ドルワームは、今なお古代の文明技術によって栄える王国。そして王国の中枢であり、技術の結晶とも言えるのがドルワーム城下町の中央にそびえる水晶宮。国王の権力の象徴でもあるその水晶宮は、ウルベアの地下遺跡を彷彿とさせる造りをしていた。
ベルンハルトがここにいるとすれば、メギストリスのときと同じように、やはり王宮を狙うだろう。アディールたちは、そびえ立つきらびやかな水晶の城へと足を向けた。
「アディール、これが神カラクリだよ!2階と1階を行ったり来たりできるんだ!」
物珍しそうにするアディールに、ドドルが自分もはじめてのように嬉しそうに説明する。
古代文明のひとつ、神カラクリ。滅びの文明時代に作られたその機械は、今ではもう作ることはできないという。この国は、いくつもの古代技術に支えられて繁栄する、文明王国である。
古代文明のひとつ、神カラクリ。滅びの文明時代に作られたその機械は、今ではもう作ることはできないという。この国は、いくつもの古代技術に支えられて繁栄する、文明王国である。
古代人の最大の遺産であり、今のこの国の生活を支えているのが、古代エネルギー体、太陽の石である。しかし、その古代の秘石は、数十年前には掘り尽くされてしまっていて、それ以来ひとつも発見されておらず、現存する太陽の石は、王宮に残るひとつのみとなっていた。そして、今やそのたったひとつの太陽の石がドルワームのすべてのエネルギーを賄っている。最後の太陽の石が輝きを失えば、もはやドルワーム王国は砂の下に沈んでしまうだろうと研究者たちは言う。現代の栄華を誇るこの王国はいま、いつ訪れるともわからない滅びの未来に脅えながら、日々新しいエネルギー開発に取り組んでいた。
アディールたちが訪れたここ水晶宮はドルワーム国王ウラードの寝居であり、最後の秘石の保管庫でもある。アディールとドドルは王宮の神カラクリを使って、最上階の国王の部屋へと謁見に入った。
「私はこの国の王ウラードだ。旅の者よ、ゆるりとこの国を楽しんでくれるとよい。」
渋みのある低い声で王は言った。
「ありがとうございます、王様。」アディールは頭を下げ「ですが、僕たちは観光で来たわけではないんです。」と続けた。
「ふむ。では私になにか用があるということだな?名前はなんと申す?」
「アディールです。こっちはドドル。」アディールが示すと、ドドルがぺこりと頭を下げた。
「それで、どのような用かな?」
アディールはひとつ頷いてから、黒ローブの破聖師の名を出した。
「ベルンハルトという名前に聞き覚えはありませんか?」
「ベルンハルト?はて。そのような名前には覚えがないが?」
「では、この国で魔瘴に悩む事情はありませんか?」
「魔瘴か。確かに魔瘴の被害はいくつか出ておるが、国としての情勢に影響するほどのことはない。なぜそのようなことを聞くのだ?」
「僕たちは、ある理由から魔瘴を封じる旅をしています。その旅の途中で、魔瘴を発生させようとするベルンハルトという人間と対峙し、奴はドルワームへと去って行きました。奴はこの国で魔瘴を引き出そうと画策しているはずです。もしそうだとしたら、王様の耳にも入っているかもしれない。そう思ったんです。」王をたぶらかそうとしているかもしれない、とまでは言わなかった。
「そうであったか。しかし、私のところにはまだそのような報告は来ておらん。とはいえ、かような情報をもらったことには感謝する。警戒しておくことにしよう。」
「はい。僕は僕でベルンハルトの行方を探します。それでは。」
アディールが頭を下げて王の前から下がろうとすると、国王ウラードが「待たれよ。」と声をかけた。
「今から、ドルワーム研究院の院長がここで重大発表をすることになっている。せっかく来たのだ、見ていってはどうか?」
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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