「なんということだ。アロルドまでが姿を消したとは。」
ガートラント王グロスナーの口どりは重かったが、そんな折りに、輸送団員のひとりが帰還したという報が届いた。
友好の品をグレンに届けた輸送団。姿を消した輸送団。その団員が戻ったというのであれば、重大な情報が聞けるかもしれない。グロスナー王は、すぐにその団員を王の間へと呼び寄せた。団員はギザックという名前だった。
「申し訳ありません、王。私たちはグレン城へ大変な品を届けてしまったようなのです。」と、ギザックは言う。よく見るとギザックは傷だらけで、満身創痍という状態だった。
「うむ。しかし、そのことならすでにマリーンどのの働きで解決済みである。それよりも、その品をすり替えた者を見たのであろう?」
「はい。輸送団がグレンに発って程なく、ひとりの女が現れました。顔は見ていません。白いヴェールで終始顔を隠したままでしたので。その女が、王の指令書を見せて、荷物を乗せ換えたのです。指令書には、王の意向で贈り物が変わった旨が書かれていましたから、私たちは、特に疑うことをしませんでした。そして、私たちがそれをグレンに届けた後、あの女に捕えられてしまいました。指令書が偽造であったことがわかったときには、もはや手遅れでした。私ひとりが逃げ出せたのですが、他の者はまだ捕えられたままです。」
「わかった。団員の救出には兵を出す。して、その場所はどこだ?」
「この城の南東、海賊たちのアジトの地下に。」言いながらギザックはよろめいて膝をついた。
「よくやった。もう下がってよいぞ。傷の手当てをして、ゆっくりと休むのだ。」
グロスナーはそう言って、ギザックを下がらせ、その代わりに兵士長のスピンドルを呼んだ。
「スピンドル兵士長、参上!」兵士長は自分でそう名乗りながら、すぐに王の前に参じた。剣を持ち、鎧に身を包んだ、背の低い小太りのオーガ。とても強そうには見えないが、兵士長という肩書きやグロスナー王に信用されているところからすると、もしかすると、とてつもない剣技を持っているのかもしれない。そう思ってアディールが見ていると、スピンドルは「久々の出番ですな。」と言いながら剣を鞘から抜き、振るって見せた。それも2振りや3振りではない、14回も。まるで見えない敵と戦っているかのごとく、兵士長は剣を振り下ろしては斬り上げ、打っては払う。そして、はあはあと肩で息を上げながら「この私の剣技にかかれば、どんな敵も剣のサビにして見せますぞ。」と王のほうへ正対し、頭を下げた。
「おい、大丈夫か、あれ?」と、ザーンバルフが小声で言うので「さあ。」とアディールは答えた。 それでもグロスナー王が「うむ。頼りにしているぞ兵士長。」と言うので、ザーンバルフはまたアディールに向けてつぶやいた。「大丈夫か?」「さあ。」
一行は城の南東、海賊のアジト跡へと足を向けた。スピンドル兵士長が先頭を歩き、それにアディールとザーンバルフが続く。そして最後尾にマイユ。グロスナー王は、マイユには城に残るように言ったのだが、マイユがどうしてもと譲らず、結局アディールたちに同行することとなった。アロルドを助けるためなら、わが身は厭わない、と言うような気丈な態度だった。そんなマイユの気丈な態度と真逆なのがスピンドル兵士長。兵士長は、先頭を歩いて仲間を率いてはいるものの、いざ魔物が現れると、さあ君たち遠慮なく倒してくれたまえ、と言って後方へと下がっていってしまう。魔物との距離が近づいて混戦状態になると、マイユの後ろに隠れて「私は君たちを試しているのだ。」などと言いながらマイユを魔物のほうに押し出す始末。それでいて、戦いが終わった後には、私が出るまでもない敵だったな、とか、君たちの実力もまあまあのようだな、などと言いながらまた先頭に立ち、先へと進む。その繰り返しに、ザーンバルフもアディールも「大丈夫か?」とも「さあ。」とも言わなくなっていた。大丈夫なのかどうなのかの答えが、すでにわかってしまっていたからであった。
スピンドルに率いられたアディールたちがそうして進んでいると、一軒の古びた小屋を見つけた。
「ここかしら?」と、マイユ。
「ふむ。ここであるぞ。」と言うのはスピンドル。
「いや、でもここはアジトには狭すぎないか?」アディールが自問した。
「そう、よく気付いた。アジトには狭すぎる。ここはフェイクで、アジトは他にあるのだ、と私も言おうとしていたところだよ。」と、スピンドルはさっきと逆のことを言った。
「おい、あそこを見てみろ。床に隙間がある。秘密の通路があるのかもしれないぞ。」今度はザーンバルフ。
「ほほう、よい着眼点だ。他にアジトがあると思わせることこそがフェイクなのだよ、君。私には最初からわかっていたよ。しかし、こんなわかりやすい隠し方をしては、秘密の通路にならんだろうに。不届きな輩の考えることは浅はかでいかんな。」と言ってスピンドルは鼻を鳴らした。
「これって、輸送団のギザックさんが逃げてきたときに急いでたからきちんと閉めなかったんだわ。」と、マイユ。
「わっはっは、お嬢さん。当然私にもわかっておったのだぞ。ガートラントの兵士たるもの、いかなるときも手掛かりを残すようにと教えてきたのも私なのだ。もちろん私がそれに気付くことができるというのが大前提なのだがね。」全く一貫性のないスピンドル兵士長の話ぶりに、アディールもザーンバルフも、両掌を上に向けて肩をすくめた。
床板を外すと、地下へと続く階段が見つかった。アディールたちは階段を下り通路を奥へ奥へと進んだ。奥の突き当たりに近付くと、女の話声が聞こえてきたので、アディールたちは物陰に身を隠して声のほうを注意深く窺う。白いヴェールをかぶった女が「私の目を盗んで1匹逃がすなんて、舐めたマネしてくれたわね。」と言っているのがわかった。女は突き当たりのほうを向いて話していたが、よく見ると、突き当たりの先には牢があり、その牢の中の人物に話しかけているのだとわかった。牢の中には赤い人影が見える。ガートラントの輸送団員だろう。間違いない。こいつが輸送団を襲った女だ。アディールは確信した。
アディールとザーンバルフは、物陰から出てヴェールの女に歩み寄った。
「輸送団を開放してもらおう。」
そう言ってザーンバルフが進み出た。
「それから、なぜこんなことをしたのか、説明してもらわないとね。」
アディールも並ぶように足を踏み出す。
「アロルドを返してもらうわ。」
マイユもふたりに続いた。
振り向いた女はくっくっと肩を震わせて「あら。少しは骨のあるオトコが来たのかしら?」と、首からぶら下げた黒光りする石を持ち上げた。
「これ知ってるかしら?魔瘴石って言うのよ?でもね、ここにいるのはこれを使うまでもない小者ばかり。せっかくの魔瘴石が泣いてるわ。あなたたちで試してあげる。」
女が魔瘴石を強く握ると、黒い霧が女を包んだ。霧の中から声が聞こえた。「私はジュリアンテ、妖魔ジュリアンテよ。いいことを教えてあげるわ。戦争が起きれば強い戦士たちが集まる。そしてその戦士たちは私のしもべになるの。」黒い霧が散り、妖魔の姿が露わになる。体を覆わんばかりの薄紫の長髪は地面にまで届き、肌は透けるように白く、目は血のように赤い。
「これ知ってるかしら?魔瘴石って言うのよ?でもね、ここにいるのはこれを使うまでもない小者ばかり。せっかくの魔瘴石が泣いてるわ。あなたたちで試してあげる。」
女が魔瘴石を強く握ると、黒い霧が女を包んだ。霧の中から声が聞こえた。「私はジュリアンテ、妖魔ジュリアンテよ。いいことを教えてあげるわ。戦争が起きれば強い戦士たちが集まる。そしてその戦士たちは私のしもべになるの。」黒い霧が散り、妖魔の姿が露わになる。体を覆わんばかりの薄紫の長髪は地面にまで届き、肌は透けるように白く、目は血のように赤い。
「フン!少しばかり短絡的すぎるんじゃないか?強い戦士たちが簡単にしもべになるわけがない!」ザーンバルフがそう言って妖魔に飛びかかった。シルバークローが妖魔の首元に迫る。
「それはどうかしら?」そう言う妖魔は、しかし、それを避けようともせずただザーンバルフのほうを見ているだけ。
ザーンバルフの一撃で、勝負が決するように思えた。だが、どういうわけか、攻撃しようとしたザーンバルフは武器を下げて妖魔に背を向け、アディールのほうを向いて立ちはだかった。
「ほらね?しもべになるって言ったでしょ?」ジュリアンテが勝ち誇るように言った。「さあ、名前も知らない赤目のオーガよ。あのウェディを倒してらっしゃい。」
妖魔がアディールのほうを指差すと「ああ、ジュリアンテ。俺に任せておけ。」と、ザーンバルフが襲いかかってきた。
妖魔がアディールのほうを指差すと「ああ、ジュリアンテ。俺に任せておけ。」と、ザーンバルフが襲いかかってきた。
「おい!どうしたんだ、ザーンバルフ!?」アディールが叫ぶ声も、しかしザーンバルフには届かず、シルバークローと銀の短剣の衝突音だけが何度も響き渡る。
「くそ!ザーンバルフに何をした!?」アディールは妖魔を睨んだ。妖魔の深紅の瞳が睨み返してくる。
ふと、深紅の瞳に吸い寄せられるような感覚を覚えた。あれ?僕は何をやっている?僕は誰と戦っている?何をしにここに来た?なぜザーンバルフと戦う必要がある?ザーンバルフも僕も、ジュリアンテ様のしもべ。なぜ戦っている?
「さあ、あなたたち。しもべはひとりで十分。ふたりのうち勝ったほうが私のしもべよ。」
ジュリアンテのそのひとことで、アディールとザーンバルフは、互いを敵視し向かい合った。妖魔の正規のしもべの座を勝ち取るべく睨み合うふたり。ふたりは一触即発の空気を纏っていた。
やがて、お互いの間合いを詰めるように、ふたりは一気に踏み込んだ。アディールもザーンバルフも、武器の得意とする射程、すなわち密着状態まで詰め寄り、互いの武器が交差しようとする。
そのとき、アディールよりもザーンバルフよりもすばやく動く白髪の赤い人影が、ふたりの間をすり抜けた。マイユだった。アディールの短剣とザーンバルフの爪が交差する直前、最も距離が縮まった瞬間をマイユは捕え、右手の甲でザーンバルフの胸を、左手の掌でアディールの額を同時に打った。途端、アディールとザーンバルフは正気を取り戻す。
「ふたりともしっかりして!あいつの目を見ちゃダメ!」マイユが叫んだ。
「あら、いいツッコミじゃないの。おかげで魅了が解けちゃったじゃない。」妖魔は困ったような表情を作って見せたが、すぐにニヤリと笑い「ワルい娘。お仕置きが必要ね!双竜打ち!」と、マイユに向けて鞭を2度振るった。先端が鋭く尖った鞭がマイユを襲う。
「きゃあ!」とマイユは目をつぶったが、いつまでも鞭が自分に届かないのを不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。と、短剣を振り上げているアディールとX型にツメをつけた両腕を振り下ろしているザーンバルフが見えた。妖魔の胴体には、ザーンバルフの腕の交差と同じ形の傷があり、妖魔の握る鞭は根元から切断され、鞭の先端はアディールの短剣の切っ先の方向に回転しながら飛んでいた。
「きゃあ!」とマイユは目をつぶったが、いつまでも鞭が自分に届かないのを不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。と、短剣を振り上げているアディールとX型にツメをつけた両腕を振り下ろしているザーンバルフが見えた。妖魔の胴体には、ザーンバルフの腕の交差と同じ形の傷があり、妖魔の握る鞭は根元から切断され、鞭の先端はアディールの短剣の切っ先の方向に回転しながら飛んでいた。
「う、嘘でしょ。魔瘴石のチカラを使った私が。あなたたち、一体・・・」
崩れ落ちた妖魔は、両膝をつき、そのまま地面に倒れ込んだ。動かなくなった体から黒紫色の霧が流れ出し、霧が散るのと同時に体ごと散って消えた。後には魔瘴石のネックレスだけが残った。
マイユがふたりに駆け寄り「ありがとう、助かったわ。」と言うと、アディールとザーンバルフはバツが悪そうに「いや、こっちこそ・・・」「魅了されてすまない・・・」と頭をかいた。
さて、輸送団を開放しようか、という段になって「たあ!」と駆け込んでくる者がいた。「今のが女の正体か。」駆け込んできた者、スピンドル兵士長がそう言った。そういえば、今までいなかったんだっけ、とアディールが思っていると「なかなか手強い相手だったな。」と、さも自分が倒したかのような口ぶりで、手に握っていた剣を鞘に収めた。兵士長は「よし、王に報告だ。」と踵を返し、背中越しに「君たちは輸送団を救護してくれたまえ。」と言って去っていった。もちろん、妖魔退治の証拠となる魔瘴石のネックレスを持って。
スピンドル兵士長が去った後、アディールたちは奥の牢を開き、囚われの輸送団を開放した。
「ありがとう、君たち。ここに来てくれたということは、ギザックは無事に城に辿り着けたのだな。」輸送団のひとりが言った。
「我々パラディン輸送団が3人もいて、女ひとりに捕えられてしまうとは。なんともお恥ずかしい限りだ。」と、もうひとりが言った。牢の中にいたのはふたり。それだけだった。
「え!?アロルドは?アロルドはここにいないの!?」マイユがパラディンのひとりに詰め寄った。
「アロルド?いや、ここには我々ふたりと、先日までギザックがいただけだが。」
「そんな・・・。」
「アロルドだけじゃない。」とザーンバルフ。「もっと多くの戦士が行方不明になっているはずだ。城下町にいた母子の家の父親もここにはいない。この事件、まだ終わっていないぞ。」
「ザーンバルフ、マイユ。僕たちもお城に戻ろう。嫌な予感がするんだ。」アディールが言った。「バグド王の魔瘴石は賢者マリーンが呪いを解いて持ち去ったはず。それはジュリアンテが輸送団の積み荷に潜ませていたもの。だけど、ジュリアンテは今でも魔瘴石を持っていた。おかしいと思わないかい?」
「ジュリアンテと賢者マリーンが通じてるってこと!?」驚きの声を上げるマイユ。
「ジュリアンテからバグド王、バグド王から賢者マリーン、賢者マリーンからまたジュリアンテ、というわけか。そして今、スピンドル兵士長がそれを持ってガートラントに向かっている。」
「そういうこと。そして、今ガートラントには賢者マリーンがいる。」
「それじゃ!?」
「おい!ジュリアンテと通ずるマリーンがいるところに、魔瘴石のネックレスを持っていくということは!」
「そんなの、マリーンがまた奪い返すに決まってるわ!」
「そう。グロスナー王はマリーンを信用しているし、スピンドル兵士長はそんなこと考えていない。ジュリアンテとマリーンに対して、ガートラントは無防備すぎる。」
「急いでスピンドル兵士長を追うんだ!」
そうして、アディールたち3人とパラディン輸送団ふたりは、ガートラントへと急行した。
ガートランド城。
王の間に駆け込んだときに、まだ事が起こっていないようだったので、アディールたちは一安心した。
王の間に駆け込んだときに、まだ事が起こっていないようだったので、アディールたちは一安心した。
「どうやら間に合ったようだね。」息を切らしながらアディールは言った。
見ると、スピンドル兵士長がグロスナー王に、妖魔討伐の報告をしているようだった。「いや、妖魔を倒した私の剣さばき、王にも見ていただきたかったものです。」と言いながら、また鞘から剣を抜いて振り回している。兵士長は、ふとアディールたちに気付き「やあ、君たちもよくやったな。よい働きであったぞ。」と歩き寄ってアディールの肩をポンポンと叩いた。
「本当かい?」賢者マリーンが口を開いた。
「む?本当か、とはどういう意味ですかな?」スピンドルが顔をしかめた。
「本当にあんたが倒したのかい、と聞いてるんだよ。」
「失敬ですな。」と悪びれもなく言う兵士長を見て、ザーンバルフが、おいおい、と小声でつぶやき、アディールはただただ肩をすくめるばかりだった。
「何か証拠でもあるのかい?」
「もちろんありますとも。」と言って兵士長は懐から魔瘴石のネックレスを取り出す。「白ヴェールの妖魔が持っていたものです。」
それを見たグロスナー王が、ガタッと椅子から立ち上がった。
「これはどういうことだ!?マリーンどの、グレンへの贈り物のネックレスはそなたが封印したのではなかったのか!?」
「おや、なにか勘違いをしているだね。グレン王のネックレスはこっちさ。」マリーンは、首元から手を潜らせてジュリアンテのものとは別の、しかしそっくりなネックレスを取り出した。「別にネックレスはひとつってわけじゃない。」
「それでは、やはりひとつは封印されていたのだな?」
グロスナー王のその言葉に、マリーンは「くくく」と震えてから「はーっはっは!」と高らかに笑いだした。そして表情を一変させた。いや、顔を一変させた。先ほどまでの人間の顔とは違う魔物の顔。ぶつぶつとイボのある青い顔。口は避け、牙をむき出している。白いボブヘアはにょきにょきと伸び、不潔に垂れ下がる。しかしよく見ると、人間のときの顔と大差ないと言えなくもない。「おめでたいヤツだね。封印?冗談じゃない。魔瘴石はあたしたちのチカラをサイコーに高めてくれる秘石。封印なんてしてたまるかい!」
「なんだと!?マリーンどの、いやマリーン!わしを、ガートラントを騙していたのだな!?」
「ああそうさ!しかしわかってないようだから教えておいてやるさ!ジュリアンテはあたしの妹。あの子は戦を起こせば手っ取り早く強い者たちを集められると考えたみたいだけど、あたしはそうじゃない。こうやって城に入り浸って目をつけた奴を捕えていけば、次々にまた強者を呼び込んでくれるんだからね!あんたのおかげさ、ガートラント王。選び抜いた戦士たちをじっくりと料理できるってわけさ。それから」マリーンはスピンドルをぎろりと睨む。「あたしたちは生き返しを探していたのさ。」
アディールの耳が反応する。なんで僕たちを探しているんだ?
「生き返しというのは、特別なチカラを持っていて大そう強いんだとさ。しかし、姿形もわからなければ、いるのかいないのかもわからない。いや、わからなかった。それが、まさかこんなところで見つかるとはね。スピンドル、お前だよ!」
「なんと!?私は知らぬ!生き返しなど知らぬぞ!」どうやらマリーンはスピンドルのことを生き返しだと思っているようだった。
「今更言い逃れるか?お前の持つ魔瘴石が証拠さ。ジュリアンテを倒せるほどの者がそういるわけがない。」
スピンドルは「いや、違う!これは私ではない!」と叫んではいたが、マリーンのほうはそれを信じず、手から魔瘴の霧の束をスピンドル目掛けて放出する。黒紫の束の直撃を受けたスピンドルは、霧と同じ色の黒紫の玉と化し、床に転がった。
「ふふん。まさかこんなダメ兵士長が生き返しだったなんて。近くにいたのに全然気がつかなかったよ。」
「きさま!スピンドルになにをした!?」そう叫んだのはガートラント王グロスナー。王は、手近な剣を握りマリーンに斬りかかった。
「おっと。それじゃあんたもついでだ。」マリーンがまた霧の束を発し、グロスナーもスピンドル同様、黒紫の玉へと封じ込められた。
マリーンが床に落ちた玉と魔瘴石を拾っているときに、今度はマイユが飛び出でた。
「待ちなさい!そのモヤ、アロルドを連れ去ったのはあなたね!この場で叩きのめされたくなかったらアロルドを返しなさい!!」
「勇ましい小娘だね。だけどね、女は要らないよ。それから、そっちの財布をスられるようなノロマも要らないね。」とマリーンはアディールを指差した。
「助けたいと思うのなら、オルセコ闘技場までやってきな。せいぜい強い男たちを連れて来ることだね。あっはっは!」
「助けたいと思うのなら、オルセコ闘技場までやってきな。せいぜい強い男たちを連れて来ることだね。あっはっは!」
そこまで言って、マリーンは黒紫の霧とともに姿を消した。
「オルセコ闘技場・・・」マイユがぼそりとつぶやく。
「安心しろマイユ。アロルドは必ず助け出す。」ザーンバルフがマイユの肩を叩いた。
3人は、ガートラントを出て、古代オルセコ闘技場を目指す。
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【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
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