語り部アロマが紡ぐ

「東方日誌 四十頁 最終話」聞いていかれませんか。

 

東方街 東方部隊駐屯地

 

ユノ隊長とチャンミン副隊長の確執であった『密輸』に関して、チャンミンは「主要五品について関税をきちんとかける」とユノ隊長に約束し、そのとおり実行しました。ですが、切れ者チャンミン。その五品はあまりやり取りがされない商品でありました。世間知らずのユノ隊長はそのことに気が付きません。チャンミン副隊長の智恵の勝利でした。

 

時にジェジュンは自宅の庭先で、男装してユノと武芸の稽古に励みました。近所の人々はその様子を目にすると喜びました。

「隊長ご夫婦が稽古しておられるぞ。ああ、まるで花武官と氷武官だ」

「奥方は京劇に出てくるお姫様より凛々しく美しい」

「剣舞を舞っているような身のこなしのユノ隊長が素敵です」

「目が洗われるようだ。たとえ都でも、これほど美しい稽古風景はみれまい。この街にいてよかったな」

女性が武道をすることに眉をひそめる者はおりませんでした。巫女ジェジュンは性別を超越した尊いお方と特別視され、『麗人ジェジュン』と噂されるほどでありました。

 

ジェジュンの秘密を守る責務を解かれたジュンスは、ユチョンとともに中国の交易に参加していました。商談の酒席で、ジュンスの歌声が響くと不思議とうまくまとまるとユチョンはホクホク顔です。時にジュンスが思いもよらぬ商品を仕入れたいと提案することがありました。しかし、国内の市場に出すと見事高値で売れたのです。ジュンスの野生の勘も役に立つのでございました。

 

ジュンスとユチョンは、交易の合間、中国からの珍しい食材をジェジュンへのお土産に届けたりしていました。そういう時は、チャンミン副隊長が必ず夕食の席に現れ、ジェジュンの作った料理を誰よりもたくさん堪能するのでした。

「ユノ隊長・・・太られましたよね・・」

チャンミンの何気ないつぶやきに、固まるユノ。

「赴任して来られたころは、すらっとしていたのに、この頃は、がっしりというか、逞しいという感じです。でも、表情はだいぶ朗らかになられましたよ」

褒めているのか、けなしているのかわからないチャンミンの言葉に苦笑いで返すユノでした。ユノの傍らで頬を染めるジェジュン。何を思ったのでございましょうね。

 

ユノ隊長は、東方部隊駐屯地三年の任期を終えても、任期延長を願い出てこの地に留まりました。王からは再三、使いの者が参りました。

「臣として宮廷につかえてほしい。近衛兵として最高の処遇を示す」

とされても、ユノは首を縦に振りません。いつも、返事はこう言うのでした。

「殿下は、奥方と幸せにお暮しください。ユノはこの辺境の地で、民を守り生きてまいります」

 

ある時、王の使者の供にひとりの美少年が現れました。一目で互いに恋に落ちたチャンミン副隊長と少年。少年は「都に戻らずこの地で勉強がしたい」と使者である叔父にお願いをします。チャンミン副隊長からの熱心な説得の後、東方部隊副隊長チャンミン預かりとして残れることとなりました。

歓喜するチャンミン。手中の球と少年を可愛がりました。外出するときは護衛をつけるほどのご執心ぶり。きっとユノ様秘蔵の男同士の赤本をお借りしたことでしょう。夜毎求めては愛を育む幸せな日々です。

 

こうして、猛将ユノが守り、智将チャンミンが経済を助け、麗人ジェジュンが癒しを与える朝鮮の辺境の地『東方街』にすむ人々は、ユチョンとジュンスの交易で珍しい商品を扱う楽しい日々を過ごしました。そして、いつまでも平和で豊かに暮らしたということでございます。

 

 

ああ、『東方日誌』の最後の頁となってしまいました。

さあ、ここらで物語の幕を下ろしましょう。

それでは、皆様ごきげんよう。