小説ドラクエ10-21章(12) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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「アディールか!?やったのか!?やったんじゃな!?」
 現代へと戻ると、ホーローが珍しく慌てる姿で迎えてくれた。
「いや、わしとしたことが取り乱したわ。しかし、おぬしたちの働きで歴史は変わったぞ!運命は変わったのじゃ!」
 老賢者が飛び跳ねて喜ぶ姿は、見ていて不思議なものだったが、ホーローの喜びを見ると、新しい運命へと塗り替えられてよかったのだと思えるようになった。
「でも、ホーロー。歴史が変わったことをみんなは知っているのかい?」と、アディールが問う。
「ふむ。過去を変えた者にとっての当然の疑問じゃの。おそらく、おぬしたちの関わった者たちだけが、運命の変化に気付くことができるじゃろう。ほとんどの者は、過去が変わったなどということには気付いておらん。いや、この新しい歴史だけが唯一無二の歴史だと信じて疑わんことじゃろう。」
「それで・・・この新しい現代での冥王は・・・?」
「ふむ。冥王は今でも同じように存在しておる。」
 ラズバーンによって冥王のタマゴは守られてしまったのだ。新しい歴史でも冥王が存在しているのは至極当然とも思える。
「しかし、破邪舟の術が現代まで受け継がれているのじゃとすれば。」
「冥王の心臓に乗り込むことができる!!」
「左様。さあ、運命が変えられることを確かめたアディールよ。今度は、変えられた運命によって術が継承されたのかどうか、確かめて来い!ベルンハルトとエルジュの子孫は、そこの路地裏の家に住んでおる!」


「ごめんください。」
 と、アディールが路地裏の家を訪ねると、ひとりの女性が顔を出した。ぽっちゃりと丸い年齢不詳の人間の女性。
「はい?」とはじめ首をかしげた女性は、しかし、すぐに「あなたはアディールさんとおっしゃるのでは?」と問いかけてきた。
「え?なぜそれを?」と驚くアディールに、女性は「そう伝わっているんですよ。」と答えた。
「私はフルッカ。破邪舟師エルジュの末裔です。エルジュが破邪舟を引き継いでから500年。いずれここを訪ねて来るであろうアディールさんのことは聞き及んでおります。エルジュより500年後の災厄。ランドン山脈の上に渦巻く魔瘴の塊をはじめて見たときからこの日が来ることがわかっておりました。それこそが500年目の災厄であると、私は直感しておりました。」
 そう言ってフルッカは旅支度を始めた。
「さあ、あなたがたを冥王の心臓へとお連れいたします。」



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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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