語り部アロマが紡ぐ

「雨の記憶 二十五雫」聞いていかれませんか。 

 

人間界 イスマンの王城前に立つジュンス 

 

「『龍王の涙』に封じられし、龍神ジェジュン。ボクの声が聞こえる?神の力を包んだ白い羽は飛ばしたよ。

 

その力を顕して、

鳳凰を従えし風神チャンミンを招け。

麒麟が仕えし雷神ユノを呼び寄せるんだ。

そして、「『龍王の涙』を得た者は天下を握る」という伝説に終止符を打つ。

神は尊ぶべき存在だ。人間が神に及ぶはずもない。

神を操るなどと人間がもった傲慢さがこの悲劇を招いた。

・・・ボクの大切な家族を奪った。

ならば、ボクはその伝説を終わらせる。

龍神ジェジュン。雷神ユノと風神チャンミンを呼んで。

ここにいるって伝えて!」

 

『龍王の涙』は、強い光を一直線に真天に向けて放った。雲を突き抜け、更に高みを。自分の居場所を天界に示します。

 

球を持つ手がぶるぶる震えるジュンス。

鎧の下に、羽毛を絡みつけた鎖帷子を全身に纏っているため、なんとか立っていられます。が、力を吸い取られるような、すごい疲労感に襲われます。

「・・待って。王の間にある『黄金の台座』を壊すことが目的なんだ。神の手によって造られた台座は、人間では壊せない。

だから、雷神ユノと風神チャンミンの力が必要なんだ。

龍神ジェジュン。すこし力を落として。王の間まで、ボクの体力が持つように」

 

『龍王の涙』の輝きはそのままに、その場の空気を振動させるような強い波動はピタリと止みました。

 

「ありがとう。龍神ジェジュン。さあ、行こう」

一歩、一歩足を進めるたびに、鎧がガシャン、ガチャンと物々しい音を立て、ジュンスは王城の中を進みます。

 

他の兵達は、鎧越しでも感じられる、ジュンスの気迫と、『龍王の涙』の光り輝く眩しさに、遠巻きに、ただ見ているだけでした。

 

王の間の扉が、開かれます。

玉座に座すイスマン王。ジュンスの持つ『龍王の涙』を見て目を細めます。

「よくやった。手に入れたのだな。『龍王の涙』を」