュンがチャンミンを見つめて言います。
「チャンミン、神様?」
「貴方、ばかですか?
違います。豊富な知識と適切な判断力の賜物です。普通の人間です。ですので、このナイーブな心を、ジェジュンの極上の笑顔で、癒してほしいのです」
ふに落ちない表情のジェジュン。
「チャンミンに『癒し』が必要なの?」
凛々しい眉を寄せ、チャンミンが睨みます。
「ジェジュン・・・どういう意味ですか?」
「えっと。そのまんまだけど」
怖がることなく、笑顔で返すジェジュンに、侍女たちのほうがヒヤヒヤしました。
「ふふっ。さすが、お兄様が気にいっただけはあるわね。美貌とユーモアをお持ちだわ」
モモが笑います。
「ジュンスの家で、ノアママに鍛えられたんだ」
「一度お会いしたいものですね。その方に」
侍女のアスサナが言います。
「会ったら、みんな気に入るよ。素敵な人なんだ。ノアママは」
「それは楽しそう。そのうち、お招きいたしましょうね」
モモの提案に、皆、笑顔で賛同しました。
続