リリーネたちはポルネア山に登り、白の祠の鍵を開けた。
今度の祠は、洞窟ではなかった。その代わり、大広間の中央には、青いたてがみの8本足の獅子がいた。
今度の祠は、洞窟ではなかった。その代わり、大広間の中央には、青いたてがみの8本足の獅子がいた。
「アームライオンか。気をつけろ。」ジャネットが短く言う。
「やっぱり敵・・・だよねぇ。」と、リリーネ。
いきなり襲い掛かってくるかと思っていたが、アームライオンはまずはこう問いかけた。「ここに来たということは、お前は錬金術師か?」
「え?う、うん。」拍子抜けしたようなリリーネ。戦う気がない、と、はじめは感じた。
「そうか。錬金術師か。」獅子は静かにそう言ったかと思うと、突然がばっと立ち上がって咆哮した。「俺をここに閉じ込めた憎い錬金術師!」8本の足だと思っていたが、うち4本は手であるようだった。4本の足で立ち、4本の腕を振り上げて「喰い殺してやる!」と、リリーネたちに向かってきた。
「さっそく切れ味を確かめることができる。」ジャネットは、この戦いを喜んでいるようにも見える。「後ろに下がっていろ!」そう言って、4本足4本腕の獅子に真っ向から突進した。
ひと太刀。それで獅子の腕の1本が飛んだ。
ガオウ!という叫びとも咆哮とも取れない声を上げて、アームライオンは2本目の腕をジャネットに振り下ろす。その腕をジャネットは剣で軽くいなした。3本目の手の鋭い爪が、ほぼ同時にジャネットを引き裂こうとして襲い掛かる。これもジャネットは剣で受け止める。が、今度は受け流すことができず、衝撃が素早い身のこなしを一瞬鈍らせる。
ガオウ!という叫びとも咆哮とも取れない声を上げて、アームライオンは2本目の腕をジャネットに振り下ろす。その腕をジャネットは剣で軽くいなした。3本目の手の鋭い爪が、ほぼ同時にジャネットを引き裂こうとして襲い掛かる。これもジャネットは剣で受け止める。が、今度は受け流すことができず、衝撃が素早い身のこなしを一瞬鈍らせる。
「ふはは!1本の剣で何ができる!!」
その機を逃さず、とアームライオンの4本目の腕がジャネットに降りかかる。より前に、リリーネのヒャドがその獅子の腕を捕えていた。凍らされた腕は振り下ろされることなく、ジャネットの2撃目に胴を裂かれて、獅子はどしんと倒れた。
「すまんな。私ひとりで倒したいところだったが。」ジャネットは、剣についた血をブンと払って鞘に納める。
「ううん。ジャネットさんって強いんだね!」
無邪気にそう言うリリーネに、ぷいと背を向けて「まだまだ修行中だ。」と照れ隠しのようにジャネットは言った。「それより」
「なに、ジャネットさん?」
「ここに宝箱がある。」
「ホントだ。なんだろ・・・あ!宝石?」リリーネの手に握られているのはアームライオンと同じ色の石。「わからないけど、帰ってイッショウさんに聞いてみようっと。」
「おい!これはライオンジュエルじゃねぇか!」
ナルビアに戻ったリリーネ達を迎えたのはイッショウのその驚きの言葉。
「錬金術師の憧れの素材だ。とは言っても、肝心のレシピを俺は見たことがねぇ。憧れの素材だが、何に使っていいかわからねぇってことだな。」イッショウはそう言ってわっはっはと笑った。笑う場面でもなかろうに。
「次の祠の鍵の錬金に使う、わけじゃないのかなぁ。」とリリーネ。
「そうかもしれんが、しかしそれだとしてもレシピがないことにゃあ作れん。」さっきは笑っていたイッショウも、今度は難しそうな顔で手を組む。
「あの・・・」さっきからうつむいていたリリオルが、その話に割って入る。「言いそびれていたんだけど。」と申し訳なさそうな顔。「危険だから、と思って黙ってたの。」うつむいていたのは、言うべきかどうか迷っていた、ということだろうか。「でも、今なら・・・今のリリーネにならお願いできる。」と、机の引き出しから、緑色の鍵を取り出した。
「そ、それは!?お前、そんなものを!?」イッショウも知らないことのようだった。
「緑の祠の鍵。祠の奥は洞窟になっていて、灰の祠の鍵の材料があるって聞いたの。私・・・灰の祠のそばで呪いの霧を浴びてメラゾ熱にかかっちゃったんだ。きっとその祠の中に、その原因があると思うの。」
リリオルはそっと緑色の鍵を差し出し、それを受け取るリリーネに「ごめんね、こんなことをお願いしちゃって。」と申し訳なさそうに言った。
リリオルはそっと緑色の鍵を差し出し、それを受け取るリリーネに「ごめんね、こんなことをお願いしちゃって。」と申し訳なさそうに言った。
「ううん。」リリーネは首を横に振る。「これは私の冒険でもあるの。私の、錬金術師としての修行。私が、エテーネを見つけるための旅。だから・・・ありがとう。私を信用してくれて・・・鍵をくれて・・・」
次に出た「ありがとう。」という言葉は、リリーネとリリオルが同時に発したものだった。
【続きを読む】
【前に戻る】
【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
ドラクエブログランキング

