小説ドラクエ10-22章(5) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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 以前アディールたちは、ガラトアひとりにでもまともには戦えなかった。ヴェリナードでの戦いでは、オーディス王子の助けがなければ、おそらくアディールたちはガラトアに倒されてしまっていたことだろう。そして、それは逆にも言える。もしシルバーデビルの助けが間に合わなければ、ガラトアのほうももう息絶えていたはずである。
 紆余曲折あり、今またこうしてアディールたちはガラトアと対峙している。しかも、ガラトアと同等にもそれ以上にも見えるベリアルと同時に。

「みんな!慎重に!」そう言いながら、アディールは考えを巡らせる。
 ベリアルのチカラは読めないものの、ガラトアのほうは、手のうちが見えている。地獄の業火メラガイアーや固体空気の極寒の槍マヒャデドス。ヴェリナードのときは、細い通路であったがゆえに、業火と極寒の相殺によって発生した圧迫空気に吹き飛ばされはしたものの、今この広い空間で、その心配をする必要はない。ならば、取り囲んでしまえば、全員が同時に攻撃を受けることもないように思える。唯一、多方向に攻撃できるメラストームでも、五指から飛び出す呪文である以上、背後にまでは火球が届かないであろう。
「四方から囲もう!」アディールのその言葉で、4人はまた四方に散る。ガラトアを正面に見据えたアディールは、今度は、さっきとは逆の位置にいる冥王に背中を向けていることになる。しかし、頬杖をついて戦局を楽しむように眺めている冥王のことを気にする余裕は、もはやアディールにはない。
「ふむ?先の戦いですでに見極められたということか。」取り囲まれたガラトアが白い仮面の下で言った。「では、人間の姿を取り戻したお前たちのチカラ、いかほどのものか、見せてもらおう。」
 そのガラトアの傍らでは、黄色い牛のような巨体、ベリアルが「グフフ」と笑っている。「ガラトアよ。取り囲めばよいと思われておるぞ?」ベリアルとガラトアは、横並びの位置で、四方向から取り囲まれて状態にあった。取り囲まれて、徐々にその囲みを小さくされながら「自らこの陣形を取るとは。馬鹿な奴らよ。」ベリアルはむしろ笑い、両足を踏ん張って、体に力を込めて唱えた。「イオグランデ!」
 イオナズンよりも激しい光の爆発。ベリアルの体が弾け飛んだのかと思うほどの猛烈な風圧。ベリアルを中心に、冥王以外の、その場にいた全員がその爆発に巻き込まれた。爆風の中「きゃあ!」「うあぁ!」と、キサラギとドドルの叫び声が響いた。一方で、キンという高い音がしたかと思うと、爆発の光が反射してベリアルのほうへと向かう。反射させたのはパルポス。爆発の光に巻き込まれる前にマホカンタを唱えていたのだ。
 しかし、跳ね返った爆風はベリアルに届くことはなく「マホステ!」と唱えるガラトアによって呪文はかき消された。もちろんガラトア自身も涼しい顔。自分も、マホステによってイオグランデから身を守ったのだろう。
「ベリアル殿もお人が悪い。」白い仮面の下から笑うような声。「使うなら使うと先に言っていただければよいものを。」
「グハハ。その必要もなかろうよ?参謀。」巨牛はイボのある太い尻尾で床をピシピシと叩いて愉快そうに言った。



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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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