小説ドラクエ10-17章(3) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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「まぁ、オレに任せておけば大丈夫だ。」
 カミハルムイから北。キュウスケを先頭に、ザーンバルフとキサラギとパルポスが続く。その堂々としたキュウスケの立ち振る舞いに「キュウスケさんがいると心強いですねぇ。」とパルポスが言う。
 すると、そのパスポスに「騙されてはいけませんわ。彼はすごく調子がいい性格ですの。」とキサラギが耳打ちする。
「そうなのですか?」とパルポスが言った途端に、早速魔物が現れた。
 ピンクモーモンと灯ろう兵。
 先頭で魔物と遭遇したはずのキュウスケは、いつの間にか最後尾のパルポスよりも後ろに下がっていた。
「ほらね?」と言わんばかりのキサラギの目配せに苦笑いしながら、パルポスは魔物たちに杖を向けた。
 ザーンバルフが棍を振って魔物たちを蹴散らすと、パルポスの後ろにいたはずのキュウスケはまた先頭に戻って歩き始めた。
「なかなかやるじゃないか?オレが戦うまでもないからな。」と言うキュウスケに、今度はザーンバルフが苦笑いした。
「そう言えば、前にもこういう言葉を聞いたことがあるな。誰だったか・・・」と腕組みをして、しばらく考えて閃いたように腕組みを解いた。「そうだ!ガートラントのスピンドル兵士長!」そうだったそうだった胸のつっかえが取れた、とザーンバルフはひとりで満足そうに頷いていた。
 そうしているうちに、キュウスケ率いるザーンバルフたちは、霧が深い夢幻の森の奥、捨てられた廃墟の城へと辿り着いた。


 深い霧の中の御殿に、長刀を携えた初老のエルフの姿があった。貫禄のある面構えに立派な白ひげを蓄え、白い短髪の上にはカミハルムイ式の冠をかぶっている。
「む。これは?」長刀のエルフが貫録のある声でつぶやく。
 その視線の先には、子供のエルフの姿がある。「あはは。アグシュナ王妃さまが帰って来るよ。病気治ったんだね!」と子供のエルフは森の奥へと走っていった。
「また亡霊か。」初老のエルフはそう言い「アグシュナ王妃。・・・母上様。」とぼそりと続けた。「あれは?」と、また目を向けては「この亡霊たちは、この城の過去なのか・・・?わしの過去なのか・・・?」と自問するようにつぶやいた。

 そこにはふたりの少年がいた。
「おいしそうな山ブドウ!」とひとりが言った。「姉上は山ブドウが大好きだから、きっと喜んでくれる!」とも言った。
「そうですね、ニコロイ様。明日はナシュロイ王の誕生日。リタ姫にも元気になってもらって、一緒にお祝いしたいですね。」と、もうひとりの子供も言う。

「これは、・・・わしだ。幼い頃のわしだ。姉上、リタ姫は山ブドウが好物だった。」
 長刀のエルフは、亡霊の姿をまじまじと見つめる。
「父上・・・ナシュロイ王の誕生日のことなど、わしは覚えていない・・・。もうひとりの子供は・・・カクか。カクなら今でもカミハルムイにいるはずだ。しかし、カクもまたわしに真実を語ってはくれんだろう。」

 ふたりの少年の姿が消え、今度は着物姿の女性が現れた。
「誰か!リタが乱心した!ああ、リタ!なぜ王を!・・・リタっ!!」
 そう叫ぶ着物のエルフの前に現れたのは、白い髪と白い肌を持つ少女。
 少女は着物姿のエルフに向けて掌を突き出している。その掌からは白い光が飛び出し、着物ごとエルフの体を貫いた。
 また少年が現れた。「姉上!リタ姉様!なぜですか!」
 叫ぶ少年を見た白肌の少女は、その場から走り去り、姿を消した。
 少年が着物姿のエルフに「母上!」と叫ぶと、母と呼ばれたエルフが「ニコロイ、よくお聞き。」と少年をぐっと掴んだ。「暗黒大樹の葉を・・・」そこまで言って、母親はがくりと崩れ落ちた。

「なんだ、今のは・・・?」長刀のエルフがまた自問する。
「姉上が、父と母を手にかけたというのか・・・。いや、しかし・・・思い出せない・・・うっ!」突然うずくまった。「頭が・・・頭が痛い・・・割れるようだ・・・」
「王!ご無事ですか、ニコロイ王!」そう叫んでキュウスケが現れる。それに続いてザーンバルフとキサラギとパルポス。
「う・・・うむ。キュウスケか。大丈夫・・・わしは大丈夫だ。」長刀のニコロイ王は、立ち上がってはみたものの、ふらふらと足元が定まらない。
「王様!城に戻りましょう!」言うが早いかキュウスケは、懐からルーラストーンを取り出して、王を支えたまま空へと飛び立った。

「大丈夫でしょうかねぇ。」ニコロイ王とキュウスケが飛び立つのを見ながらパルポスが心配そうに言った。
「でも、魔物に襲われていなくてよかったですわね。王様がそんなことになれば、この国だって大変なことになりますでしょう。」
「ま、ひとまずはよかったと言うところだな。ところで、どうもまだこの王家の家族関係がわからないんだが。」と、ザーンバルフが渋い顔。
「確かに。少しややこしいですねぇ。」
「整理してみましょう。まず、50年前に亡くなったのがナシュロイ王とアグシュナ王妃。そして、その娘のリタ姫、ですわね。」
「今のニコロイ王は、リタ姫の弟なんだよな。50年前の事件は、幼いニコロイ王だけが生き残ったわけだな?」
「50年の月日のうちにニコロイ王は結婚されて王妃との間にリン姫を授かったわけですねぇ。でも、王妃は、病に侵されて、5年前にすでに帰らぬ人となっている。というところですかねぇ。」
「ナシュロイ王とアグシュナ王妃の子供がニコロイ王とリタ姫。そしてニコロイ王の子供がリン姫。なるほど。わかった気がするぜ。」納得したザーンバルフは、道具袋から出したルーラストーンを高く掲げた。「俺たちも戻ろう。カミハルムイへ。」






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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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