ガラトアは丸腰のままアディールに向かって細い廊下を歩いて来る。地獄の使いとは違い、棍棒を握っているわけではない。
「アディールさん。どうやら呪文しか使わない敵みたいですねぇ。だとしたら、ワタクシたちのマホカンタの前には無力。」
「だといいけどね。」アディールは、それだけではないはずだ、と直感していた。
「確かに私は肉弾戦を得意とはしない。」ガラトアは言った。「だが、マホカンタごときで私を封じたつもりなら、笑止なこと。」
ガラトアは左の掌をアディールに向けた。「はっ!」と喝するとその掌から波動がほとばしり、アディールを守っていた光の防壁がパリンと割れた。そして間髪入れずにガラトアの右の指先から炎が飛び出す。いや、炎、という生やさしいものではない。地獄から呼び出した灼熱の業火。「見たこともないだろう。これがメラガイアーだ。」業火は細い通路を埋め尽くすようにアディールへと向かう。
ガラトアは左の掌をアディールに向けた。「はっ!」と喝するとその掌から波動がほとばしり、アディールを守っていた光の防壁がパリンと割れた。そして間髪入れずにガラトアの右の指先から炎が飛び出す。いや、炎、という生やさしいものではない。地獄から呼び出した灼熱の業火。「見たこともないだろう。これがメラガイアーだ。」業火は細い通路を埋め尽くすようにアディールへと向かう。
「いけません!マホカンタ!」
一度打ち消されたマホカンタを再度唱えるパルポス。間一髪、メラガイアーがアディールに届く寸前に光の壁が蘇り、その業火の向きが逆転した、はずだった。
一度打ち消されたマホカンタを再度唱えるパルポス。間一髪、メラガイアーがアディールに届く寸前に光の壁が蘇り、その業火の向きが逆転した、はずだった。
しかし、業火が跳ね返るのとほぼ同時に、極寒の無数の槍が業火へと降り注ぐ。氷の槍、ではない。空気だ。空気の固体。空気さえも固化させるほどの零度。その零度を帯びた槍状の固体空気が業火に突き刺さり、地獄の業火と固体空気の槍が相殺される。
とてつもない爆発が起きた。
零度が業火を沈め、業火が冷気の槍を溶かした。しかし、それは単なる相殺では済まなかった。固体空気は液化を通り越して気化し、その体積が瞬間的に恐ろしいほどに膨張する。本来、あり得ないほどの空気が一か所に集中し、そして、その超高濃度の空気が全方向へ分散しようと爆風を起こしたのだ。アディールたちは、その風圧に吹き飛ばされて、細い通路から弾き出された。
零度が業火を沈め、業火が冷気の槍を溶かした。しかし、それは単なる相殺では済まなかった。固体空気は液化を通り越して気化し、その体積が瞬間的に恐ろしいほどに膨張する。本来、あり得ないほどの空気が一か所に集中し、そして、その超高濃度の空気が全方向へ分散しようと爆風を起こしたのだ。アディールたちは、その風圧に吹き飛ばされて、細い通路から弾き出された。
「咄嗟のマホカンタ。なかなかの早詠みだ。」悪魔神官ガラトアは涼しい顔、に見える無表情。その体には、いつの間にかフバーハの衣を纏っている。
「な、なんという早詠み・・・ワタクシはマホカンタだけで精いっぱいだったというのに。」石床から必死に立ち上がろうとして、パルポスが苦しい声を上げる。
「今いくつ呪文を唱えたんですの?メラガイアー、マヒャド、フバーハ、その前に凍てつく波動・・・」
キサラギがそう言うのをガラトアが訂正するように言った。
「マヒャドではない。その上位呪文、マヒャデドスだ。これも初見だったか。」
「ワタクシがマホカンタを唱えることも計算の上で、相殺の呪文を先んじて唱えていたのですね・・・」
「別にそういうわけではない。」
ひとつ目の仮面の奥でも、おそらく無表情であろう口調でガラトアは言う。「どちらの呪文もお前たちに浴びせてやるつもりではあった。思いもよらぬ早詠みで、マホカンタに返されてしまったが、しかしそれでも一向に構わないこと。爆風が吹くことを察知できれば、フバーハで涼風に納めることもできる。」
細い通路をガラトアはゆっくりと歩いて来る。「どんなに身を守ろうとも、私には波動でそれを打ち消すことができる。波動から間髪入れずに呪文を浴びせることもできる。直後にそれを相殺できる呪文を発することもできる。お前がマホカンタを使おうが使うまいが、結果は同じこと。2発喰らうもよし。爆風に飲み込まれるのもよし。私はお前がマホカンタを使うのを見てからフバーハを唱えればよいのだ。詠唱速度が全てを決する。」
ひとつ目の仮面の奥でも、おそらく無表情であろう口調でガラトアは言う。「どちらの呪文もお前たちに浴びせてやるつもりではあった。思いもよらぬ早詠みで、マホカンタに返されてしまったが、しかしそれでも一向に構わないこと。爆風が吹くことを察知できれば、フバーハで涼風に納めることもできる。」
細い通路をガラトアはゆっくりと歩いて来る。「どんなに身を守ろうとも、私には波動でそれを打ち消すことができる。波動から間髪入れずに呪文を浴びせることもできる。直後にそれを相殺できる呪文を発することもできる。お前がマホカンタを使おうが使うまいが、結果は同じこと。2発喰らうもよし。爆風に飲み込まれるのもよし。私はお前がマホカンタを使うのを見てからフバーハを唱えればよいのだ。詠唱速度が全てを決する。」
「広間に出れば・・・広間までおびき出せば」とアディールが小声で言った。「細い通路じゃメラガイアーの避けようがない。でも、広い場所なら、避けることもできるかもしれない。」
アディールの言葉で、4人はガラトアから直線状にならない位置にサッと散って身を隠した。
「逃げるか?隠れるか?」
ガラトアはゆっくりと通路を広間のほうへと歩いて来る。「陰に隠れれば呪文が届かないということなのだろうが、さあ、どう来る?」
ガラトアはゆっくりと通路を広間のほうへと歩いて来る。「陰に隠れれば呪文が届かないということなのだろうが、さあ、どう来る?」
通路の出口、広間の入り口まで来たところで、ガラトアはまた闇のゲートを開き、棍棒を取り出した。
「別に肉弾戦をしようとしているわけではないから安心せよ。これは儀式用でな。ただ」ガラトアは足元の床石に向けて棍棒を振り下ろした。バシュンという音がして赤い紋様が浮かび上がり、そして消えた。「これはクモノの結界か。このような罠にかかる私ではないぞ?」ガラトアはまた別の床石を叩いて、ジバリカの結界も叩き消した。
「別に肉弾戦をしようとしているわけではないから安心せよ。これは儀式用でな。ただ」ガラトアは足元の床石に向けて棍棒を振り下ろした。バシュンという音がして赤い紋様が浮かび上がり、そして消えた。「これはクモノの結界か。このような罠にかかる私ではないぞ?」ガラトアはまた別の床石を叩いて、ジバリカの結界も叩き消した。
「アディール・・・バレてるぞ・・・?」ドドルの弱々しい声だけが響いた。
「まだだ!キサラギ、パルポス!行くぞ!」
物陰に隠れていたアディールが右から、柱からサッと飛び出したキサラギが左から、同時にガラトアを狙う。ソードブレイカーとまどろみの棍。「メラガイアーを使うのだって、どちらか一方にしか出せないだろう!」
物陰に隠れていたアディールが右から、柱からサッと飛び出したキサラギが左から、同時にガラトアを狙う。ソードブレイカーとまどろみの棍。「メラガイアーを使うのだって、どちらか一方にしか出せないだろう!」
「ワタクシの早詠みが間に合えば、その一方にマホカンタを唱えます!」
「なるほどなるほど。確かに私はいま棍棒を握っている。2方向に呪文を唱えられないだろうという発想は悪くない。しかし」ガラトアは右手の5指を広げた。すると、そのそれぞれの指から火球が5方向に飛び出した。「メラストーム!」5つの火球のうち4つが4人を捕えた。
「わぁっ!」「きゃあっ!」と、アディールとキサラギが追弾され、ドドルに1発が入り、誰にマホカンタをすればよいのか咄嗟に決めかねたパルポスもまた、誰を守ることもできずに自分も被弾する。
ドサリと倒れるアディールとキサラギ。寝そべるように伏せるパルポスと仰向けに大の字になるドドル。
「確かにお前たちには力量がある。」ガラトアが横たわる4人を見下ろした。「見事な策も考える。」ガラトアは闇のゲートに棍棒をしまった。「だから、お前たちはこの場で殺しておかねばならぬ。冥王様のもとへ行かせるわけにはゆかぬ。」ガラトアは「まずはお前だ。」と言って掌をアディールに向けた。そして唱えた。
「メラガイアー!」
「メラガイアー!」
盛る業火。アディールにそれを防ぐ術はなかった。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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