小説ドラクエ10-17章(4) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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 ザーンバルフたちが城へ戻ると、コトル大臣とニコロイ王が話しているところだった。コトル大臣が怒鳴るような強い口調で言う。
「王!もう捨てられた城に行くのはおやめください!危険すぎます!」
「そうがみがみ言うな。」と初老のニコロイ王。「それだけの価値はあったのだ。わしはあの地で恐ろしい幻影を見た。しかし、そのおかげでわしは、おぼろげに思い出すことができたのだ。」
「と言いますと?」コトル大臣は、さっきの態度から一変。すでに興味を惹かれた表情になっていた。
「カミハルムイの王家には、白き者と呼ばれる不思議な子供が生まれることがあった。白い髪、白い肌、清い姿を持つその子は、聖地と心を通じさせることができたという。姉、リタ姫はそういう子供だった。が、」ニコロイ王は言葉を区切って首を横に振った。「姉は乱心の末に実の両親を殺めた。そして、その日より聖地のチカラが失われたのも、姉上の乱心によるものなのだろう。」そこまで言って、ニコロイ王は閃きの表情を見せた。「いや、待て!?あのとき母上は、暗黒大樹の葉を求めていた。あれはどういう意味だったのか?」
「アグシュナ王妃がそのようなことを?」コトル大臣が言葉を挟んだ。
「母上の言葉にはなにか意味があるように思えてならん。いったい母上の遺志は、わしになにを伝えようとしたのだ?」ニコロイ王は腕組みをする。「うむ。よし!捨てられた城に暗黒大樹の葉を納めよう。それで何かがわかるのかもしれん。」
「ニコロイ様。まさかその葉をご自分で取りに行こうと言うのではありますまいな?あのような危険な場所に行かれるなど、絶対にさせませんぞ!」コトル大臣は息を荒げた。
「大臣。そなた暗黒大樹の場所を知っておるのか?」
「それは知っておりますが、ニコロイ様が行くと言うのであれば、お教えするわけにはまいりません。」
「ふうむ。わかった。では、誰か他の者に頼むことにしよう。」
「王様!」と、そのとき挙手したのは青髪のキュウスケだった。「その役目は私にお任せください!私と、後ろにいるザーンバルフたちが暗黒大樹の葉を持ち帰って来ます!」ザーンバルフに確認もせず、キュウスケは続けた。「それでコトル大臣。暗黒大樹はどこにあるのですか?」
「おお。キュウスケたちが行ってくれると言うのであれば安心です。エルトナ大陸の西端の呪われた大地にそびえる黒き大樹。それが暗黒大樹です。」大臣の言葉に「うむ。ではキュウスケよ。そなたに任せたぞ。」とニコロイ王も頷いた。


「よし!オレについて来な!」
 キュウスケはまたザーンバルフたちの先頭に立って西の呪われた大地へと進んだ。しかし、いざそこに踏み込もうという段になって「あのどでかいのが暗黒大樹だな。あそこから葉っぱを持ち帰ればいいんだ。簡単だろ?じゃあ、あとは頼んだぞ。よろしくな!」と言って、サッと消えてしまった。
「おい。我先にと言うように先陣を切ってたのに、結局行かないのか?」と、ザーンバルフは呆れ顔。
「そういう人なのですわ、キュウスケは。」と、キサラギがザーンバルフをなだめた。
 呪われた大地は、枯れた木々ばかりの痩せた大地。紫の霧が立ち込めて、ザーンバルフたちの視界を奪う。
「周りがよく見えないのもあるが、こんなに強い魔瘴の中を歩いて大丈夫なのか?」
「よくないと思いますわ。口元を押さえながら進みましょう。」
「なるべく早く大樹の葉を取ってここを離れたいですねぇ。」
 霧が深いばかりでなく、道はぐねぐねと曲がりくねっているうえ、ところどころ険しい崖になっていて道がなく、しかたなく大樹の枝や根を伝ってその本体である幹を目指した。

 ザーンバルフたちはやっとのことで大樹の幹へと辿り着く。見上げると、大樹は完全に枯れていて、その枝には葉がついてはいなかった。
「おいおい、ここまで来て取り越し苦労ってのは勘弁してくれよな。」
 そうザーンバルフが言ったとき、大樹からドササッ、バササッと何か人のようなものが落ちてきた。見ると、大樹の葉を纏った人型の魔物だった。それも3体。
 魔物たちは大剣を構えて、ザーンバルフたちに走り寄って来る。
「大樹には番人がいたんですねぇ。」
「でも、番人がいるということは、まだ葉があるということかもしれませんわ。」
「しかし、葉があろうが無かろうが、あいつらとは戦わないといけなさそうだ。とても話が通じる相手だとは思えん。」
 ザーンバルフの言葉に、パルポスとキサラギも頷いた。
「それ!」とザーンバルフが突き出したまどろみの棍をまともに受けた1体が、後方に弾き飛ばされ、そのまま倒れて起き上がらなくなった。
「やったのですか?」パルポスの問いに「いや、眠ってるだけだ。」と言って、ザーンバルフは次の1体に棍を振りかざす。
「そっちは任せたぞ。」と言うザーンバルフに「お任せを。」と答えてパルポスがメラミを唱えた。
 しかし、3体もの番人を倒すのは楽なものではなかった。キサラギが唱えたズッシードによってザーンバルフは自分より大きな番人とつばぜり合いを繰り返し、パルポスが大剣をかわしながらメラミを唱え、やや優勢にも見えるところで眠っていた1体が起き上がった。
「くそっ!少しは有利に戦えると思ったんだけどな。しょうがねえ。」
 ザーンバルフは「頼む!」と、キサラギに目で合図をする。「スカラ。」というキサラギの声とほぼ同時に、ザーンバルフは、3体の番人の中央に飛び込んだ。3本の大剣が、同時にザーンバルフに迫る。
「間に合ってくれ!うおりぁぁぁ!」そう叫んで、ザーンバルフが低い位置で棍を振り回した。棍が番人たちの足元を払い、結局、3本の大剣は、どれもザーンバルフには届かず、番人たちはみな転倒してしまう。
「うまくいったぜ!パルポス、頼む!」
 ザーンバルフは今度はその場から飛び下がり、代わりにパルポスがその場に走り込んだ。そして、そのまま「イオラ!」と唱える。
 光の衝撃が、倒れたままの番人たちを包む。そして「ぐぎゃぁ。」という叫び声を残して番人たちは光とともに消え去った。
「やったな、パルポス。」とザーンバルフが労うと「いえ、ザーンバルフさんが好機を作ってくれたからですよ。」と謙遜気味にパルポスが言った。「味方を巻き込むこともあるので、混戦ではイオラが使いにくいのですよ。」
「さて。それはいいんだが、肝心の大樹の葉がないんじゃあな。」ザーンバルフが両手を上げる。
「そうですわね。これではニコロイ王の願いも・・・あら?」キサラギが頭上を見上げている。「1枚だけ残っていたみたいですわね。」
 キサラギの頭を横切るように、1枚の葉がひらひらと舞い降りた。
「どうやらニコロイ王の願いは叶いそうだぜ。」






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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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