語り部アロマが紡ぐ
「石想アドバンス レベル22」聞いていかれませんか?

月明りの森 夕暮れ時
沢のそばの木陰で小さな話し声がします。まだ幼さの残る面立ちの少年と少女が手を取り合い見つめ合っています。
「この手を離したくないっ。三日後の新月の夜が来たら・・・もう会えない・・・・このまま時が止まってしまえばいいのに・・・」
「エルザ・・。聞いて。このまま俺と一緒に逃げよう。誰も知らない土地で、二人で生きて行こうよ。エルザ・・」
「カイ・・・。そうしたいけど・・そうできればいいけど・・。でも、でもわたしは『月明りの森』が大好きだから、わたしが生まれ育った村だから・・・。わたしは村を護る。だから・・・さよなら。大好きなカイ。わたし・・・大人になったらカイのお嫁さんになるのが・・・夢だったんだよ」
涙声で自分の思いのたけを告げた少女は、少年の手を振り切り村の灯りへ駆けていきます。
「エルザッ!・・・・っ」
その場にうずくまる少年。肩を震わせ声を殺して泣いている姿を、ジェジュンが木陰から見守っていました。声をかけるにはあまりに切ない少年の背中でした。

ユノたち5人は、「月明りの森」という小さな村に今夜の宿を求めることにしました。パワーストーンマスターの修行をしている旅の者を受け入れることは名誉なことでしたので、どこの村に行っても歓迎されることが常でしたが、この村は違いました。
夕食に招かれ歓迎されてはいるのですが、どこかよそよそしい感じが否めません。食事は進み、飲み物のお代りをついでくれたのは、優しそうなご婦人でした。
「この村には、何か大変なことが起こっているのではないですか?」
ジェジュンが、飲み物をついでくれる婦人にそっと尋ねてみました。
ガッシャン
持っていた瓶を落とし、何も言わず震える女性。青い顔をして壊れた瓶を拾い集め宴の場から下がります。
「これは・・私の妻が失礼を致しました。お怪我はありませんでしたか?」
村長の問いかけにユノが答えます。
「お気遣いありがとうございます。連れの者は大丈夫です。ですが、奥方の顔色が優れませんでしたが・・・」
「いや・・・。マスターの修行をなさるお方に怪我でもさせてはとあせったのでしょう。お気になさいますな。長旅でお疲れでございましょう。これ、寝所にご案内を」
「はい。こちらへ」
年配の女性が5人を旅人のゲルに案内してくれました。

To be continued