ドルワームに戻ると、ウラード国王が「よくぞ帰った。」とアディールたちを迎えた。「ラミザ、ドゥラ。こうして戻って来たということは、クァバルナを倒して来たのだな?」
「いえ、国王。」と進み出たのはドゥラ院長。「倒したのはあの方たちです。」とアディールとドドルを示した。「私たちが到着したときには、すべてが終わっていました。」
「そうであったか。アディールよ、我が家臣の不始末で迷惑をかけた。そなたには礼をせねばならん。こちらへ参られよ。」
頭を下げてから、アディールが国王ウラードのほうに一歩踏み出したときだった。突然頭上の太陽の石が強く光った。
「なんだ!?なにが起こったのだ!?」そう言う国王に答えたのはチリ。「国王様。太陽の石になりきれなかった一部の魔瘴石が悪さをしているのだと思われます。」
頭上の秘石は、また強く光り、蓄積されたエネルギーが今にも暴発しそうなほどに膨れ上がっている。
「この暴走を止めなければ!」ドゥラ院長が両手を上げた。「太陽の石の力を制御できるのは王家の血を引く者のみ。私が止めてみせる。それがこの国の王子であるという何よりの証になる。」
しかし、国王の言葉は冷たいものだった。「無駄だ。お前は王家の者ではない。」目と口を固く閉じる国王の表情は、心苦しさを感じさせる。
「なぜです!?なぜ認めない!?」ドゥラの声は怒鳴り声になっていた。「国のために子を捨てたのでしょう!正しいことをしたと思っているのなら認められるはずです!だが、それでも子を捨てた罪は消えない!私の恨みも消えない!」ドゥラは両手から魔法陣を発生させ、太陽の石目掛けて突き出した。「見ろ!私が捨てられた王子だ!」
ところが、膨らむ秘石の暴走が止まる気配はない。「なぜだ!なぜ止まらない!?」と、ドゥラが叫ぶ。
「ドゥラよ。」国王が重い口を開いた。「私がかつて捨てた子は、女の子なのだよ。」目を閉じたまま首を振りながら言った。
「な!なんですって!?」
紐が切れた操り人形のように、ドゥラはがくんと膝をついた。
「そんな・・・そんな・・・。では私はいったい・・・?」絞り出すようにつぶやいている。魔法陣もシューンと消えてなくなった。
紐が切れた操り人形のように、ドゥラはがくんと膝をついた。
「そんな・・・そんな・・・。では私はいったい・・・?」絞り出すようにつぶやいている。魔法陣もシューンと消えてなくなった。
「国王様、チカラをお貸しください!このままではお城が吹き飛んでしまいます!」チリが叫ぶ。
「もちろんだ。私たちの城、国王たる私が守るのが当然のこと。」ウラード王は立ち上がって両手を突き出した。「石よ!暴発をやめよ!」
しかし、国王ウラードのチカラをもってしても、石の暴走は止まらない。
「ラミザ!手を貸せ!もうお前しかいないのだ!」
しかし、国王ウラードのチカラをもってしても、石の暴走は止まらない。
「ラミザ!手を貸せ!もうお前しかいないのだ!」
しかし王のその言葉にも、ラミザは二の足を踏んだ。「でも、ボクが失敗したら、お城が・・・ドルワームが・・・」
「そのようなことを言っているときではないだろう、ラミザ!ぐぬぬぬー!」ウラードのチカラは石の暴発に押され出している。
「でも・・・でも・・・」と、尻込みし続けるラミザの前に、チリが進み出て両手を開いて突き上げた。チリの掌からは3つのほくろが見えた。
「え・・・チリ?その手のほくろは・・・?・・・じゃあ捨てられたのはドゥラ君じゃなくてチリ?」狼狽しながらラミザが言う。
こくりとチリが頷いた。
「そう。私も王家の血を引く者。でも、私のチカラでもこれが限界。お願いします王子。あなたの力が必要なんです!」
「チリ・・・ボクは・・・ボクもやらなくちゃ・・・」ラミザは両手を突き出した。「うーうー!」ラミザは、まるで自分のものではないかのように両手に翻弄されている。
「王子!がんばって!」両手を上げたままチリは王子を励ます。
やがて「うわぁー!」という掛け声とも悲鳴ともつかないラミザの声によって石に変化が見られた。膨らみ続け、光を放射し続けていた秘石は、まるではじめからそんなことなどなかったかのように、キーンというもとの神秘的な音を響かせた。
「ラミザ王子!すごいです!やればできるじゃないですか!」と、チリが飛び上がってラミザに近寄ったが、ラミザは「うん・・・ありがとう。でも、それよりも・・・キミがボクの妹だったんだね。」と、戸惑っている。
「チリと言ったか。顔を見せてくれないか。」
ウラード王も、真剣な表情でチリを見つめた。チリがしっかりと王の目を見つめ返すと「そうか。おまえだったのか。」と言って、王は頭を下げた。
「すまなかった。私はおまえを手放す以外に国を守る方法はないと信じておった。だが結果的に多くの者を傷つけ、新たな悲劇を生んでしまった。私は間違っていた。」そして、もう一度チリに目を合わせる。「この王宮で一緒に暮さぬか?亡き王妃も、死の間際までずっとおまえのことを気に病んでおったのだ。」
ウラード王も、真剣な表情でチリを見つめた。チリがしっかりと王の目を見つめ返すと「そうか。おまえだったのか。」と言って、王は頭を下げた。
「すまなかった。私はおまえを手放す以外に国を守る方法はないと信じておった。だが結果的に多くの者を傷つけ、新たな悲劇を生んでしまった。私は間違っていた。」そして、もう一度チリに目を合わせる。「この王宮で一緒に暮さぬか?亡き王妃も、死の間際までずっとおまえのことを気に病んでおったのだ。」
「ありがとう国王様。でも」チリは軽く目で一礼してからサッと下がった。「でもきっと、王宮は私には合いません。それに私の父はガタラの養父だけ。父は変わり者だけど、愛情を込めて私を育ててくれました。私は彼のように自由に生きたいのです。」
「そうか。」ウラード王は口を閉じ、何度も頷いた。「わかった。よほどよい人物に育ててもらったようだ。」そう言ってまた頷いた。
「あれ、ドゥラ君、どこへ?」ラミザ王子の声。
アディールたちが振り向くと、部屋の出口近くまで下がったドゥラが王に向かって深々と頭を下げていた。
「ウラード王。数々の暴言をお許しください。私は二度とドルワームの土を踏みません。」そしてドゥラは部屋から足を出した。
「待ってください、院長!」チリが叫ぶ。「あなたような優れた研究者はいません!院長なら、こんなことがなくてもいつか太陽の石を作り出せたはずです!」
チリは振り返ってウラード王のほうに頭を下げた。
「国王様、お願いです!院長を見捨てないでください!お願いします!どうか!」チリは膝をついて頭を床につけていた。
チリは振り返ってウラード王のほうに頭を下げた。
「国王様、お願いです!院長を見捨てないでください!お願いします!どうか!」チリは膝をついて頭を床につけていた。
「院長。」ウラード王がドゥラを呼び止めた。「私はもとよりそなたを国から追い出すつもりはない。」
「しかし・・・」ドゥラが戸惑いの表情を見せる。
「自らを厳しく罰するのはそなたらしいが、女性にこのようなことをさせるものではないぞ。」ウラード王はチリのほうに目をやった。「そなたはドルワームに必要な研究者だ。これからもこの研究院の長であることを命ずる。」
「国王様!ありがとう国王様!」そう叫んだのはチリだった。
「ありがとうございます。」ドゥラは頭を下げた。「しかし私は王家の者ではありません。私が長であるのは・・・」
「ドゥラ院長。皆がそなたを評価するのは、王家の者だからではない。そなたが素晴らしい研究者であるからだ。王家の者でないからと言って、そなたの研究者としての資質が失われることはない。」
「私は・・・今まで自分が王家の者だと思って、それを証明しようとして必死だった。でも、それが違うと知ったとき、自分は何の役にも立たないのだと思ってしまった。・・・王様。私はこれからも、ドルワームの発展を目指して研究を続けます。」
「さてアディール。そなたたちには感謝してもしきれぬ。これはこの国のキーエンブレムだ。受け取ってくれ。それから、旅に必要なものがあれば、すべて揃えて行ってくれ。すべて王室が支払わせてもらう。」
アディールとドドルは、金色に光る勲章を持って、水晶宮を後にした。
「アディール。王様は、よほどいい人物に育ててもらったようだ、とかチリに言ってたぞ。チリを育てたのって・・・」
「ドドル。真実を明らかにしないほうがいいことだってあるんだよ。いいじゃないか、王様とチリがそれでよければ。」
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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