小説ドラクエ10－19章(5)

　リリーネがナルビアのイッショウの家に戻ると「おかえり。」と笑顔でリリオルが迎えてくれた。

「で、どうだった、イソーロー？」とイッショウ。

「これ、拾ったの。」とリリーネは白い石をイッショウに見せる。

「おお！？これは白の封石！」リリーネの手から封石を取り、それをよくよく確認する。「間違いねぇな。」イッショウは封石をリリーネの手に戻した。「お前が行った青の祠以外はな、みんな鍵がかかってて入れねぇんだ。だが、この封石があれば、祠の鍵を錬金することができるはずだ。」
　イッショウは錬金釜のほうを顎で示しながら、リリーネに1枚の紙を差し出す。「レシピはこれだ。」

　リリーネのおまじないで、白の封石は白い鍵へと変わった。

「それが白の祠の鍵だ。これだけできりゃ、お前のことはもうイソーローなんて呼べねぇな。イッチョ前と呼んでやる。」と、イッショウはまたバシッとリリーネを指差した。「白の祠は西のポルネア山のほうだ。」

「ありがとう。行ってくるね。」

　リリーネが家から飛び出そうとすると「ちょっと待て！」とイッショウが呼び止める。「お前、そんな格好で行くつもりか？」

「え？あ、うん。だけど青の祠には魔物がいて、ちょっと怖かったんだ。」とリリーネ。

「ポルネア山は危険なところだ。お前、錬金術で自分の装備ぐらい整えてから行けよ。この錬金釜はいくら使っても構わねぇ。どうせ俺には使えねぇんだ。」

「あ、そっか。そう言えば、さっき祠で錬金のレシピ帳を拾ったんだ。」

　リリーネは「これと、これと・・・」と素材を釜に入れておまじないをかける。ポンっといって釜から出て来たのは鋼の剣。「やったぁ！いいのができた！」

　そう喜ぶリリーネに「お前」とイッショウ。「それ使えるんだろうなぁ？見るからに不釣り合いで、お前に使えそうな武器じゃねぇぞ。」

　言われて気付いたリリーネ。剣を振ろうとしても、自分が振り回されるばかり。「あれ・・・私には使えないみたい・・・。」と、がっくりとうなだれた。

「自分で使えそうな軽い武器を作るんだな。」とイッショウに言われたリリーネは、レシピ帳を見ながら買い出しに行き、大量の武器や防具や素材を持ち帰って来た。ついでに戦士風の女も連れて来ていた。

「おかえり。あら、どちらかしら？」リリーネにも戦士風の女にも笑顔を向けるリリオル。

「私はジャネット。戦士の修行中、だ。」ジャネットと名乗った女戦士は、男勝りな口調でそう言った。

「私がね、鋼の剣を持って歩いてたら、この人が助けてくれるって。」

　そう言うリリーネの言葉に不思議な顔をするイッショウとリリオルに、ジャネット自身が説明を加えた。

「先も言ったが、私は修行中の戦士。よい武器があれば、当然それを使いたいと思う。しかし、この町に売っているのはせいぜい青銅の剣。私も、それで十分だと思っていた。ところが、そう思っていたときに、その鋼の剣を重そうに担いでいるリリーネを見たのだ。私は、その剣を振るってみたいと思った。だが、そうは言っても、それを譲ってもらおうとするほどの金も代わりの品を持ち合わせていない。だから、私がその剣をもらうのではなく、剣に私がついて行くことにしたのだ。」ジャネットは鋼の剣を掲げて言った。「この剣はリリーネのもの。私は、それを借りて、その間リリーネの旅を手伝う。そういうことだ。」

「そうなの。」とリリーネは頷く。「ジャネットさんが助けてくれるって言うから、ポルネア山にも白の祠にも行けると思うんだ。それに」買ってきた武器や素材を錬金釜に投げ込む。ポンっと鳴って出てきたのはスライムタワーステッキとホワイトバックラー。それから身かわしの服。「これで私も大丈夫だと思うんだ。」

　リリーネはサッと着替えて、サッと家を出て行った。それにジャネットもサッと続いた。

カインの冒険日記

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小説ドラクエ10－19章(5)