風車塔。儀式の間。
「なんだ、この邪悪な気配は。代々の王たちはこんな場所で聖なる儀式を?」
メギストリス王プーポッパンが戸惑う。「本当に討伐隊は魔物を倒したのだろうな?」
メギストリス王プーポッパンが戸惑う。「本当に討伐隊は魔物を倒したのだろうな?」
そこにイッドが進み出る。腰の曲がった老学者の姿。
「ご心配なく。討伐隊は私の手下が始末しました。」丁寧な物言いが、逆に悪意を明確に表わしていた。
「なんだと!?どういうことなのだ、イッド!?」
「この儀式の間は呪いに包まれています。あとはあなたが命を捧げてくださるだけでよい。王さえ死ねば、呪いのチカラによってプクランド全土が魔瘴と災いに包まれるでしょう。」
老学者はドロンと魔軍師の姿に変身した。「さあ、愚かなる王よ。その命を我に差し出すがよい。」
老学者はドロンと魔軍師の姿に変身した。「さあ、愚かなる王よ。その命を我に差し出すがよい。」
「イッド!それでは、フォステイルやあの旅人が言うことが正しかったというのか!?」
ローブに掴みかかるプーポッパン王を魔軍師が煩わしそうに振り払った。王は弾き飛ばされ、王冠がコロコロと転がった。
「王よ。潔く命を捧げよ!」そう言ってイッドは両手を広げた。魔力がイッドの杖の先端に集中し、メラメラと炎が燃え上がっている。「焼き尽くしてくれよう!」
「お父さん!」
そのとき、儀式の間にラグアスが飛び込んで来た。「間に合った!」ラグアスはそのまま王に駆け寄る。「ノートが見つかったんだ、お父さん!これでプクランドは守られるんだよ!」
そのとき、儀式の間にラグアスが飛び込んで来た。「間に合った!」ラグアスはそのまま王に駆け寄る。「ノートが見つかったんだ、お父さん!これでプクランドは守られるんだよ!」
「来るな!ラグアス!」王は王子に向かって叫んだ。
「ほう、アルウェのノート。実在していたとは愉快。今思えば、フォステイルの姿になっていたのも、ノートのチカラだったのだな。いいだろう、先に王子とノートを処分してやろう。」イッドが燃え盛る杖をラグアスのほうに向けた。
「ラグアス!逃げろ!」王がそう言うのと、イッドが呪文を唱えるのは、ほとんど同時だった。
「メラゾーマ!」
巨大な火球がラグアスを襲った。
ラグアスは目をつぶってしゃがみ込む。何者にも、火球を止めることはできない。
ラグアスは目をつぶってしゃがみ込む。何者にも、火球を止めることはできない。
「さらばだ、ラグアス。」王は懐から小さな鈴を取り出した。リン、と音が鳴り、やがてゴオーと燃え上がる炎の音の中に消えた。
「お父さん!どうして!?」
燃え上がったのはプーポッパン王のほうだった。
「お前だけは、死なせな・・・」王の言葉も、メラメラという炎の音に消された。
「引き寄せの鈴とは、なんとこしゃくな!メラゾーマの軌道を変えるとは。なんと腹立たしい親子よ!」イッドは憎々しげに言い「しかし、どちらにせよ殺すつもりでいたこと。順番が変わっただけのことだ!お前の父親は、その残り火で燃え尽きるのだ!」と吐き捨てた。
「ヒャド。」という声が響いた。
すると、薄皮のような氷の半球が残り火の上にかぶさるように落下する。薄氷は炎で溶け、溶け落ちた水に包まれて炎が消えた。
「なんだと!?誰だ!?」
飛び込んで来たのはアディールだった。
「キサラギ、王様を頼む!」
キサラギが素早く王に駆け寄り、ザーンバルフとパルポスとドドルがアディールの後ろに立つ。
「代わる代わる憎々しい奴らよ。ヒャドをそのように使うとはな。」
「呪文の強さはイメージの強さ。」アディールが指を立てると、鋭い氷の針が音速で魔軍師の触角を貫いた。
「ぎょえ!」
「呪文の形はイメージの形。」アディールが掌を広げ、親指と中指で何かを握るようなしぐさをすると、イッドの周りに発生した氷の輪がイッドを絞めつけた。
「ぎゃえ!」
「お前は許さない、イッド!」アディールが睨む。
「おまえたちも諦めの悪い旅人だ。もはやプクランドは助からぬ。」氷に縛られたままイッドは言った。
「王子は無事だ。まだノートがある。」
「いいだろう。そんなに死にたいのなら、ここで生贄となれ。光の波動っ!」
イッドを縛っていた氷の輪が崩れ去り、パラパラと氷塵となった。アディールとイッドは再び睨み合う形となった。
そこに進み出たのはパルポス。
「相手は魔法使いのようです。ワタクシには魔結界があります。ここはお任せください。」そう言って、イッドの前に立ちはだかる。
「相手は魔法使いのようです。ワタクシには魔結界があります。ここはお任せください。」そう言って、イッドの前に立ちはだかる。
「ひとりで来ようとは。バカなプクリポよ。」
「試してみなければわかりませんよ?それ、メラミですよっ!」パルポスの杖から炎が飛び出す。
「それで我を倒せるとでも思ったか!メラゾーマ!」
イッドの杖からは、メラミの5倍とも10倍とも思える火球が飛び出した。イッドの火球はメラミを飲み込み、そのままパルポスに直撃した。
アディールのヒャドで消火されたものの、パルポスの衣類からはぶすぶすと煙が漂っている。
アディールのヒャドで消火されたものの、パルポスの衣類からはぶすぶすと煙が漂っている。
「いやいや、これは恐ろしい魔力ですねぇ。魔結界がなかったら、ワタクシ死んでいたでしょうねぇ。でも、まだ終わっていませんよ!」
パルポスはそう言って、今度はイッドの懐まで飛び入った。
「これはどうですか?イオラ!」
パルポスの体から発せられた光の衝撃が同心円状に広がる。
「お前ごときの呪文で我が魔力に対抗できるなどと思っているのか?愚かな。」イッドは杖をドンと床に叩きつけた。「イオナズン!」
イッドの杖から光の爆風が巻き起こった。その爆風はイオラごとパルポスを弾き飛ばし、パルポスはアディールの足元まで転がってきた。
「すいません。ワタクシ、もう戦えそうにありません・・・」
「いや、もう大丈夫だ。ありがとう、パルポス。」アディールがパルポスを抱え起こした。
「よくやったぜ。あとは休んでいてくれ。」ザーンバルフもパルポスを労った。
そして、アディールとザーンバルフが、魔軍師に向けて跳躍した。「イッド!」「お前はもう終わりだぜ。」
「まだわからぬか?万にひとつも勝ち目がないことが。」イッドはアディールに向けてメラゾーマを放った。
迫り来る大火球をアディールは盾で弾いた。火球の軌道が変わり、炎は空へと消えた。
「なんだと!?ならば!」今度はザーンバルフに燃え盛る杖を向けた。
しかし、ザーンバルフの前にアディールが割り込み、その火球も盾で弾き飛ばした。
「小癪!これならばどうだ!イオナズン!」
その詠唱よりも速くドドルのピオリムがかかり、それと同時にアディールとザーンバルフが素早く後退する。イオナズンの爆風は、アディールたちまで届かなかった。
「なんだ!なぜだ!なぜ当たらないのだ!?」
驚愕するイッドに、アディールが答えた。
「パルポスが身をもって教えてくれたのさ、メラゾーマの軌道を。イオナズンの爆風の範囲を。おまえの呪文は、もう見切った。」
「なんだと!?くっ、そうか、無謀とも思えるあの行動は計算の上だったのか。ふっふっふ、我としたことが、そのような策に気付かぬとは・・・。しかし、だとするならば、やはり愚かであるとしか言いようがない。」イッドは倒れている王と、それに寄り添う王子に向けて歩き出した。「あやつらが爆風の範囲の中にいるとすればどうかな?お前たちだけが逃げたところで、王子もノートも助からんぞ?」
やがてイッドが王子を射程圏に捕えるほどの距離に迫ったときに、ドドルが口を開いた。
「あ、そこはさっきおいらがクモノを仕掛けたところだぞ。」
イッドの動きが止まった。
「なんだ、これは!体が、動かない。見えない糸が絡み付くようだ!」
それからイッドの断末魔が響くまでに、さほどの時間はかからなかった。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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