小説ドラクエ10-14章(5) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。


 アディールはしばらくその場に立ち尽くした。ザーンバルフや他の3人も、何も言わずにそれを見守る。
 やがてアディールが口を開いた。
「・・・僕たちのやってることは正しいのかな?」
 弱々しく言うアディールの肩をザーンバルフが拳でつついた。
「俺たちは別に正義の権化ってわけじゃない。冥王が世界を窮地に陥れる存在だとしても、それが理由で俺たちは立ち上がったわけじゃない。ベルンハルトの言葉に倣うなら、俺はお前に協力するのが面白いし、正しいと思っている。ただそれだけだ。」
「ワタクシはザーンバルフさんの力になりたいし、そのザーンバルフさんはアディールさんに協力すると言っている。もちろん、サリリア浜の人たちのカタキを討ちたい気持ちもありますので、私怨と言われるのなら私怨です。しかし、冥王に私怨ある仲間が集まったのは偶然ではないはずです。ワタクシは、正義でも私怨でもなく、運命だと思いたい。」
「シエンってのは、おいらよくわからないけど、でもみんなのために冥王をやっつけたいぞ。難しいことはわからないけど、たとえ冥王がセイギだってみんなが言ったとしても、それでアディールが間違ってるってみんなが言ったとしても、おいらはアディールについていくんだ!セイギはよくわからないけど、おいらはアディールの仲間なんだ。」
「生まれ変わるときに、天の声に言われましたわ。生まれ変わる意味。生まれ変わった私の使命。正義も私怨も、もしかしたら私たちには関係のないことなのかもしれませんわ。私たちの意志とは無関係に、私たちは大きな定められた流れのひとつの歯車なのかもしれない、そう思ったりもしますの。私は世界の理を知りたい。けれども、その理に近付くと思わされますの。私たちは定められて生き返しを受けた。特にアディールは、同じ日に生まれた同じ名前ウェディに生まれ変わった。そして、人間のアディールからウェディのアディールに生まれ変わるきっかけを作ったのが冥王。これは私怨という言葉では説明がつきませんわ。冥王に村を滅ぼされるよりずっと前から、アディールは生き返しを受けるための体を持っていたんですもの。私には定めだとしか思えませんの。」
「と、いうことさ。」ザーンバルフがまたアディールの肩をつつく。「ベルンハルトがどう言おうが、正義がどこにあろうが、俺たちには俺たちの戦いがある。俺たちがお前について行くのは、お前が正義だからってわけじゃない。あえて理由を言うのなら、それは」ザーンバルフが言うのとパルポス、ドドル、キサラギが言うのは同時だった。「お前だからだ。」「運命だからですよ。」「仲間だぞ。」「定めですわ。」
「みんな・・・」アディールが潤むような目で言った。「ありがとう。みんな。」
 そして、力強い一歩は駅のほうに向けられた。
「メギストリスに行こう。誰のためでもない、僕たちのための戦いだ。」
 アディールの後に4人が続いた。



続きを読む

前に戻る


目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



ドラクエブログランキングはこちら  
       ↓


読者登録してね