語り部アロマが紡ぐ

「輝きの姫 第135光」聞いていかれませんか。

 

テイト国 さいかい街

 

昔語りのおばあさんの家を後にした5人は、さいかい街の食堂に行きました。

ユノは以前食べられなかったチキンライスを注文します。

チャンミンとユチョンはラーメン。

ジュンスはひつまぶし。

ジェジュンはかつ丼です。

 

食事を待ちながら、ジュンスは皆に相談します。

「中央広場に魔法で現れると大勢の人を驚かせてしまイマス。ましてや陽が落ちた暗闇ではパニックを引き起こすかもしれませんネ。どうしまショウ」

「だったら図書館の2階に、河に面した広いバルコニーがありました。そこに移動してはどうでしょう。夜は無人なはずです」

「OK。そこにしまショウ」

 

おのおの注文した料理が配膳されてきました。

「このラーメン・・・めちゃくちゃ旨い。『らーめん丸富』って覚えておこう」

「おや。私のラーメンの器には『SHIN-SHINラーメン』って書いてありますよ。豚骨スープ最高です!」

「あつた蓬莱軒って記してある丸い器にウナギが敷き詰められて、お茶碗に盛り薬味によって4つの味を楽しめるなんて、すごくファンタスティックです!うははん」

ジュンスの声に頷くユチョン。

「料理のアートだな。そのひつまぶしもラーメンも」

「このカツ丼、すっごくうまい。ごはんの上にサクサクの衣のカツがドーンとのって、下に甘めの味付けに煮た玉ねぎと卵とじがたまんない。こんなに美味しいものがあるってことに感動だよ!」

ユノは黙々とチキンライスを頬張っていました。

 

日が落ちた頃、5人は図書館のバルコニーに移動しました。

「あっは。広場にランタンを手に持った人たちがたくさんいる。丸い光が散らばってるみたいでキレイだ」

ふっと

灯りが一斉に消えて、真っ暗な空間になります。

 

向かいの川岸から

ヒューーーーーと高い音が聞こえたかと思ったら

 

ドドーーーン

 

腹の奥まで響いてくる重厚な音と共に、夜空に大きな無数の光のすじが、まるで花びらのように開き、すっと消えていきました。

「なんだ。あれは・・」

ざわつく群衆の声は、次々と上がる花火の迫力のある、それでいて儚い美しさに、だんだんと感嘆の声に変わっていきました。

 

ドーーーン

 

夜空に打ち上がると、地上で見上げる人々の笑顔を明るく照らし出します。

5人も見たことのないこの光景に見とれていました。

 「ふぉふぉふぉ。どうじゃ。ワシのイベントは」

すっとバルコニーに現れた獅子梵に、ユノが反応します。

「獅子梵様!すごいです。」

「ワシは世界樹を隠し続けていることを疑問に感じる時があってな。すべての者に目にしてほしい。その存在を感じてほしいと思うことがある。これを叶える手段を考えてみたのじゃ。

我が名の『梵』の字は樹の上を風が吹く様を表すのじゃよ。ワシは神の栄光をどのように表すべきか、神の誉れとなるために何をなすべきかを500年間探し求めていた。

これがワシの集大成じゃ。

まさしく『世界樹を一瞬だけ表す花火』じゃ。

もちろん本物は秘すべきもの。であるが、そのような象徴をすべての者の目に見える形に現したかったのじゃ。

ほうら、見みるがいい。黄金の打ち上げ花火じゃ」

 

今まで打ちあがっては花開き消えてから、次の花火が打ち上げられていましたが、

あでやかに、はなやかな速射連発花火に変わります。

バンバンバンと無数の大音響が響き渡り

周囲を黄金色に染め上げるほどの大輪の花々が夜空を占領します。

燃え広がった火花は地上に向かい舞い落ちて

静かに消えていきました。

 

大音響の余韻なのか、自分の感動の振動なのかジンジンとした痺れが身体を包んでいます。

「想像以上の創造物ができた。ワシは大満足じゃ。皆が同じ思いで花火を見上げ、感嘆の歓声をあげる。天空に皆の『善』の思いを打ち上げるようじゃろう。これがどれほど宇宙に響くか、ワシには計り知れん。

光らぬ石が積みあがってしまったから、暗黒時代が訪れたのじゃ。まあ、そのおかげで太陽の有難さが身に染みたじゃろうがな。うむ。そう考えると、暗黒時代は必要であったのかもしれんな。

ねたみ、絶望、自己否定、憎悪、悲嘆などの思念波が押し寄せると世界樹の粒子が乱れる。

反対に、魂を躍動させる輝きとは、喜び、感動、希望、挑戦心、立ち直る心の強さであるな。それらの波動は世界樹を強くしてくれるものじゃ。

ユノ。ジェジュン。チャンミン。ジュンス。ユチョン。

お互いを思いやり、助け合い、信じあうことができる発達した文明をつくることが神の願いじゃ。多くの者の幸せな姿こそ、次なる希望の糧となる。希望とは魂の躍動じゃ。ワクワクする心じゃ。お互いを慈しみ、喜びの多い、愛に溢れた統合の時代を創りあげようぞ。

ひとりひとりが持つココロの大陽の存在を知らしめ、太陽を輝かせることこそ神の栄光を現わすことにほかならんとワシは確信しておる!」

「はいっ。獅子梵様」

 

続く