「アディールというのでありますか?よく参られたでありますな!」
ラッカランの島主、メダルオーナーゴーレックを見た瞬間に、アディールとキサラギとドドルは「ダストンさん!?」と叫んだ。不精髭が生えてなくてもバイキング様の帽子をかぶっていなくても、雰囲気として、ガラクタ城の主ダストンと、うりふたつなのである。
「ダストン?弟を知っているのでありますか?」メダルオーナーは目を丸くした。
ダストンの兄だったのか、とアディールは納得した。兄弟だと思うと、わからなくもない。雰囲気が似ているのも、役に立たないものを集めるのが好きなのも。
しかし、ゴーレックは「自分は弟とは違うであります!弟は役に立たないガラクタしか集めないのであります。」と言う。かなり似通った価値観であったとしても、細かい部分は違うということなのだろう。アディールには、その細かい違いはわからない。
島主ゴーレックは、レノッホの帰還を喜んだ。黙って島を出たことを咎める様子はなかったので、島主はよほど寛容なのだとアディールは思った。しかし、実はゴーレックの関心はレノッホの体ではなくてレノッホが持っている小さなメダルの情報だと執事クラノッホは言う。レノッホが反発した理由が、アディールには少しわかった気がした。
島主ゴーレックは、レノッホの帰還を喜んだ。黙って島を出たことを咎める様子はなかったので、島主はよほど寛容なのだとアディールは思った。しかし、実はゴーレックの関心はレノッホの体ではなくてレノッホが持っている小さなメダルの情報だと執事クラノッホは言う。レノッホが反発した理由が、アディールには少しわかった気がした。
「さて、メダルを持っているのでしたら、そこのお宝と交換して差し上げます。いえ、お宝を差し上げますのでメダルをいただきたいであります!」
ゴーレックに言われて、アディールは景品棚を見回した。ふと、液体の入った1本の細長いビンを手に取る。
「これは?」
「それは世界樹の雫であります。傷ついた仲間たちをまた元気にしてくれるであります。」
「怪我も治るんですか?」
「もちろんであります。」
「どんな怪我も?」
「この雫で治せない怪我はないであります。」
「じゃあ、この雫をください。僕の持っているメダルを全部出します。」
そう言ってアディールは道具袋のメダルをすべてゴーレックに手渡す。ゴーレックが両手で受け取ったメダルは8枚。ゴーレックの表情が曇った。
「8枚ですか・・・。世界樹の雫はメダル10枚でお渡ししたいものであります。」
「そ、そうですか。」アディールの表情が、一気に暗くなる。「でも、絶対に手に入れたいんです。その、無理なことを言っているのはわかってるのですが・・・」
そこにスタスタと歩いてきたレノッホが、ゴーレックの手の中の8枚の上にチャリと1枚のメダルを置いた。
「アディールさんにはよほどの事情がある様子。助けてもらったお礼です。どうか足しにしてください。」と言って一礼し、また部屋の隅に下がって行った。
「レノッホさん。」アディールがレノッホに何度も頭を下げた。「ありがとう。ありがとう!」
とはいえ、9枚になったところで、メダル10枚の世界樹の雫には届かない。アディールは諦めてゴーレックの手のメダルを回収しようと右手を伸ばす。メダルを掴もうとすると、ゴーレックの手が先に握られた。
「ゴーレックさん?」とアディールが島主を見上げると「むー。」と唸っていたゴーレックが「わかったであります!」とぴょんと椅子から飛び降りた。
「ゴーレックさん?」とアディールが島主を見上げると「むー。」と唸っていたゴーレックが「わかったであります!」とぴょんと椅子から飛び降りた。
「レノッホが帰ってきて、メダル10枚の情報が聞けたであります。レノッホを連れ帰ってくれたアディールには、特別に1枚おまけするであります。この9枚と世界樹の雫を交換するであります!」
突然のことに「え?」と戸惑ったアディールだったが、すぐに「ありがとう。ありがとうゴーレックさん。ありがとうレノッホさん。」と言って細長いビンを手に取った。そして「郵便局に行ってくる!また後で会おう!」と、走って部屋を出て行った。
数十年前、ラッカラン島はほとんど人の住まない孤島だった。ところが、ひとりの精力的な男が、その孤島にコロシアムを建てた。男は島に駅も作った。鉄道が通るようになると、ラッカランには人々が集まるようになった。人が増えると町になった。ラッカランはレンダーシアの一部ではあるが、もともとは無人の島。地元の民はおらず、全員が外部から来た者。町ははじめから異種族混合の町であり、それが流れ者の冒険者をまた惹きつけた。冒険者が増えると、コロシアムが栄えた。コロシアムが栄えると、より強い冒険者がやってきた。強い冒険者は強い武器を欲し、強い武器を作るために錬金術のギルドができた。錬金のための素材が多く必要になってくると素材屋が出店し、素材から作られた強い武器を売り買いするためにできたバザーに人々は殺到した。今日のラッカランを作った精力的な男、それが島主ゴーレックである。
ゴーレックがそこまで精力的に町作りをしてきた理由は、娯楽に対する大きな意味を見出しているから、と町の人々はささやく。単なる遊び好きの域を越えて、娯楽を世界の人々に提供しようとする姿勢に、ゴーレックを支持する者は多く、それゆえにラッカランは発展を続け、結果的にゴーレックの個人的なメダル収集という娯楽にも良い影響を及ぼしている。
長らく栄えたコロシアムは、リニューアルを目的に一時閉鎖中であり、新設されたカジノもまだオープン前であることもあり、ラッカランは娯楽の島として、いまだ発展途上にある。にもかかわらず、ラッカランがここまで繁栄しているもうひとつの理由は、港町レンドアと提携しているバザーにある。ラッカランとレンドアは、同じレンダーシアバザーの運営であり、両島では同じバザー品が取り扱われている。つまり、レンドアが栄えていればラッカランも栄え、ラッカランが栄えていればレンドアも栄える、という相乗効果が生まれている。グランドタイタス号が航行不能になり、レンダーシア本土との行き来ができない今でもレンドアの活気が衰えないのは、このラッカランでのカジノとコロシアムのオープンを心待ちにしている人々がいるから、とも言われている。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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