語り部アロマが紡ぐ
「輝きの姫 第120光」聞いていかれませんか。
テイト国 オリオンのベルト
向日葵畑の一角、ペガサスは床に舞い降りました。
馬上から降りたユノは、ペガサスに向かって丁寧にお辞儀をし、顔を上げたときには、その姿は消えていました。
ユノは向日葵畑の中を駆けてくる金色の髪をした若い男性に気が付きます。
「また逢えたね。ユノ!逢わなきゃいけない気がするって言ったの覚えてる?」
あでやかに微笑むその瞳は、まさしく、長年探し求めた輝きの姫そのものです。
「なんて綺麗なんだろう。眩しいほどだよ。君は『輝きの姫』?」
「うん。そう呼んでくれていいよって答えたでしょ。でも、僕の名前はね・・・ふふ。聞きたい?」
いたずらっ子みたいな表情で、肩をすくめる金色の髪の輝きの姫。
ユノは輝きの姫の正面に立ち、まっすぐな眼差しを向けます。
「うん。ちゃんと教えて・・・ジェジュン」
「あっ。先に当てちゃずるい。驚かせたかったのに!もう」
ぷんと頬を膨らませたジェジュンはグイッと身体を引き寄せられたかと思うと、ユノの腕の中にすっぽりと包み込まれていました。ジェジュンの金髪に鼻先を埋めて、その存在を確かめるユノ。
「逢いたかった。いや、既に会っていたんだ。ジェジュンが俺の輝きの姫ですっごく嬉しい。俺達は、やっぱり運命の相手だったな」
「ユノ。苦しいよ。さっきまで重傷だったのに、一瞬で元気になったね」
「ああ。前に訪れたじゅもり村に運ばれて、魔法使いの獅子梵様とポンに回復魔法をかけてもらったんだ。後で反動が来るとか言ってた気がするけど」
「重傷からの回復デスカ。なら、明日から一週間は寝込みますヨ」
ジュンスがユノとジェジュンの背中をポンと叩いて教えてくれます。
「やったデスネ。ジェジュンは本当の自分を取り戻した。
ユチョンはユファンに心を開いた。もう暗黒時代の魔法は発せられていないデス」
『陽水金連なり、光らぬ石が積み上がる時、反転した漆黒により祈りは封じられ、太陽は熱を失う。荒廃の世に新たな光は灯るや。』
チャンミンは予言を諳んじます。
「新たな光とは、ジェジュンが取り戻した光だったんでしょうか?」
ユノのたくましい腕から抜け出した金の髪のジェジュンが言います。
「だぶん、違うと思う。人々の波動はまだ小さいと感じるもん」
ジェジュンの言葉を受けて、チャンミンが考えます。
「今、思い出したけど、アキジェ王から託された言葉の3つ目『力だけが強さではない。愛という意味を知れ』とは、敵を力で倒すのではなく、目を覚まさせるために、みんなの愛を示すってことだったのかな。
『愛』にはいろんな意味がありますよね。
親子愛、兄弟愛、仲間との愛、恋人を守りたいと思う愛、信じる心、認める強さ、素直さ、求める愛、与える愛、身を引く愛、掴み取る愛、見守る愛・・・ああ、たくさんあるなあ」
ジェジュンが両手をパンと合わせて目を輝かせます。
「あっは。そうだよ。チャンミンはやっぱり賢いね。みんなのココロには、その人だけの愛があって、それが太陽を輝かせるんだ。自分だけのオリジナルのものだから、誰かの真似じゃダメなんだよ。
自分で心地よい愛をみつけて磨いていく。
ひとりひとりが幸せを感じていられるなら、テイト国は真に平和だと言えるんじゃないかな」
ユノも、チャンミンも、ジュンスも、この言葉を噛みしめるように頷きます。
「さて、ボク達も幸せを感じるために私の館に移動しまショウカ」
みんなの元に歩いてきたユファンが叫びます。
「まって!ジュンス。この花開いた向日葵たちを土ごと、えだまめ村に戻してくれませんか。大変なのはわかっていますが・・・この花が最後の種だったんです。来年の為に、この子たちから種を集めたいんです。お願いします」
こくこく頷いたジュンスは、ユファンと手を繋いでいるユチョンを見ます。
「・・・ユチョン。手伝ってクダサイ」
頬を指先でポリポリ掻いて答えるユチョン。
「・・・・俺にできるかな?」
「できますとも!さあ、みんな掴まって。全部まとめて、えだまめ村に行きますよ」
魔法がかかる一瞬前、ジェジュンは頭上を見上げます。
「あ、ネネ、ジェイジェイ。ありがとう」
ふたりは並んで、にこやかに手を振ります。
「アキジェ王と、キノコンヌ王妃に報告したら、一度会いに伺います。ジェジュン」
続く