語り部アロマが紡ぐ
「輝きの姫 第55光」聞いて行かれませんか。
テイト国 さいかい街
「さ、食事に行こう!ユノ」
「ああ!でも、外は土砂降りだな」
「何言ってんの。ユノ。地下道があるじゃない」
「ちかどう?」
「そう。寒さの厳しい時期に年配の人も楽に食堂に行けるように地下道が作られている。このさいかい街は特に車椅子や杖を使う人も多いから、街の主要な場所に行けるように張り巡らされているんだ。おかげで僕たちも雨に濡れずに食堂に移動できる!」
「なんて素晴らしい設備!」
「だいたいの街や村にもあるよ」
ぶんぶん頭を振って否定するユノ。
「いちご村にはなかった!じゅもり村にもなかった」
「そうか。じゃ、案内してやるよ。こっちだ。ユノ」
「はい。ジェジュン」
素直についてくるユノを連れてエレベーターのドアを開きます。
「四角い箱みたいで狭い部屋だな。ここに入るの?」
ジェジュンは頷きながらユノの手を引き、中に入れ、扉を閉めます。腰の高さの台に「地下道」「地上」と書かれたプレートがはめ込まれ、プレートの手前の窪みに水晶のタブレットが置かれていました。
ジェジュンは「地下道」のプレートの下の窪みに、水晶を置き直しました。
「ジェジュン?石を動かして・・うわぁ」
グーーンと地中に沈み込む感覚に驚くユノ。
「えっ?箱ごと地面に沈んでるの?」
「そう。『エレベーター』っていって、階段を使わなくても階を移動できる便利な機械だよ。水晶の振動が動力で、一度に大人10人ぐらいなら運べるんだ」
ポーンという軽快な音が響きます。
「着いた。ユノ、ドアを開けてごらんよ」
ガチャンと扉を開くと、そこには白く滑らかな壁面の通路が延びていました。床面は滑り止めのあるクッション性のある面と凹凸のない滑らかな床面が半々になっています。空調が効いていて、地中なのに湿気がありません。灯りは間接照明になっており眩しさはなく和やかな光で照らされています。壁には「食堂までは1曲歌い終わるくらい」「リクエスト館まではしりとりゲームで答えが出なくなる頃に着きます」と書かれた矢印型のプレートが嵌められていました。
「こっちだ。ほら、みんな歩いてるでしょ」
「ホントだ」
キョロキョロするユノの手を握り、ジェジュンは歌を歌いながら歩きます。
「親孝行って何?って考える。でもそれを考えようとすることがもう親孝行なのかも知れない~」
ジェジュンが楽しそうに歌っているのを、めっちゃ嬉しそうな顔で見つめているユノ。
「ジェジュン!俺もチキンライス食べたい!ジェジュンの歌楽しい!俺すごく好きだ!」
「あっは。それはどうも。さあ、着いたぞ」
続く