小説ドラクエ10-22章(11) | カインの冒険日記

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 4人の人間と、ひとりのオーガ。
 オーガのザーンバルフは「利き腕が動かなくなってから、左手で剣を振るう訓練をしたんだ。少しは役に立てるかもな、ってな。だがしばらくすると利き腕にも力が戻った。おかげで今では」2本の剣を同時に振ってみせた。「二刀流ってわけだ。」
「ここまでどうやって来たんですの!?」キサラギが当然の疑問を投げかけた。
「ああ。ペガサスの背中に乗せてもらってな。」
「では、ずっと上のほうから戦いを見ていたのですねぇ。」「じゃあもう少し早く出てきてくれればよかったのに。」パルポスもアディールも、そうは言うものの嬉しそうな表情。
「そう言うなよ。俺なりに機をうかがってたのさ。どちらか片腕を斬り飛ばすチャンスをな。最初に出て行っても、俺の剣撃はどうせ左手に抑え込まれていただろうよ。」
「ありがとう、ザーンバルフ。」
「どうした、アディール?あらたまって。」
「これは僕たち、村を滅ぼされた者と冥王との戦いなんだ。人間としての僕たち4人の使命なんだ。」
「フッ。何を今更。」とザーンバルフは笑って見せた。「確かに俺は冥王に因縁なんてない。だが、仲間を助けるのは俺の使命だぜ?」
 5人は目を見合わせて、こくんと強く、そして深く頷いた。

「いま右手を斬り飛ばしたが、それは不意打ちみたいなもんで、俺の剣が通じるわけじゃない。まだ左手は残っているんだ。」
 そう。その存在を知られた以上、ザーンバルフの剣撃が通用することはない。残る左手は、すべての打撃攻撃を無効化するのだ。それならば・・・
「ワタクシの出番ですねぇ。」アディールが言うよりも早く、パルポスが進み出た。「ザーンバルフさんのおかげで、出口が見えてきました。右手を失った今、ワタクシの呪文にお任せください。」
 片腕を失った冥獣王の動きは鈍っていた。パルポスのメラミやヒャダルコを防ぐ手立ては、冥獣王にはもうない。しかし、片腕であるとはいえ、その渾身の一撃を受けてアディールたちが無事にいられるというわけではない。

 やっと呪文が通じるになったとはいえ、パルポスの攻撃以外にはこれという手立てもなく、戦いは長期戦へともつれ込んだ。アディールたちは冥獣王の拳を避け続け、パルポスは呪文を唱え続ける。しかし、単純とも思えるその戦いは、やがて大きな転機を迎えることになった。
「わ・・・ワタクシ・・・もう魔法力が・・・」
 パルポスの魔力が切れたのだ。ずっとひとりだけで戦っていたようなもの。パルポスひとりの呪文のチカラが永久に続くわけではない。
 パルポスだけではない。連戦を強いられてきたアディールたちも、しばらく戦線から離れていたザーンバルフも似たような状態だった。一撃たりとも受けることが許されない拳を避け続けることに神経をすり減らし続けている。極度の緊張感の中での戦いが続き、蓄積した疲労が一気に噴き出した。徐々に足の動きが鈍ってくる。
「ぐははは!小うるさく蠢動するエテーネの残党どもめ!お前たちの動きもそこまでのようだな!!唯一の攻撃手段を失い、もはや我が拳に押しつぶされるだけよ!」
 足を止められたアディールたちは、冥獣王の左手を避けきれなくなり、ザーンバルフが、キサラギが、ドドルが、パルポスが、次々となぎ倒されていく。直撃こそ逃れてはいたものの、それでも、もう立ち上がれないほどの猛烈な打撃だった。




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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】




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