小説ドラクエ10-22章(8) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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 アディールとドドルは、立ち上がるキサラギからサッと離れ、またはじめのように対角線を位置取った。そしてアディールがまたガラトアたちの頭上を通してドドルにバイシオンを飛ばした。
「グフフ?同じ作戦が二度も通用すると思ったか?」
「いや、同じではありません!さっきまでとは位置が逆です!」ガラトアはむしろ慌てていた。「何か意味が!?」
 アディールとドドルが踏み込み、両側から同時にガラトアに迫る。
「今度はどっちだ!?」
「慌てるな参謀よ。どちらでもよいことだ。」ベリアルはそう言って、背中側のドドルを太い尻尾で叩き落とした。そして、正面から突っ込んで来たアディールに三つ又の槍を突き出そうと足を踏み出した。
「いかん!!ベリアル殿!!」
 ガラトアが叫んだときには、時すでに遅く、踏み出したベリアルのその足は、ドドルが描いたクモノの陣を踏んでいた。
「なんだと・・・!?いつの間に・・・。体が縛られて動かん・・・」蜘蛛の糸に絡みつかれたようにベリアルの巨体から自由が奪われ、三つ又の槍がその手から転げ落ちた。
「これだったのか!!策が上手くいきすぎて、勝利を目前だと目が曇っておった!!」白い仮面の下のガラトアの顔色は蒼白になっていたのかもしれない。
「そう!ドドルに言われるまで僕も気付かなかった。お前たちが策を練る間、睨み合う最中、ドドルはクモノの陣を張っていたんだ。油断したな、ガラトア!」アディールの短剣は、ガラトアの眼前まで迫っている。「これが唯一のチャンスだ!」と、アディールが王家のナイフを突き付ける。
ガラトアも、それだけはならぬとベリアルの巨体を回転するように利用してアディールの短剣から逃れようとする。
「しかし」しかしクモノから回復する方法はない。ただ、ベリアルが自力でもがいて蜘蛛の糸から脱出するしか。「ベリアル殿が抜け出せるまで、あの短剣から逃げ切れるものか!?」
 ベリアルの背後に隠れながらその周りを回り続けて、アディールの攻撃を避けようとしていたガラトアだったが、もう1周するまでもなかった。
「短剣から逃げる心配をする必要はないですわよ?」ベリアルの落とした三つ又の槍を握ったキサラギが立ちはだかっていたのだ。「一閃突き!!」キサラギの突き出した三つ又の槍がガラトアの体を貫通した。
 ばったりと倒れたガラトアからは血だまりが広がり、そして、ほどなく蜘蛛の糸に絡まれたままメラミに炎上したベリアルも斃れた。
「む、無念・・・。かくなる上は、このガラトアの魂だけでもお受け取りください・・・」
「我が王・・・4つの魂を献上するはずが・・・私の・・・このベリアルの魂ひとつしか・・・」

 ガラトアとベリアルは、やがて体を失い、魂の姿となって冥王ネルゲルのもとへと飛んでゆく。感慨深そうに、それを見ていた冥王は、頬杖を解いて、ふたつの魂を握り込んだ。
「見事だ。」冥王の銀色の目が冷徹に光る。「今の今まで勝利を確信していたが、まさかそれを覆そうとはな。」
 劣勢からの逆転劇だからこそ、冥王が参戦する機会を与えなかったとも言える。勝利すると思っていたからこその油断を突くことができたとも言える。しかし、それもまた、冥王を倒してのことだ。ナイフの柄を握るアディールの手に力が入る。
「冥王とはあまねく死を統べる者。」冷たい視線を浴びせながら冥王が言った。「そして、生きとし生ける者はすべからく死からは逃れられぬ。」組んでいた足を解き、冥王はふわりと浮かぶ。「ガラトアやベリアルも生ける者。死から逃れることなどできぬ。」冥王の表情にはもはや冷笑は見えない。「しかし、この冥王の目の前で部下を死に追いやった貴様たちを許すことはできぬ。」ギラリと目を見開く冥王は、再び鎌を手に取り、アディールに向けて突き出した。「いいだろう!この冥王が貴様らを冥府へと送ってやろう!このレイダメテスの、そして我の糧となるがよい!」
 アディールたちと冥王との第二戦が始まった。



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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】




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