語り部アロマが紡ぐ

「極上の未来 scene5」聞いていかれませんか。 

 

子どもが有名になると、その親は、我が子に過剰な期待を寄せるようになるものです。

 

ジェジュンの母は、元々、ひとり息子のジェジュンを慈しんでいましたが、このごろは、壊れ物でも扱うかのような感じです。

ユノの果樹園へ遊びに行くことに、いい顔をしなくなりました。

「草で、その美しい肌に傷がついたらどうするの?」

 

「ほら、この香水、新作なんですって。貴方へのプレゼントで頂いたの。つけてごらんなさい。素敵よ」

 

「美しい子には、美しいものだけがあればいいの」

 

そんな風に、家に閉じ込められる日々が続きました。

ジェジュンは、多少の窮屈さは感じていましたが、母親からの大きな愛情には、応えなきゃいけないと子供心に考えていました。

 

母は、口癖のように

「天使のように美しい貴方には、極上の未来こそがふさわしい」

といい、

占い師にジェジュンの将来を見てもらったり、学識のある人に、どう育てたらいいのか、聞いて回るようになりました。

 

ある占い師のお見立ては、こうでした。

「この子は、とても華やかで、数奇な運命を辿るじゃろう。たが、本当に大切なものは、すぐそばにあるのじゃよ。お前さんの、その美しい瞳は、ちゃんとそれを見つけだせるかのう」

 

占い師の家からの帰り道、母は、

「あの占い師は外れだったわ。

ジェジュン、覚えておきなさい。すぐそばに素敵なものは落ちて無いの。遠くまで捜し歩いて見つけるものよ。

あるいは、素敵な人が現れて、ジェジュンを幸せにしてくれるはずよ」

「そう、なのかな‥」

「そうよ!」

と言い聞かせるのでした。

 

ジェジュンが14歳になったばかりの頃、

何年も予約待ちしていた有名な先生が、ジェジュンのことで相談にのってくださると、大雨の中、喜び勇んで両親は出掛けて行きました。

 

その道中、土砂崩れがおきて、ジェジュンの両親が乗った馬車は、土砂に埋まってしまったのです。