ようこそ
語り部アロマの紡ぐ「ルネサンス幻影」第9場scene5
聞いていかれませんか。
フィレンツェ郊外にある池のほとりで結婚式を挙げたユンジェ。
「さあ、奥様。ローマへご案内いたしましょう」
「はい、旦那様」
「「うっ・・・」」
ふたりとも自分が言った台詞にお互いに照れてしまいました。初々しい新婚カップルです。
馬上で睦まじくおしゃべりするユンジェ。
ジェジュンの左手、ユノの右手にある、シンプルな金のリングが日の光を反射してきらきら輝いています。3mmほどの幅があり丸みを帯びたフォルムは男性の指にあっても存在を主張しています。めったに外さないでいいように利き手ではないほうにつけた誓いの指輪。
輝きが目に入るたびに幸せな気分になって微笑がこぼれます。
フィレンツェから南へローマへと向かう途中、木陰を見つけ、持ってきたお弁当で昼食をとることにしました。袋状のパン生地パニーノの中に肉や豆をトマトソースで煮込んだ具が入っています。軽い口当たりのヴィーノ・ビアンコ(白ワイン)を飲んでお腹は満たされました。
「ジェジュン。デザートが欲しいんだけど、もらえるかな?」
「え、あっ、僕食べ物もってきてないよ。ユノ、着替えだけでいいって言ったじゃん」
ちょっと困った顔でジェジュンがあわてます。
グッと腕を引かれユノと近くなります。
「ジェジュンの赤い唇は、この上なく甘いんだ。だから、頂戴」
「ゆっ・んっ・」
キスがだんだん深くなってきて、ジェジュンは力が抜けてきました。
チュっと音を立ててユノが離れてジェジュンを見つめます。
「おいしかったよ。奥さん。ありがとう」
「もうっ。力が抜けちゃったじゃないか」
息が上がってドキドキが止まりません。
「おっ、いい反応。今夜が楽しみです。俺の奥さん。
さあ、出発しよう。日暮れまでにはローマに着かないと」
ジェジュンをお姫様抱っこで抱き上げて馬に乗せます。
今日はあれこれ、サプライズがいっぱいで、
『僕の心臓、今日1日もつかしら?』
ちょっと心配になるジェジュンでした。
次へ続く。