小説ドラクエ10-16章(9) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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「ここにあったか、我の体。我の美しい体。」
 緑色の巨体が両翼をはばたかせながらトサカを震わせている。
「満悦のようだな、天魔よ。」
 天魔の後ろから、黒ローブの男が声をかけた。
「いたのか、ベルンハルト。」3つの目がぎょろりと振り返る。
「まずはおめでとうと言おう。」ベルンハルトが手を叩いて言った。
「よく我の体の在り処を突き止められたな。感謝するぞ。」
「なに。カルサドラ火山から離れたところに封印しようとしたことを考えれば、探すのもそれほど難しいことではない。ドルワームもそう広いものではないからな。」
「では、よくカルサドラ火山に我の魂が眠ることに気付いた、と言うべきか?」
「それは確かに。しかし私は別にお前を探していたわけではない。ただ魔瘴が強い場所を探していただけだ。私の目的は魔瘴なのだからな。無論、魔瘴の強いところにお前がいたのは、半ば必然とも言えるがな。」
「ほほう。しかし魔瘴石を太陽の石へと変換できるなどと、なかなかおもしろいことを考えたものだ。我の囁きに、あのドゥラという小僧はまんまと騙されたのだからな。」
「それも嘘ではない。邪のチカラと聖なるチカラが転換できるのは本当のことだ。ドゥラという者の魔力がもっと強大であったならば、今頃お前も太陽の石と化していたことだろう。騙したのは私ではない。お前だ。」
「おまえは真実をのみを語っていたというのか。なるほど、道理で学者小僧が信じ込んだわけだ。」
「あのような鼻っ柱の強い者は、他人の言葉を受け入れない。ならば、自分で気付いたと思うように仕向ければよい。あやつは自分の閃きだと信じて疑わなかったはずだ。自らの力の限界を知らず、不相応に大きな魔瘴石さえも変換できると溺れたゆえのことだ。ドワーフの性。誰もそれからは逃れられん。」
「ふははは。なんと狡猾な男だ。」
「私はただお前に、あのドゥラという者のことを教えただけだ。それと、いくつかの真実を話した、ただそれだけだ。」
「そのような回りくどいことをせずとも、おまえが我の封印を解けば済んだ話ではあるがな。」
「確かに。だが、お前はそれを望んでいたのか?」
「もちろん望んでなどいなかった。おかげで、小僧たちの絶望した顔が見れたのだ。なによりの糧よ。」
「絶望が糧か。魔族というのも業深き者よ。そして、それにチカラを貸す私もまた罪深きものなのだろう。別に償おうとも思ってはいないがな。」







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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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