語り部アロマの紡ぐ
「バンパイアfifteen kiss」 聞いていかれませんか。
マンションの窓の外に広がるロマンテックな夜景。
室内のテレビ画面には冒険に挑む勇者たち。
リビングには、勇者を操るジュンスがコントローラーを握り締め、ユノと共に、大画面に見入っています。
大音響を立て、崩れ去っていくボス。
「やったー!!ボスをやっつけた。
ありがとう。ユノ。この場面は敵キャラが多くて、ひとりではクリアできなかったよ。
横で的確なアドバイスくれたおかげでトラップの回避方法がわかったし、不意打ちにも対応できた。
ありがとう。ああ。うれしいなー」
ジュンスがユノの背中をバンバンたたきながら、喜びを伝えます。
「このゲーム、難攻不落で有名なやつだよ。すごいな。クリア画面が見られるとは思わなかった。俺もうれしいよ。ジュンス」
「ねえねえ、こっちの戦国物も面白いんだよ。ユノ、一緒にやろう!」
「おっ、いいな。ジュンス。やろう!」
「ゆ~、の~、じぇじゅ、眠くなった。一緒に寝よ」
ジェジュンが、襟ぐりの大きな透ける素材のカットソーから、綺麗な鎖骨を魅せつけながらユノの腕に抱きつきます。
いつものユノでしたら、即効お姫様抱っこで、寝室に連れ去られていたことでしょう。
しかしながら、ここに、魅力的なゲームと、ゲームの達人ジュンスがいたのです。
ユノの興味は画面上に向いてしまっていました。
ジェジュンの方を見もしないで答えます。
「ああ、ごめんね。ジェジュン。先に寝ててくれないか。俺、もう少しゲームを・・いってっ」
ジェジュンと触れ合っていた腕にビリッと痺れが走りました。
ジェジュンの方に振り向くユノ。
ジェジュンの身体はほんのり銀色の光で光っています。
「ゆの。お前、何時間ゲームやってるか分かってる?なんと10時間だ。
夕飯も食わないで、ここから動かず、ずっとジュンスのゲーム見ててなにが楽しいんだよ!ガキと同じじゃないか!いいかげんにしやがれ!!」
普段の、ふわふわ、きゃぴきゃぴしたジェジュンからは想像できません。
氷の女王のような冷たい顔をしたジェジュンが、立ち上がりユノを見下ろしています。
「あ、じぇじゅ。わかった。やめる。やめるから怒らないで・・・」
美しい顔立ちの方が怒ると、そらもう、とんでもなく怖くなるものです。
平謝りのユノ。
「いいか?ゲームは遊ぶ道具だ。大人の癖にゲームに遊ばれてどうする!」
「はいっ。ごもっとも!」
「お風呂に入ってきます!」
ユノ、いたたまれず逃げ出しました。
カチャカチャ、ゲーム機を片付けているジュンスの背中に、ジェジュンが言い放ちます。
「ジュンス。お前もバンパイアなら節度をわきまえろ。いつまでも俺のユノを独占するな。わかったな!」
「はい!」
しばらく、ゲーム機は触れられることなく放置されました。
次に続く。