「メギストリスに来たのはいいけど、ベルンハルトはいったいどこにいるんだろう。」
プクリポの都メギストリスは、華やかな街だった。オルフェアとは違い、街の大きさは決してプクリポサイズではない。一軒一軒の家はプクリポ用に建てられてはいるものの、街全体としては、アディールやザーンバルフから見ても十分広い。その効果は十分にあるようで、実際、ウェディやオーガの旅人も多く、他国との交流も盛んであるように窺えた。
「ベルンハルトは冥王の手の者。たくさんの魔瘴を集めるためには、やはり王様に取り入るのが良いと思いますわ。」
パルポスも、キサラギの意見に賛成したようで「確かに。ひとりで魔瘴を集めるのは効率的ではありませんね。ワタクシがベルンハルトの立場でも、きっと王を利用するでしょう。」と言う。そう言った後で「もちろんワタクシはベルンハルトの立場ではないのでそんなことしませんよ!」と慌てたように付け加えた。
メギストリス城は、都の中でも高い丘の上にあり、アディールたちは長い長い階段を上って城の入り口の門をくぐった。街と同じように城内も広く、プクリポでなくとも、移動に苦労する。壁には立派な額縁がかけられていて、肖像画が描かれている。そのひとつには、ぱっちりとした瞳のプクリポの女性が描かれていた。顔色が水色ならば、スライムと間違えられそうな表情をしている。
「これは誰だろう。」とドドルが額縁に近付き「アルウェ王妃だよー。こんな顔だったんだね。」と驚いた。確かに、兄であるナブレット団長とは似ても似つかない。
「隣りの絵、これはなんだか見たことがある気がする。」とザーンバルフが絵に近寄る。「そうだ、こいつがフォステイルだ!ミュルエルの森に石像があったんだ。」ザーンバルフが見ている肖像画には、背中にリュートを背負う白紫のロングヘアーのプクリポが描かれている。端整なその顔つきは、男性か女性かもわからない上に、プクリポかどうかもわからないほどである。
アディールが肖像画から目を戻すと、城門からひとりのプクリポが入って来るのが見えた。背中には背丈よりも大きなリュートを背負っている。白紫のロングヘアー、端整な顔つき。
「ねえ、ザーンバルフ。」アディールはザーンバルフの肩を叩き、そのプクリポを指差した。「あれ、その絵のフォステイルだよね?」
それにはザーンバルフも驚き、ただただ端整なプクリポが通り過ぎるのを見つめるばかり。プクリポのほうが、それに気付いたようで「どうしました?ぼくの顔になにかついていますか?」とザーンバルフに声をかけた。
「ああ、いやすまない。なんでもないんだ。」と言うザーンバルフは、両手を上げて掌を見せるようなポーズをしていた。
「旅の人ですね。」端整なリュートのプクリポが言う。「この国は今危険な状態にある。早く安全なところに逃げたほうがいい。」
「危険な状態?」今度はアディールが口を開いた。
「そう。メギストリス王プーポッパンは王家の儀式をしようとしています。でも、それは危険な行い。どうにかして王を止めなければならない。」
「だったら僕たちも手伝います。僕たちは魔瘴を封じる旅をしているんだ。」
「魔瘴を?確かこの城にも王と一緒に魔瘴を抑え込む研究をしている学者がいます。レンダーシアから来たイッドという人間の学者です。あなたたちもそのお仲間ですか?」
「いや、イッドという人は知らないんだけど、僕たちは僕たちで。」
「そうですか。」リュートのプクリポは一呼吸置いて続けた。「この国には未来を予知できる王妃がいました。」
「アルウェ王妃ですね?」
「王妃を知っているのですか?しかし、王はその未来予知を嫌って、決して信じようとしませんでした。だからアルウェ王妃は予知したことを誰にも話さなかったのです。」
「なぜそんなに未来予知を嫌うんです?」
「それはわからない。しかし、ぼくには、それを王に信じてもらう努力をするしかない。」
プクリポは、では、と言って場内の階段を上って行った。プクリポの体が小さすぎて、リュートが階段を上って行っているように見えた。
「どういうことだろう?」リュートが見えなくなってからアディールがつぶやく。
「ベルンハルトが誰と繋がっているかということですね。」パルポスが答えるように言った。
「いや、それもあるんだけど、英雄フォステイルは今も生きているということなのかな。」
「フォステイルがベルンハルトと繋がってるのか?」今度はドドルが言う。
「その可能性もありますわね。フォステイルは王の儀式を妨げようとしていますものね。」キサラギが半分頷く。
「とにかく、一度王様のところへ行こう。フォステイルの言葉が本当かどうか、それを確かめる必要もある。」
アディールたちは、フォステイルが上っていった階段を駆け上がった。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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