小説ドラクエ10-16章(12) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

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 ベルンハルトがいなくなってしばらくすると、ドゥラ院長が到着した。ドゥラは走ってアディールに寄る。
「アディールさん!天魔の体は?まだ天魔はここに来ていないのですね?」白衣に白帽子。城にいるときと同じ格好をしている。
「いや、天魔は来てたよ。僕が来たときには完全体になっていた。」
「それでは!?もうドルワームは・・・」ドゥラは深刻な表情をして、ふとアディールのほうをもう一度見た。「アディールさん、そんな傷だらけになって。もしかして、アディールさんが天魔を!?」
「うん。そうだけど、おいらたちだけじゃないんだ・・・」
 そう言うドドルの肩にアディールが手を置いた。そして「天魔は斃れました。」とだけ言った。
 ベルンハルトの話はすべきではない。ウラード王の前で一度ベルンハルトのことを口にしたことがある。魔瘴石から太陽の石を創り出すという発想の主がベルンハルトである可能性も口にした。今、そのベルンハルトの名前を出したところで、ドゥラ院長の誇りを傷つけるだけだ。そうまでして真実を明らかにする必要なんてない。アディールはそう思った。
「そうだったのですか。アディールさんたちが・・・」ドゥラ院長はアディールに頭を下げた。「ありがとうございます。」
「いえ。」と言うアディールに、しかし、いつまでもドゥラは頭を上げようとしない。「ドゥラ院長?」とアディールが呼びかける。
「私は謝らなければならない。私はあなたたちに、よそ者などと失礼な物言いをした。しかし、実際は私がドルワームを危険に晒し、あなたたちがドルワームを守った。申し訳なかった。」そしてドゥラは頭を上げ「せめてその傷の治療をさせてください。」と言って道具箱から薬を取り出した。

 それからしばらくして、ラミザ王子が現れた。王子に率いられて、騎士団もぞろぞろと入って来る。「あ、ドゥラ君も来てたんだね。天魔はどこ?」
 王子ののんびりとした物言いに、ドゥラが立ち上がって強く睨みつけた。「ラミザ王子。今までなにをやっていたんですか?」
「隊列の編成に時間がかかっちゃって。それに道にも迷って。あはは。」
「いいかげんにしろ!」ドゥラが怒鳴り上げた。「天魔はもうアディールさんたちが倒した!討伐の騎士なのにこんなに時間をかけて!アディールさんたちがいなかったら、もうドルワームは滅びていたかもしれない!お前が兄だなんてうんざりだ!お前のような奴にドルワームを任せてなんておけない!」そう言ってドゥラはぷいと視線を逸らして、そのままひとりで出て行った。
「あ、あの。ドゥラ君~。」ラミザもそれを追うように、出て行った。

「おいら、ラミザ王子はキライじゃないけど、やっぱりなんか頼りないぞ。」ドドルの言葉に「うん。・・・だけど、ラミザ王子も、自分で決めないといけないんだ。自分の道は自分で決めないといけないんだ。」とアディールが言う。
「アディール?どうしたんだ?」ドドルが不思議そうな目で見るので「いや。なんでもないよ。行こう。」と言って洞窟の出口へと向かった。






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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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