語り部アロマが紡ぐ
「極上の未来 scene28」聞いていかれませんか。
ジェジュンの育った隣町の郊外に、チャンミンの別荘がありました。
外観は白い壁に覆われ、他の建物と相違は感じられませんが、屋敷の中に入ると、
そこはイスラムでした。
中庭には噴水があつらえられ、水の音が聞こえます。
壁面や床は、複雑で華麗な釉薬タイル、大理石などのモザイクで彩られています。
床にはじゅうたんが敷かれ、天井からはランプが吊り下げられています。
ジュンスに連れられ、屋敷にやってきたジェジュン。
イスラム風の床座式の生活様式を、初めて目にするジェジュンは、ポカーンと口を開けたまま、きょろきょろとして落ち着きません。
ビジャブと呼ばれる大判のスカーフで、髪と顔を隠した女性が何人もいます。
そのうちのひとりが、ジェジュンを案内します。
「ようこそ。ジェジュン様。私は侍女のマユミと申します。どうぞこちらへ」
主のいる部屋へ案内されます。
色鮮やかな絨毯に坐す、白い衣のチャンミン。
「待ちかねましたよ。ジェジュン。ようこそ。我が屋敷へ」
「あ、あの、よろしくお願いします」
おずおず挨拶するジェジュン。
「チャンミン。ジェジュンを預けるケド、歌のレッスンは続けたい。
ユチョンも『俺のミューズはジェジュンだけ~』って言ってイタカラ、用ができたら、連絡するハズデス。
その上で、ジェジュンに社会ベンキョウをお願いしたいノデスヨ」
「・・僕、どんだけ忙しいの?」
「わかった。ジェジュンのスケジュール管理は、侍女のアスサナが担当してくれ。マユミは、ジェジュンの身の回りの世話をするように」
「承りました」
マユミに連れられ、自分の部屋へ案内されるジェジュン。
ジュンスがチャンミンに言います。
「ジェジュンが仕舞い込んだ、頑ななコイゴコロ、どうか引き出してやってクダサイネー」
「それは、ジェジュン自身がすること。私がどうこう出来ることではない。しかし、ジェジュンが、今、この屋敷にきたのには、なにか意味があるのでしょうね。
ちょうど、結婚前のマリッジブルーにかかっている妹のモモがこの屋敷に来ています。お互いに、良い影響を与えられればいいのですが・・」
「うきゃん。それは、きっと、いい方向にコロビマスデス。では、失礼します」
チャンミンは、ジュンスの帰りを見送ると、侍女のマチルダに指示を出します。
「マチルダ。頼みがある。まず、隣町の教会の神父様にジェジュンの転居を伝えてくれ。
そして、その町に住むユノという男の様子を探ってくれ。時々、私に知らせること。ただし、気づかれないように」
「了解いたしました。チャンミン様。それでは行ってまいります」
すっと姿を消すマチルダ。どうやら、スパイでもあるようです。
「タルニャ。モモに、夕食の時に、同居人を紹介すると伝えてくれ」
「はい。チャンミン様」
侍女のタルニャがおじぎをし、部屋を後にします。
さあ、新しい生活のスタートです。
続