それが合図となったように、怪蟲アラグネがザーンバルフたちに突進してきた。
「みんな散れ!」
ザーンバルフが右に跳び、ニコロイが左に跳んだ。
「王様、まともに戦えると思っていいんだな?」と言うザーンバルフに「老いたとはいえ、刀術はなまってはおらぬ!」とニコロイは答えながら、着地と同時に切り返して巨蜘蛛の側面から薙ぎ払うように斬りつけた。怪蟲の脚の8本のうちの1本が飛び「ぎゃぁぁ!」とアラグネが声を上げた。
「みんな散れ!」
ザーンバルフが右に跳び、ニコロイが左に跳んだ。
「王様、まともに戦えると思っていいんだな?」と言うザーンバルフに「老いたとはいえ、刀術はなまってはおらぬ!」とニコロイは答えながら、着地と同時に切り返して巨蜘蛛の側面から薙ぎ払うように斬りつけた。怪蟲の脚の8本のうちの1本が飛び「ぎゃぁぁ!」とアラグネが声を上げた。
「この老いぼれめ。私の脚を・・・許さんぞ!」アラグネは怒りをあらわにし、ニコロイに向かって牙を向けた。
「おっと、そうはいかんぜ!」今度はザーンバルフが、後背から棍を叩きつけた。「ぎゃうぁ!」と叫ぶアラグネに「俺に背中を向けるからだ。」とザーンバルフが言う。
アラグネはまた激昂して振り返り、ザーンバルフに向かって2本の脚を振り上げた。
「周りの見えない人ですねぇ。怒りやすいのもほどほどに。」今度は巨蜘蛛の側面をメラミが捕えた。「ぎょおぉ!」怪蟲がのたうつ。「人ではなかったですね。蜘蛛でしたねぇ。」
「ぐぐぐ。おのれ腹立たしき者たちよ。」
アラグネは「いいだろう、お前たちの死に名誉など与えん!このトゲをくらえっ!」と、背中からトゲを発射させた。「さて、死グモのトゲをかわせるかな?」
アラグネは「いいだろう、お前たちの死に名誉など与えん!このトゲをくらえっ!」と、背中からトゲを発射させた。「さて、死グモのトゲをかわせるかな?」
巨蜘蛛の背からゆっくりと放物線を描くように飛び出したトゲは、しかし、その頂点から突然鋭く降下してくる。
「ぐわっ!」「きゃあ!」「うあ!」「ぐぬっ!」「あいたっ!」予想を反するトゲの動きを見切れずに、全員がまともに直撃を浴びた。
トゲの恐ろしさは、その直接の打撃には止まらなかった。ある者はトゲの猛毒に侵され、ある者は体が痺れて動きを封じられた。
「くっくっ。誰も避けられなかったか。おや?傷の浅い者がいたか?」
アラグネが目を向けた先で、キサラギが立ち上がろうとしている。
「いま回復をしますわ!ベホマラ・・・」
「遅いわ!」巨蜘蛛はすでにキサラギに向けて粘着糸を吐き出していた。糸に絡め取られ、キサラギの動きは完全に封じられてしまう。
「形勢逆転だな?」
アラグネがにやつく。「まずはお前にトドメを刺してやろう。」蜘蛛はのそのそとザーンバルフの前まで歩いて来た。そして右前の脚を振り上げる。
アラグネがにやつく。「まずはお前にトドメを刺してやろう。」蜘蛛はのそのそとザーンバルフの前まで歩いて来た。そして右前の脚を振り上げる。
「くそっ!」ザーンバルフは身をよじって右脚をかわすが、アラグネの左前の脚が襲いかかった。「ぐはっ!」っと叫んで、ザーンバルフが倒れた。トゲを受けた胸部とツメで斬り裂かれた腹部からおびただしい量の血が流れ出ている。
「まずは1匹。もう動けまい。遠からず出血死することだろう。」
巨蜘蛛はそう言ってニコロイのほうに足を向けた。
「さあ、かわいそうなニコロイ坊や。ずいぶん顔色が悪いじゃないか。放っておいてもその猛毒で死んでしまうのだろうが、やはり生きているうちにお前を喰っておかねばな?」アラグネはわざとらしく首をかしげるように言った。「愚かなり騙されやすいナシュロイ王。愚かなり病弱のアグシュナ王妃。愚かなり孤独の白き者リタ。そして、愚かなお前が最後だ、ニコロイ!」
巨蜘蛛はそう言ってニコロイのほうに足を向けた。
「さあ、かわいそうなニコロイ坊や。ずいぶん顔色が悪いじゃないか。放っておいてもその猛毒で死んでしまうのだろうが、やはり生きているうちにお前を喰っておかねばな?」アラグネはわざとらしく首をかしげるように言った。「愚かなり騙されやすいナシュロイ王。愚かなり病弱のアグシュナ王妃。愚かなり孤独の白き者リタ。そして、愚かなお前が最後だ、ニコロイ!」
「許さんぞ・・・。父を、母を、姉を侮辱することは、誰にもさせん!」震えながら足を立たせるニコロイ。
「ほうほう。まだやるというのか。侮辱を許さぬというのが、すでに愚か者の発言。妙な尊心で命を落とすのは最大の愚行だな、ニコロイ?」
「父の尊厳も、母の包容心も、姉の孤高さも、わしの命などよりもずっと重い。」
「では、そのために喜んで命を差し出すがいい!」アラグネが大きく口を開いてニコロイに噛みつこうとした。
それをニコロイは跳び下がってかわす。「うう。」ニコロイの視界はぐらりと傾いた。
「猛毒に侵されているのに、そう動くからだ。安っぽいお前の命。黙って私のエサとなれ。」
「わしの命とて、そう安いものではない。お前にくれてやるほど安くはない。わしの命の重さを知るがよい。そして、それよりも重い父たちの存在をお前に知らしめてやるまでは、わしは死ぬわけにはいかん。」ニコロイはそう言って刀を鞘に戻した。
「どうした?死なぬと言いつつ刀を納めるとは、まったくもって意味不明。」
「納めたのではない。構えたのだ。次にお前が私に触れようとしたとき、お前の脚が飛ぶと思え。」ニコロイは腰を落として蜘蛛を睨み、刀の柄に手をかざしている。
「居合のつもりか。しかし、この期に及んで睨み合いをしようとは。私がこうして見ているだけで、お前は猛毒で死ぬのだ。諦めて早く私のエサとなればよいものを。」
「ならば喰ってみろ。生きているうちにな。」眼光鋭いニコロイは、しかしそのエルフ特有の美しい白肌を失ったどす黒い毒の色をしている。
「いいだろう。死んだ肉などうまくないのだ。望みどおり生きたまま喰ってやろう!」
「ままま、待て!」
「む?なんだ?」怪蟲が目を向けた。
「ニニ、ニコロ、ロイお・・・」青髪のキュウスケが倒れたままニコロイのほうに手を差し出している。「い、いまた、助けま、ます・・・」
「ほほう。痺れが抜けておらんのに、やるではないか。」
「キ、キア、リ」
「いいだろう、お前から先に喰ってやろう。ニコロイよ、そこで見ておれ。」蜘蛛がのそのそとキュウスケに歩き寄る。「いただくとしよう。シャアァァ!」
そのとき、アラグネの下の地面が突き上がった。「な、なんだと!?」白い岩の刃が、アラグネの腹を突いた。「これは・・・ジバリカ!いつの間に・・・」
「キ、キアリー!」蜘蛛の隙をついてキュウスケの指からキラキラとした光がニコロイに向けて飛んだ。光はニコロイを包み、ニコロイのどす黒い肌は白へと戻った。
途端、ニコロイが怪蟲へと跳躍し、握った刀が鞘から滑り出した。スパッという気持ちのよい音がしたかと思うと、蜘蛛の2本の脚が飛んでいる。やがて鮮やかすぎるその切り口から緑色の血が噴き出した。
「ぎゅあぁぁあぁ!」8本のうち3本の脚を失った蜘蛛は、バランスを取れなくなり、どしんと転倒する。
「ぎゅあぁぁあぁ!」8本のうち3本の脚を失った蜘蛛は、バランスを取れなくなり、どしんと転倒する。
「ニコロイ・・・きさま・・・これでもくらえっ!」倒れたまま怪蟲は糸を吐き出した。「これできさまはまた動けなくなるっ!」
しかし、その糸はニコロイには届かなかった。ニコロイの目の前で、ぼうっと炎に包まれて糸が燃え去る。ニコロイが振り向くと、パルポスが杖を構えていた。「さて。糸は全部燃やして差し上げますよ。」
「なんだとっ!き、きさまが動いているということは・・・」蜘蛛がキサラギに目を向ける。
「もちろん、私の糸も燃やしてもらいましたわ。」
キサラギの後ろにはザーンバルフも立ち上がっている。「こちらの回復は済んでおりますのよ?」
キサラギの後ろにはザーンバルフも立ち上がっている。「こちらの回復は済んでおりますのよ?」
「さあ!観念しろ!怪蟲!」ザーンバルフが蜘蛛に棍を向けた。「くらえ!氷結乱撃!」
「終わりですねぇ。メラミ!」パルポスの杖から炎が飛び出す。
「さらばだ、蜘蛛よ!」ニコロイの刀が弧を描いてアラグネに迫る。
しかし、怪蟲アラグネが3人の攻撃を受けることはできなかった。
「ごぎゃうおぉぉ!」という断末魔を上げさせたのは、一瞬早いキュウスケの弓だった。
「見てくれたか、ユーチャーリン。たったひとつのオレの技、サンダーボルトだ。」
キュウスケは感電するようにびくんびくんと痙攣するアラグネを見ながらそう言った。
「見てくれたか、ユーチャーリン。たったひとつのオレの技、サンダーボルトだ。」
キュウスケは感電するようにびくんびくんと痙攣するアラグネを見ながらそう言った。
そして、魔瘴の温床、暗黒大樹から生まれ出でた魔瘴の蜘蛛は、紫の霧を散らして消えた。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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