語り部アロマが紡ぐ

「雨の記憶 二十雫」聞いていかれませんか。

 

天界 雷神ユノの館 

 

ユチョンの部屋、ふとんを頭から被ってひとり悩むユチョンがいました。

「ああっ。どうすりゃいいんだ~。俺は天界に『龍王の涙』を盗む為に来た。これが目的だ。

じゃあ、なぜ行動できない?

まずはことの起こりから考えよう。

『龍王の涙』をイスマン王が欲しがっている。

イスマン王が俺の母と弟を人質にとって俺に盗みを命令した。

俺は当てのない旅に出た。

タローを助けた。

タローのおばあさんが命をかけて作ってくれた、羽を織り込んだ織物でできた衣と、羽を詰め込んだ絹布を手に入れた。

龍神が現れるといわれる『天女の泉』を見つけた。

飯も食わず、5日間願いを込めてただ唄った。

龍神様が現れた。

天界の雷神様の館に招かれた。

『水の間』に『龍王の涙』があるのを教えてもらった。

 

あとは、見つけた『龍王の涙』を盗んで人間界に帰る。盗んで帰ればいいのに~。どうしよう。龍神ジェジュン様、すっごく綺麗で優しくていい神様だ。でも俺が『龍王の涙』を盗むと仮死状態になっちゃう。龍神様が仮死状態になると雷神様と風神様がお怒りになり天変地異が怒るかもしれない。

人間界に災いがおこるなんて。俺が盗むことで大勢の人が苦しむなんて・・

ああ、どうすりゃいいんだ~。答えがでないよ~。」

 

その夜、いつの間にか眠りに落ちたユチョンは夢を見た。

 

かあさんが泣いている。

俺が声を掛けても、顔も上げずに泣き続けている。

 

ユファンの姿が見えない。

「かあさん、ユファンは?」

 

さらに大声をあげて泣くかあさん。ある方向を指差す。そこに視線を向けると 

柱に鎖でくくられ、体中に鞭の痕が刻み込まれたユファンの姿があった。 

「ユチョンが帰るまで、毎日一度ユファンの身体に鞭が入る。私の泣き声が聞こえればユチョンが早く帰ってくるかもしれないから、こうして毎日泣いているの」

 

「かあさん!ユファン!」

夢から覚め、汗をびっしょりかいたユチョンは、肩を動かし大きな呼吸を繰り返す。

 

「夢・・?ほんとに夢なのか?」

 

「あ・・ユファンを助けなきゃ・・。『龍王の涙』を持って帰らなきゃ・・」

 

夢遊病者のように、真っ暗な館の中をさまよい、『水の間』の扉を開く。

轟く水音は耳に入らず、ただ『龍王の涙』を見つめ、ばしゃばしゃと水鏡に波紋を散らす。

羽毛を詰め込んだ絹布で『龍王の涙』を包み込んだ。

 

願うは

「ユファンの元へ!」

 

強い願いは現実へ 

ユチョンは人間界へ移動した。