語り部アロマが紡ぐ
「雨の記憶 十五雫」聞いていかれませんか。
天界 雷神ユノの館
ユチョンはあてがわれた部屋であれこれ考えます。
本当は、今すぐにでも、『龍王の涙』の在り処を探し出したいところでしたが、なにしろ『自分の想いが形になるという天界』です。慎重に事を進めないと、すぐ捕らえられてしまう可能性があります。
「すこし、天界の様子を掴んでから事を起こそう。なにせ周りは神様はっかりだからな」
翌朝、雷神様の出仕に、館の召使全員が玄関前に並びます。
金の鎧に身を包み、朱赤のマントを翻しながら歩む雷神ユノ。傍らに太刀を持った龍神ジェジュンが寄り添います。
巨大な門が大きく開け放たれ、主を送り出します。
「いってらっしゃい。僕の雷神」
「ああ、行ってくる。ジェジュン」
太刀を受け取ると大きな声で
「行って参る」
と召使たちに声をかけ、颯爽と出掛けていかれました。
「ああ、行っちゃった。淋しいな。あ、そういえば昨日見つけたユチョンはどこ?」
「ここにおります」
ユチョンが龍神様のそばに駆け寄ります。
「おはよう。よく眠れた?」
「あ、いえ。天界の冴えた空気のせいでしょうか。あまり眠れませんでした」
「あっは。ユチョン、繊細なんだね。周りの気を感じ取りやすいんだ。でも、それって気疲れしちゃうでしょ」
「はい、よくお分かりで・・」
「『水の間』を教えてあげる。来て」
龍神ジェジュンに導かれ、屋敷の部屋のひとつに案内されます。
精巧な龍の彫り物がいくつも施された重厚な木の扉を開くと、そこは、流水の音が響き渡る空間でした。
正面は見上げるような高さから見事な滝が落ち、床に落ちる前にミストとなって霧散しています。
床には薄く水を張った水鏡が円形に大きく広がっています。
水鏡の中央に、ゆらゆら揺れながら、真円の水晶の球が浮いていました。
「りゅ・・・」
思わず口に出してしまいそうになった言葉を必死に閉じ込めるユチョンでした。
続