小説ドラクエ10-21章(7) | カインの冒険日記

カインの冒険日記

ページをめくれば、そこには物語がある。

      読むドラゴンクエストの世界へようこそ。


 最後の術師、ガミルゴがエルジュと対峙していた。赤い体と赤い目のオーガ。その目の色はザーンバルフを想起させる。ザーンバルフと違うのは、髪の色。ガミルゴがかぶったターバンのような黄色い帽子の下から、茶色の髪が見えていた。
 はじめ、数人のオーガが「人間が何の用だ!?」とエルジュに掴みかかろうとした。それを制止したのがガミルゴだった。
「いい度胸じゃねぇか。人間がよくここに来れたもんだな。何しに来やがった?」ガミルゴがエルジュを睨みつける。
「ベルンハルトの子エルジュ!破邪舟の儀を行いに来た!」臆することなくエルジュは言う。
「お前がエルジュか。ベルンハルトがよく話していたぜ。自慢の息子だってな。はっはっは!」そういうガミルゴは、しかし笑っている目ではなかった。「ならば」と言うガミルゴよりも早く「試験があるんだろう?何をすればいい?」とエルジュ。
「ほう?では、取り返してほしいものがある。」
 オーガのガミルゴに取り戻せないのに子供のエルジュに取り戻せる物があるのか。アディールはふと胸騒ぎを感じた。
「なんだ?」エルジュはそれを感じる風ではない。
「他でもない。我が祖国、グレン城だ。」
 ガミルゴの言葉の意味をエルジュは理解できなかった。もちろんアディールも。
「何を言っているんだ?グレンは僕たち人間の城だ!」エルジュが叫ぶ。
「さては・・・そうか、何も知らないんだな?子供には自分たちの悪行を伝えないとは、卑劣なものだな、人間とは。」言葉も出ないエルジュに、ガミルゴがたたみかける。「知らないようだから教えてやる。あの城、グレンはもともとオーガの城だった。俺たちオーガは、レイダメテスにより世界の大半が炎に焼かれたとき、城を開放し他の種族を受け入れたのだ。人間たちも、そのときグレンに住み始めた。そして、種族が異なっても同じ境遇を乗り切るべく、協力して生活していた。それがあるとき、人間どもが本性を現しやがった。水の配分に不満を言い出し、グレン城を乗っ取って他の種族を追い出したんだ。」
「そ・・・そんな・・・デタラメだ!!」
「デタラメなものか。ここを見ろ。グレンよりよっぽど不毛の土地だろう?なぜ俺たちオーガがこんな不毛な場所に住んでると思ってる?他の集落も見てきただろう?ヤクルのいたエルフやウェディたちの村も、フォステイルがいた岩屋も。なぜ人間以外がそんな不遇な環境で過ごしていると思う?なぜ人間だけが裕福なグレンで生活できているのだと思う?」
 愕然とするエルジュは言葉も出ない様子。
「俺たちをこんな辺境に追いやって、自分たちが困ったら協力しろとは、虫がよすぎるとは思わねぇか?」ガミルゴはエルジュに指を突き付けた。「お前たちの指導者に言っておけ!俺たちは戦いを仕掛ける!そして、グレン城をこの手に取り戻す!」
「ま、待て!今は戦争などをしているときじゃない!」
「そう思うのは人間だけだ。俺たちからすれば、レイダメテスも人間も同じ。俺たちを苦しめる同じ存在だ。」
「わ、わかった!僕がシオドーアを説得する!グレン城をオーガに返還するように!」
「フン!小僧ごときに何ができるか。・・・だが、いいだろう。ベルンハルトに免じて、少しだけ待ってやる。そして、グレン城が返還されることになれば、継承の儀を行ってやる。お前にそれができるのか、見せてもらおうじゃないか。」




続きを読む

前に戻る


目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



ドラクエブログランキング


読者登録してね