語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第40光」聞いて行かれませんか。

 

テイト国 荒野

木々の枝は細く、吹き抜ける冷たい風に枯れ切って丸まった木の葉が、カラカラと舞う乾いた大地を歩くひとりの旅人

「ふぅ。荒野は2日も歩くと堪えるなぁ。あの尾根を越えれば景色が変わるといいんだけど、どうかな?ネネ」

ミャウンと啼きジェジュンの頬をぺろっと舐めます。

「おっ。いい返事っ。がんばろっと」

歩を早め、崩れやすい斜面を登っていきます。岩肌を掴みながら上り詰めた頂きの向こう側には、今までとは打って変わって緑の野が広がっていました。

「やった!水にありつけそうだ。助かったな」

勇んで駆け下りる緑の大地

「あれ?湯気が立ちあがってる。温泉があるのかな?」

途中、湧き出た水で喉を潤し、コケモモの木に赤く熟した甘酸っぱい実を見つけ胃を満たしました。

 

辿り着いた湯気の元には、簡易な囲いがしつらえてありました。

「ありがたい。これなら・・・裸で入れるじゃん。やっほーっだ!!」

身に着けているもの次々と外し、囲いの中にある蔓製の籠に入れていきます。スルリと滑り落とした布の下には、滑らかな白い肌がありました。動きに合わせて筋肉が隆起するしなやかなボディライン。広い肩幅から細いウエストに至る曲線が、男性ながら艶めかしさを醸し出します。髪を束ねていた紐を外すと、ファサッと広がる長い黒髪。

ネネが水面に前足をちょぽんとつけて、ジェジュンを見上げクリンと目を輝かせます。

「ふふっ。いい湯加減かな?」

ニャン!

ジェジュンも片足をそっとつけてみます。

「ん~。あつくもなく、ぬるくもなく、いい感じだ!」

ザブンと湯に浸かるジェジュン。ジェジュンの肩に乗りちょっと湯に入ってはすぐ上がるネネ。

「ネネ。僕潜るから、岸に行ってくれる?」

ぴょんとジャンプし岸に着地したネネ。じゃぽっーんと水面下に沈んだジェジュンは少し先で顔から上がってきました。

キメの細やかな肌は水分を含みふっくらと満ち、後ろに撫でつけられた黒髪は陽に当たり艶やかに輝きます。

まるで人魚のような佇まいに、ネネも見とれているようです。

「ふふっ。尾根を境にこんなに景色が変わるなんて、びっくりだねっ。ネネ」

ニャ!

甲高い声を上げ、耳をピンと立てたネネ。一点を見つめたまま動きません。

「どうしたの?・・魔物か!」

チャッと剣を手に取り気配を探るジェジュン

 

バスッ ギャーーーという音が聞こえ、魔物の気配は消えました。

囲いの隙間から音の方向を見ていたジェジュンは、背の高い勇者が魔物を退治したのを見届けました。

「あの勇者。立ち居振る舞いに動きの無駄がなく美しかったな。しかもナイフみたいな鋭さもあった。・・・ていうかスタイル良すぎだ。頭ちっちゃすぎだし」

取りあえず裸で魔物退治せずに済んだジェジュンは剣を置き、もう一度湯に浸かります。

一瞬目にしただけの勇者の姿が、頭の中で繰り返し思い出されます。

「んーー。印象的な動きだったけど、なんでこうも思い出されるんだ?変だよね。ネネ」

ネネの喉を指であやしながら尋ねるジェジュン。

ネネは青空みたいな透き通った水色の瞳をキランと輝かせるだけでした。

 

続く