「まるで貝殻みたいなお城ですわね。」
城下町からはヴェリナード城がよく見えた。巨大な貝殻の城。そしてその前にある泉を取り囲むように造られた同心円状の城下町。
「アディール、この街、3段になってるぞ!」
ヴェリナードは複雑な3層構造になっていた。
アディールたちが今いるのが第2層。第2層にはバザーや武器防具屋、素材屋などが並び、その下部である第1層へ降りる階段が見えている。逆に階段の上には第3層が広がり、教会や酒場などが立地されていた。泉の周りを円形に囲む第1層をひと回り大きな円形で第2層が囲み、そして更に大きな第3層で取り囲まれる。それが、ウェナ諸島最大の、この城下都市ヴェリナードである。
アディールたちが今いるのが第2層。第2層にはバザーや武器防具屋、素材屋などが並び、その下部である第1層へ降りる階段が見えている。逆に階段の上には第3層が広がり、教会や酒場などが立地されていた。泉の周りを円形に囲む第1層をひと回り大きな円形で第2層が囲み、そして更に大きな第3層で取り囲まれる。それが、ウェナ諸島最大の、この城下都市ヴェリナードである。
「おや。城のバルコニーに誰か出てきましたねぇ。」
城のバルコニーは第3層よりも更に高い位置にあり、街のどこにいてもそのバルコニーが見えるようになっている。
バルコニーに出てきたのは黒いドレスに身を包む砂色の長い髪を持つ女性。その砂色の髪の上に乗る黄金のティアラが、女性の高貴さを物語っている。女性の横にいるのは、同じく砂色の髪を持つ赤いマントの青年。
バルコニーに出てきたのは黒いドレスに身を包む砂色の長い髪を持つ女性。その砂色の髪の上に乗る黄金のティアラが、女性の高貴さを物語っている。女性の横にいるのは、同じく砂色の髪を持つ赤いマントの青年。
「おお、恵みの歌が始まる時間じゃないか。」と言ってアディールの前を通り過ぎる中年のウェディ。
「ディオーレ女王様の歌声を直に聞けるのはこの街の住人の特権なのよね~。」と言う若い娘。
「でも、ディオーレ様には世継ぎがいないのよねぇ。こうして恵みの歌が聞けるのも、ディオーレ様が健在なうちだけなのかしらねぇ。この国の未来はどうなるのかしら。」と別の娘が言うと、最初の娘が「オーディス王子が世継ぎなさればいいのよ。」と返す。
「そういうわけにもいかないでしょ。この国の王はずっと女系って決まってるんだから。」「そうなのよね~。私オーディス王子が好きなんだけどな~。」「あんたはハンサムに目がないだけでしょ!」「えへへ。バレたか。」
「ディオーレ女王様の歌声を直に聞けるのはこの街の住人の特権なのよね~。」と言う若い娘。
「でも、ディオーレ様には世継ぎがいないのよねぇ。こうして恵みの歌が聞けるのも、ディオーレ様が健在なうちだけなのかしらねぇ。この国の未来はどうなるのかしら。」と別の娘が言うと、最初の娘が「オーディス王子が世継ぎなさればいいのよ。」と返す。
「そういうわけにもいかないでしょ。この国の王はずっと女系って決まってるんだから。」「そうなのよね~。私オーディス王子が好きなんだけどな~。」「あんたはハンサムに目がないだけでしょ!」「えへへ。バレたか。」
アディールたちが街の人たちの声に耳を傾けている間に、女王ディオーレの恵みの歌は始まっていた。
・・・海に生まれ海に生きる。それが我らウェディの民・・・
一度ラーディス島の遺跡で聞いたことのあるアディールでも、その歌声の美しさにあらためて心を打たれた。しばらくウェナ諸島を離れていたが、海に生まれ海に生きるウェディの体を持つアディールは、その歌声に自然と吸い込まれてしまう。
・・・母なる海に祈りを捧げ、我らは求める神の恵みを・・・
直立する者、敬礼する者、目をつぶって胸に手を当てる者。ヴェリナードの人々はそれぞれに歌と、その歌声の主である女王ディオーレに敬意を示していた。
・・・大いなる海の神よ、我らの命我らの思い、守りたまえ、清めたまえ・・・
歌が終わると、街の中央の泉の水がキラキラと光り出す。そして、潮風は爽やかに、海鳥の声は晴れやかに、街の中は賑やかになった。
皆が皆、女王の歌に喝采し「活力が出た」「今日もまたいい日が送れる」「仕事のやりがいが出た」「おじいちゃんの具合が良くなった」と街中が喜んだ。
そして、女王と、王子と思われる青年はバルコニーから姿を消し、街の人々も余韻に浸るまでもなくサッと離散する。
皆が皆、女王の歌に喝采し「活力が出た」「今日もまたいい日が送れる」「仕事のやりがいが出た」「おじいちゃんの具合が良くなった」と街中が喜んだ。
そして、女王と、王子と思われる青年はバルコニーから姿を消し、街の人々も余韻に浸るまでもなくサッと離散する。
「あれ。こんなに心を洗われる歌なのに、みんなすぐに戻っちゃうんだね。」と、アディール。
「ですねぇ。毎日聞ける時計のようなものなのでしょうかねぇ。」
「だけれど、毎日歌のチカラで城下町に活力を与えるなんて、この街は素敵な街ですわ。」
「ここだけじゃない。この歌のチカラを増幅させる装置もあるんだ。そのおかげで、この歌はウェナ諸島どこにいても届く。歌詞まではよく聞こえないんだけどね。聞こえるか聞こえないかわからないぐらいの微かな旋律が、ウェナ諸島を守ってるんだ。海が穏やかであるのも、風や気候や、それに魔物が穏やかなのも。みんなあの歌のおかげなんだ。」
なるほどなるほど、とキサラギとパルポスが頷いていると、いつの間にかみんなとはぐれていたドドルが戻って来た。
「なあなあアディール。あっちの人に言われたんだけど、旅の人はみんな女王様に挨拶に行かないといけないらしいぞ。おいらたちも行ったほうがいいのかな。」
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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