語り部アロマが紡ぐ
「石想アドバンス レベル110」聞いていかれませんか
星降る村 ヤギ小屋
天に召される魂があれば、生まれ出でる魂もある。お腹が大きかったヤギのシロに、出産の時が訪れました。プコリンは、一生懸命、横たわるシロの背中をさすっています。
「シロ!頑張って。ねぇ。父さん、シロ苦しそうだよ」
「うん。シロは初産だから産道が固いんだ。大変だけど、ここを頑張って、みんなお母さんになるんだよ」
乾草の上に体を横たえ、苦しそうな声で鳴くシロ。
ちょうど倉庫から飼葉を運んできた、ユノ、ジェジュン、チャンミンも、その場で見守ります。
「プコリン。そんなに心配するな。大丈夫。ヤギは比較的安産なんだから」
プコリンの父親が、タオルを準備してきて説明してくれます。
ミェエエエエーーッ耳をつんざくような、シロの鳴声が響き渡ります。
「シロ。シロッ。痛いの?」
プコリンの心配は、増すばかりです。
シロの産道から、袋状のものが出てきました。力尽きたように、鳴くのを止めるシロ。プコリンの父親が、シロを励まします。
「ほら、きばれ。シロ。ここで休むと赤ちゃんが苦しいぞ」
頭をもたげたシロ。力を入れているようです。するっと膜に包まれた子ヤギの口元と前足が見えました。
「シロ。もう一回!」
子ヤギの頭が、完全に出ました。父親は足を掴んで、ずるっと引き出します。
生まれたばかりの子ヤギ。まだ、羊膜に包まれ、羊水で濡れています。タオルでぬめりをふき取り、シロの顔の近くに置いてやると、子ヤギはメェエと鳴き、シロは、子ヤギを舐め始めました。そこに気を取られていると、なんと、もう一匹、生まれているではありませんか。
「シロ。すごい。2匹のお母さんになったんだ」
プコリンの父親は、二匹目も、拭いてやります。胎盤が出てきたのを見て、出産が終わったことを教えてくれました。
「よくやったな。シロ」
プコリンは、ポロポロ泣いています。
「良かったっ。産むってことも、生まれて来るってことも、大変なんだ~」
「プコリン。お前が生まれたときは、こんなもんじゃない。難産でな、母さん、そりゃあ大変だったんだぞ。もっと母さんのいうこと、聞いた方がいいんじゃないか」
「ああっ、そうだったんだ。うん。お母さんのいうこと聞く。好き嫌いしないで食べる!編み物もちゃんと覚える!」
プコリンの父親は、目を細めて笑います。
「そうか・・・。いい勉強になったな。この子ヤギたちの名前は、お前が決めなさい」
「うん!」
ユノと、ジェジュンと、チャンミンは静かにその場を離れましたが、プコリン並みに、感動していました。出産を、目の当たりにしたのは、初めてだったのです。
「お産って、あんなに苦しむんだ。大変なことなんだな」
「赤ちゃん産んだばかりのお母さんって、すごく幸せそうに笑っているじゃない。なのに、あんな痛みや苦しみがあったことを、感じさせないってすごい。ホントにすごい」
「私の母は、出産の出血で、命を落としました。だから、ずっと見られなかったんですけど・・・偶然でも、見れて良かったです。命が生まれるって、すごい事なんですね。いまも、ちょっとドキドキしています。
あ、そうだ。プレアデスに、星を見に連れていってもらおう。今なら、違う感覚が味わえる気がする」
「あ、チャミ。2回目だろ。今度は俺たちも行くぞ」
ユノとジェジュンも参加して、明日は4人で、星空ツアーとなるようですね。
ところで、ユチョンはどうするの?
「ん~。おいらは、気管支が弱いから~。冷たい空気吸い込んだら、死んじゃいそうになるの~。だからパス」
だそうです。
To be continued