語り部アロマが紡ぐ
「雨の記憶 一雫」聞いていかれませんか。
「わぁ、思ったより大きいんだね。あ、ちゃんと本物の刺繍糸が見える。このパネル、オリジナルなの?」
夕食後の寛いだ時間、ジェジュンが、ユノの持って帰ってきたパネルを手にとって眺めています。
ここは、ふたりの愛の巣です。
表向きは、逢えていないことになっていますが、ユノとジェジュンの絆は強く、この過酷な状況の中、密かに愛を育んでいたのです。
今は、離れ離れの活動のため、ふたりの『帰る家が同じ』であることが、とても大切で、お互いに必要なことなのです。
ジェジュンが見ているのは、日本の雑誌の取材で作成された、有名な刺繍作家の作品。写真に直接刺繍し、デコレーションが施された芸術品です。
作品の土台となる写真撮影のポージングをするとき、チャンミンは滑らかな動きを、ユノは猛々しい動きをして変化をつけました。
結果、芸術家のインスピレーションは、チャンミンを【風神】ユノを【雷神】として表現し、金糸銀糸を用いた華やかな作品が仕上がりました。
「いい出来だろう。このサジン、ペンの評判もいいんだぞ。作家の清川さんがプレゼントしてくれたんだ。
『これまで数多くの作品を手掛けてきました。この【風神雷神】は、我ながら会心の出来です。ぜひこれは、東方神起のおふたりに持っていて頂きたいのです。そして、機会があれば、またモデルを、お願いしたいと思います』
ってさ。チャンミンなんて
『ありがとうございます。また神様にしてもらえますか?』
ってすごく喜んでた。【風神】のパネルを、家に持ち帰っているはずだよ」
「あはっ。かっこいい!ユノ、ドヤ顔決まってるし!
【風神雷神】か・・。
ふふっ。懐かしいな・・・。
あ、ユノ。この写真、チャンミンの【風神】とユノの【雷神】、対で飾っていたほうがいいよ」
ユノが不思議そうな顔で問います。
「・・ジェジュン?懐かしいって?」
パネルを置いてユノのほうを向き、微笑むジェジュン。
「憶えていない・・・かな?
麒麟が仕えし雷神ユノ。
鳳凰を従えし風神チャンミン。
あの時僕は、龍神だったんだ・・・」
ジェジュンの白い腕がユノのうなじに、しなだれかかり、甘い吐息でキスをせがみます。
ジェジュンとの深いキスで、
ユノの意識は、深く深く沈み込んでいき・・・・
奥底に眠っていた記憶は、さながら雨の雫のように、次から次へと、ユノの頭の中に甦ってきました。
今に語り継がれる歴史より、さらに、ふるいふるい時代の、
いにしえの日本を舞台に。
続