小説ドラクエ10－17章(2)

　ザーンバルフたちは王の部屋を訪ねた。

「どちらかな？」と言うエルフの老人に「ご挨拶に伺いました、王様。」とキサラギが言い、3人は頭を下げた。

「いえ、私は王ではなく大臣です。ニコロイ王はいま外出中で。や、いや、ちょうどよかった。旅のかたたちよ。腕に自信はありますかな？」

「俺たちは魔瘴探しとキーエンブレム集めをしているんだ。多少は腕に覚えもある。」ザーンバルフは力こぶを作ってみせた。

「では、少々頼まれごとをしてはもらえませんかな？」
　大臣がそう言う矢先に、ひとりのエルフが廊下から滑り込んで来た。
「お待たせしました。この奇跡の秀才をお呼びですか？」青い髪に、口の周りには泥棒のような青い髭。エルフの中でも身長は低く、中年太りとも思える体型をしている。

「遅いぞキュウスケ。ニコロイ様が捨てられた城に行ってしまわれたのだ。ご無事であればよいのだが、あそこは非常に危険な場所。見てきてくれるな？」

「は！もちろんですコトル大臣！それで、この者たちは？・・・あ！」

　青髪のキュウスケは、目を向けるなり突然叫んだ。

「キサラギっ！キサラギじゃないか！」

　キサラギのほうも「キュウスケ。久しぶりですわね。」と言った。

「なんだ、知り合いだったのか？」と、コトル大臣。

「ツスクルの学び舎でともに学を積んだ仲間でございます。」とキュウスケは大臣に頭を下げた。

「なるほど、そうであったか。」と言って大臣はザーンバルフのほうを見た。「では旅のかた。キュウスケと一緒に行ってもらえないでしょうか。キュウスケひとりでは、少々難儀かもしれぬと思っておったのです。」

「ちょっと待ってくれ。」とザーンバルフが制するように手を上げた。「話がよく見えないんだ。もうちょっと説明してくれないか？」

「これは失礼しました。」と頭を下げて、大臣が話を続ける。「この国のニコロイ王は、50年前に家族を一度に亡くしてしまわれた。幼いニコロイ様を残して、王族たちが揃って不穏な死を遂げたのです。時を同じく城の聖地がチカラを失い、城は朽ち果てました。それを王家の呪いだとして、私たちはそれまでの城を捨てて、ここに都を移したのです。」

「それが捨てられた城ってわけか。」と、ザーンバルフが口を挟む。「それでニコロイ王はなぜその城に？」

「ニコロイ様も、そのときの当事者のひとりだったのですが、どうやら当時の記憶があまりないようなのです。よほどショックな出来事だったのでしょう。ニコロイ様は、成人してからはそのようなことを気にせずに、結婚してリン姫という子を儲け幸せに過ごしていたのですが、5年前に流行り病で王妃を亡くされて、それからまた捨てられた城の謎に強い関心を持つようになったのです。しかし、王も記憶が定かではなく、当時の経験者は口を閉ざしてなにも語ってはくれない。だから、王はご自身で現地へ赴き、謎を解こうとしているのです。」

「なるほど。話が見えてきたぜ。俺たちは王を護衛すればいいんだな？」

「左様です。この国のキーエンブレムはニコロイ様が持っておられます。勲章集めをしているのなら、悪い話ではないのではないでしょうか。」

カインの冒険日記

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小説ドラクエ10－17章(2)