小説ドラクエ10-14章(1) | カインの冒険日記

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14章  娯楽の島



 アディールとザーンバルフはオルフェアで再会を果たし、キサラギ、ドドル、パルポスを含める5人が一堂に会した。

「じゃあ、乾杯。」

 アディールが言うと「再会に。」とザーンバルフがマグカップをカチャリと合わせ、それに続くようにパルポス、キサラギ、ドドルもカップを合わせる。アディールはカップの中のグレンビールをぐびりと一気に飲み干した。プクリポ用のマグカップでは、とてもアディールの喉を潤すには及ばない。それはザーンバルフも同じようで、すぐに2杯目のグレンビールを注文した。同じ量でも、パルポスにはちょうどよい。ケーキならば大食いであるパルポスも、酒となると、それほどの量を飲み干すことはできないらしく、ちびりちびりと、カップの中のグレンビールはゆっくりと小刻みに減っていく。キサラギのカップには、奇妙な色のカクテルが注がれている。プクランド産のレッドベリー酒に花の蜜で甘みをつけ、その上からエルトナで採れたスイセンを絞ったものだという。キサラギはサラサラと飲んでいるが、アディールにはとても美味しいとは思えない飲み物だった。未成年のドドルは、プクランサフランとドワチャッカ産のサンドフルーツのミックスジュース。砂漠の果物は保水力が高くてみずみずしいのだとは聞くが、ドドルのマグカップの中身も、やはり美味しそうには見えない。もともとはみんなレンダーシア生まれのはずなのに、キサラギもドドルも、生き返しの後の出身地志向である節がある。グレンビールは確かにうまいが、しかしアディールはウェディだからといって、ヤシの実ジュースをウェナールシェルに注いで飲もうとは思わない。アズランやガタラでは、そのような上品とも奇抜ともとれる飲み物を見ながらの食事だったこともあり、オルフェアでザーンバルフと再会して、アディールは久しぶりにうまい酒を楽しんだ。

 自己紹介やここまでの経緯を交えながら談笑し、やがて、今後の進路について話しが及んだ。

「ぼくわね~、ふぉすとーれのみっつのノートがきになるのわ~。」アディールの前には、空のマグカップが22個並んでいる。うまい酒を飲みすぎたようで、シアンブルーの肌は赤みがかかり、舌が回らず言葉が出てきていない。

「おいおい、アディール。酔いすぎだぞ。」と、ザーンバルフが拳で軽く肩をつつくと、アディールが椅子からドシンと床に転げ落ちた。「ダメだな、こりゃ。」ザーンバルフは、アディールを椅子の上に寝かせてから、アディールに替わって話しを繋げた。

「俺もフォステイルと3つの願いが叶うノートのことが気になるが、メギストリスのラグアス王子にも会ってみたい。団長の妹のアルフェ王妃の子供だ。いや、特にこれという深い理由はないんだが。」

「ワタクシもそう思っておりました。異存はありませんよ。」パルポスが同意すると「おいらもそれでいいぞ。」とダダルが言い「私はレンダーシアもうひとつの島、ラッカランにも興味があるのだけれど、娯楽の島みたいだからそう重要じゃなさそうですわね。後回しで構いませんわ。メギストリスに行きましょう。」とキサラギも頷いた。

 じゃあまた明日、と言ってザーンバルフがアディールを抱えて宿の部屋に入るのを見て、ドドルがぼそりとつぶやく。「ザーンバルフが酔ったら、おいらたち、どうしたらいいんだ?」

「わ、ワタクシには無理ですよ!」

「そうですわね。」

 顔を見合わせて苦笑いをしながら、3人はそれぞれの部屋へと戻った。

 翌朝、アディールが申し訳なさそうな顔で部屋から出てきた。

「いや、みんな、昨日は、その、ごめんね。」

 頭の後ろをかきながら言うアディールをしょうがないな、とザーンバルフが拳でつつく。

「頼むぜ、リーダー。」

「アディールさん、お任せしますわ。」「ついていきますよ。」「おいらも!」と3人が続いた。

アディールは、水をぐびぐびと飲んで、背ビレにもパッパッと水を振った。

「もう大丈夫。みんな行こう!」




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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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