小説ドラクエ10-22章(13) | カインの冒険日記

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 チカラを失ったネルゲルは、巨大な大猿の姿からもとの魔族の体へと戻り、バタリと倒れた。地に伏したまま「ククク」と笑っている。「我を倒せて・・・カタキを討てて満足か?・・・エテーネの民アディールよ?」笑ってはいるが、もはやその声はところどころ途切れ途切れ。ネルゲルの手足は砂とも灰とも魔瘴ともつかない無形のものとして消え去ってゆく。「だが・・・我が倒れても、闇の根源が絶たれたわけではない・・・いずれ深い闇の根源により・・・さらなる災厄に襲われるだろう・・・」ネルゲルは、すでに頭部を除いて、すべて灰と化していた。それでも「ククク」と笑い「フハーッハッハ!」と高らかに声を上げながら、そして、その頭まですべて灰になって散った。
 冥府の王、銀色の目をした銀髪のネルゲルの最期だった。

「あ、アディール・・・やったのか・・・?おいらたち、冥王を倒したのか?」ドドルがドワーフのときと同じようにトコトコとアディールに走り寄ってきた。
「いつの間に・・・いえ、いま使えるようになったのですね!バギクロスを!」パルポスも驚きながらスタスタとアディールのもとへ。ぴょこぴょこと走るプクリポのときからは想像もできなかったであろう動きで。
「私・・・もうどうすればよいのか、わからなくなっていましたの・・・」人間の姿でありながらエルフの英知をも併せ持つ、いつも理性的なキサラギもホッとして目に涙を浮かべていた。
「アディール、お前の勝ちだ。お前は宿敵の冥王を討ったんだ。」とザーンバルフが豪快に笑う。
 しかし、アディールは「違うよ。僕じゃない。」と首を横に振った。不思議そうな目をする仲間たちにアディールはこう言った。
「僕たち、だよ。」



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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】




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