キラキラと光りながら四散した小舟から落ちたアディールたちは、その太陽の灼熱の中心部に立っていた。
「ここは・・・レイダメテスの内部・・・?」アディールがきょろきょろと見渡す。
「神殿、でしたのね。」キサラギの言うとおり、岩でできた神殿。それがふたつ目の太陽レイダメテスの正体だった。
「もし運命が分岐していないのだとしたら・・・」そのパルポスの言葉に「今頃はベルンハルトとともにこの神殿は封印されていることになる。」とアディールが続ける。「確かめに行こう!」
しかし、その神殿の最奥部まで辿り着いたときには、もうベルンハルトは生きてはいなかった。命と引き換えにレイダメテスを封印していたのではない。それが叶わずに、もう帰らぬ人となっていたのである。
そのことをアディールたちに伝えたのが、神殿の守護者たる巨体の格闘家。両のこめかみから鋭い2本のツノが突き出し、額にも4本の小さなツノ。逆立つ髪は天を突くようでもある。
巨体の格闘家は、ラズバーンと名乗った。そして、今しがたベルンハルトという人間がここまで来たので、それを冥土へと送ったのだとも言った。
「やっぱり。運命はもう分岐している。」アディールはサッと短剣を構えた。
「黙って焼かれて死んでいればよいものを。」とラズバーンは言う。「このレイダメテスは死者の魂を糧にしている。焼かれて死んでいった者たちの魂をな。そして」ラズバーンは自分の心臓のあたりから、深い闇色の玉を取り出して見せた。「もはやこの冥王のタマゴには、十分な量の魂が取り込まれている。」ラズバーンがまたその闇色の玉を心臓のあたりに持って行くと、玉はすうっとラズバーンの中に入っていった。「我らが王のお生まれになる日も近い。そうなれば、世界は暗黒の時代を迎えるであろう。」腰を低くして、両の拳を構えながら格闘家は高らかに笑いながら言った。「世界を救うなどというくだらぬ希望に命を賭けたことを後悔するがいい!」
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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