語り部アロマが紡ぐ

「天の羽衣 十翔」聞いていかれませんか。

 

古の中国 山間の温泉地

 

竹筒の水を飲み、喉の渇きを潤したユノとジェジュンは、大自然の中、ただふたりだけでいることを、しみじみと感じておりました。

「いいところだね。ユノ」

「ああ、誰もいないしな。俺たち以外は、自然だけだ。

ジェジュン。裸になろう」

 

こくんと頷いたジェジュンは、男物の着物を脱ぎ落とします。ユノも、ばっと脱ぎました。

 

一糸纏わぬ生まれたままの姿のユノとジェジュン。手を繋ぎ、岩風呂の温泉に、体を浸からせます。

 

「少し熱いかな。でも、透明で、とろっとしてて、肌あたりが優しい湯だ。肌がきれいになりそう。うふん」

 

空を仰げば、青い空が広がり、キラキラした日差しが水面を輝かせています。

 

ふわりと、やまぼうしの花が、風に吹かれ、水面に舞い降りてきました。

「ふふっ。可愛い。ユノ。知っているか。やまぼうしの花は、真ん中の丸い緑色が花穂で、四枚の白い花びらのように見えるのは蕚なんだぞ。真っ白で目立つのにな」

 

「綺麗だ」

「うん。ここは、自然が豊かで美しいな」

にこっと微笑むジェジュン。

 

ジェジュンの肩をぐいっと引き寄せ、耳元で囁くユノ。

「俺は、ジェジュンのすべてが、綺麗だと云ったんだ」

 

ジェジュンの白磁の肌を、あでやかな桃色に染め上げたのは、湯の熱さでしょうか。それとも、ユノの長くて綺麗な指からの、愛撫のせいでしょうか。

鳥の声に混じり、響くは、ジェジュンの切なげな吐息ばかりでございました。

 

 

「さあ、飯にしよう。」

すっきりした笑顔のユノが、小屋で荷解きをしています。

 

ジェジュンは、こてんと横になっておいでです。

「ほら。弁当と酒もあるぞ。食えるか。ジェジュン」

 

「・・・ああ。食べる。っていうか、お前の体力は底なしか!き、気絶させられるなんて・・・びっくりだぞ」

 

「あ、俺も。ジェジュンったら、急に動かなくなるから、死んじゃったんじゃないかって、焦ったぞ。すぐ気が付いてくれてよかった。ホントに良かった。さあ、食べろ」

 

「うん。・・・うん?いや。やりすぎだろ。ユノ」

 

「へっ。だってしょうがない。このところ、ずっとチャンミン達に遠慮してたから、そのせいだな!」

 

「何言ってる。ほぼ毎晩、シテたぞ!我慢させたりしてないぞ。」

 

「えー。俺としては、四六時中ジェジュンとくっついていたい。ジェジュンの瞳に、俺が映っていないなんて、すごくさみしいんだからな。

これでも、ずっと、我慢していたんだ。だからー、今日は、暴走しちゃったのかなぁ。ごめんね」

可愛い表情で謝るユノ。

 

なんだか、納得のいかないジェジュンですが、肉体を持って、人間の、愛の交歓を体験できるってことは、天人であったら出来ないことです。嬉しいような、大変なような、複雑な心境でした。

 

「ああ、俺、体の調子がすこぶるいい。」

「そうか。それは温泉の効果だな。裸の体を、大地に触れ合わせると、人体に溜まった悪い電位を放電できるんだ。

正常な電位というのが、元の氣、すなわち『元氣』というんだ。『病』や『痛み』を癒すってことになる。裸足で草原を歩くとか、田植えなんかも同じ効果があるんだ。そのおかげだよ」

 

「デンイ?なんだそれは。ま、なんにしろ、ジェジュンのおかげだ。太陽の下で、のびのびと愛し合えるなんて最高だ」

 

「聞け、ユノ。僕の説明を。・・・ま、いいか」

諭すのをあきらめたジェジュンは、弁当と酒を楽しみました。

 

そして、馬並みと評される太ももを持つ、ユノのありあまる体力を、更に、身をもって体感することとなるのです。

 


だって、去年の2016年6月10日に、赤い燕尾服を着たジェジュンが言ってましたよね。

「今日は、特別な日だから・・・」って。