語り部アロマが紡ぐ

「石想アドバンス レベル90」聞いていかれませんか?

 

石造りの街

 

一方、チャンミンとジュンスとユチョンは、町はずれの林に来ていました。白い石壁を背景に、見事な大イチョウが、列をなして立っていました。輝くような黄色に染められたたくさんのイチョウの葉が、地上に敷きつもり、まるで絨毯のようです。ザクザク音をたてながら、並木道を歩くチャンミン、ジュンス、ユチョン。

「なんて暖かそうな、柔らかな黄色!秋の日だまりを絵にしたら、こんな感じだろうね」

「白い石壁とのコントラストもいいですね。そして、空は青く、空気はキンと冷えている。最高です」

「ふふん。イチョウの木。褒められてご機嫌だ。ちょっと聞いてくるね」

イチョウの幹に抱き着き、しばらくじっとしているユチョン。

「教えてくれてありがとう」

ふにゃと笑顔を浮かべ、ジュンスとチャンミンの元に戻ってきました。

「どうでした?」

「うん。あのね。この街は平和で、活気があって、職人さんが多いから、頑固な人が多い。けど、

それも、いい味を出しているだろうって、とてもいい街だってさ。でも、昔は、海風が強くて、火山灰が降ったりして、土地自体は痩せて、作物は実らない。だから長い事、貧しい村だったんだって。火山のお蔭で石灰岩が豊富にある。これを利用しようということになってから、街として栄えたんだって」

「弱点を利点に変換した発想の勝利ですね」

「そうそう。『幸福の人魚』が、この街に住んでいるから、災害や大きな事故から守られているんだってさ。いいよねぇ」

「うはん。幸福の人魚って?」

「人魚って、空想の生物って言われているよね。でもね、俺思うんだ。人間が想像することって、実在するんじゃないかなって。宇宙は、すごく雄大で、愛に溢れているんだろう。だったら、僕たち人間が思うようなことは、存在できるレベルのことなんかじゃないかってさ」

「その考え、賛同します。ドワーフやドラゴンは実在した。本の記述しかないかと思われていた鉄の時代は、その残骸を今も砂漠の底に残していた。ちっぽけな我らの想い浮かべることは、実現するし、存在すると考える様になりました」

「うん!宇宙の愛は大きいんだ。ボクたちを、大きな愛で包んでくれるんだから」

「うん。ジュンスはそう言うと思ったよ。でも、チャンミンの反応は、ちょっと驚いたな」

「おん。そうですか。でも、『真実』をどう捉えるかということを、自分なりに考えてみたんです。

『真実とは、自分の五感で認識できる、再現可能な事柄』と、本には書いてありました。

ですが、人間の感覚は鈍いものです。嗅覚ひとつをとっても、犬の嗅覚には、かなり劣ります。

でも、人間が嗅げないにおいを、犬は認識できる。犬の嗅ぎ分けられるにおいというのは、真実として存在しているではありませんか。

もう一点の、再現できるかということに関しては、虹を見て感動して泣いたとしましょう。これを明日再現できるかというと、できないですよね。気候や、それを見る角度、感動した心情など、その時一度きりの現象は、全く同じに再現はできません。でも、その感動は真実なんです。

この旅の経験で、いつなにが起きても、対応できる柔軟な思考を持とうと、この頃、思う様になったんです。

で、ユチョン。『幸福の人魚』とは?」

 

To be continued