メギストリスに向けて、オルフェアから南西に進むと、キラキラ大風車塔という丘の上の観光地があった。著名な芸術家がデザインしたであろう特徴的な形の塔に、これまた特徴的なデザインの大風車が取り付けられている。塔の中には宿やバザーがあり、外には塔をぐるりと囲むようにテラスが設けられている。テラスからは、丘の景色を一望することができ、さらには、アストルティア鉄道協会の遊び心か、風車塔を設計した芸術家の影響力か、大陸間移動鉄道の線路が風車塔をぐるりと一周するように敷かれている。そのおかげで、ここキラキラ風車塔には列車を見るために多くの観光客で溢れていた。観光地を線路が1周取り巻いているにもかかわらず、この風車塔には駅が無く、そこがまた芸術家のこだわりのひとつでもあると言われている。駅が無いからこそ、景色と列車の美しさがよくわかるのだ、という鉄道好きな観光客や、不便な立地こそがレジャー環境として重要であるのだ、という旅好きの観光客が後を絶たず、アストルティアの中でも玄人が好む観光地であるのだという。
列車が通るたびにパシャパシャとカメラのシャッターを押す観光客と同じように、アディールたちも1枚写真を撮ることにした。誰かシャッターを押してくれないだろうかとキョロキョロあたりを見回すアディールに、ひとりの人間の男が声をかけてきた。「私が撮ってさしあげますよ。」という男の厚意を受け、カメラを渡して撮影してもらう。列車が通るタイミングでパシャ、とフラッシュが光り、ウィーンとカメラから写真が出てきた。「どうです?これでいいですか?」カメラと写真を受け取ったアディールは「ありがとう」と言って写真に目を落とす。キサラギを中心に、後ろにアディールとザーンバルフ、前にドドルとパルポスが写っている。生き返しを受けた宿命の5人。「僕たち、ちょうどひと種族にひとりずつなんだね。」とアディールが言い「五つの種族、か。」と、ザーンバルフがつぶやいた。
アディールたちをじっと見ていた男が「私も撮ってもらっていいですか?」とカメラを出したので、アディールも喜んでそれを引き受けた。
「あなたも列車を見に来たんですか?」アディールがカメラを返しながら聞くと「いえ、私はバカンスで。列車を見に来たわけではなかったのですが、ここの景色はよくて、ついつい長居をしてしまいました。」と男は言った。
男はレノッホと名乗った。娯楽島ラッカランで、ゴーレックという島主の下で働いていたのだが、意見が合わないことがあり、家出のように黙って飛び出してきたのだという。行き先も決めずにうろうろしているうちに、この風車塔に辿り着き、ここの景色が気に入って長く居座ってしまった、と言った。時間が経って心の中のほとぼりがさめたレノッホは、ラッカランに戻ろうとしたのだが、いざ風車塔から出てみると、魔物に阻まれてなかなか戻れないというのである。そういう理由で、ラッカランに戻るのを先延ばししているうちに、ずいぶん長いこと風車塔に滞在してしまった、と。
「僕たちがラッカランまで送りましょうか?」と、アディールが聞いてみた。
「よいのですか?」とレノッホが言うので「みんな、どうだろう?」と、アディールは振り返る。
「私は構いませんわ。ラッカランにも行ってみたいと思っていましたの。」とキサラギが言うと「ワタクシも構いませんよ。」とパルポス。「俺もメギストリスに、そこまでこだわる理由はない。」とザーンバルフも頷き「おいらはアディールについていくぞ!」とドドルはぴょんと跳び上がった。
レノッホを連れた5人は、いま歩いてきた道を戻ってオルフェアへと向かう。
「それでレノッホさん。ゴーレックという人はどのようなかたなんですか?」道中でアディールが聞いた。
「うーん、なんと言いますか。とても変わった人なのです。小さなメダルが大好きで、たくさんの価値ある宝を持っているのですが、旅人からメダルと交換にその宝をあげてしまうのです。」
「メダル?そういえば、僕も何枚か持っている。」アディールは道具袋から数枚のメダルを取り出した。「こういうメダルですか?」
「そう!まさしくそれです!それが小さなメダルです。」
「これを集めている人がいたんですか。何の役に立つのかわからなくて、捨ててしまおうかと思ってたんですよ。」アディールの手の中で、チャラチャラとメダルの音が鳴る。
「それはもったいない!それでしたら、ぜひ我がメダルオーナーのところに来てください。きっと役に立つ物と交換することができますよ。」
「このメダルはそんなに価値のあるものなんですか?」
「いえ、全く。」
「え?でも、大切な宝と交換してもよいと思えるぐらいの価値があるんでしょう?」
「このメダル自体には価値も使い道もまったくありません。オーナーの道楽なのです。何の役にも立たないメダルを集めるのが好きで、それを持つ冒険者から、私財を投じて手に入れている。ゴーレック様はそういうお人なのです。」
「役に立たないものを集めるのが好き・・・?どこかで聞いたような・・・」アディールが振り返ると、キサラギとドドルが腕組みをしていた。「そういう人だれかいましたわね。」「誰だっけ?」
【続きを読む】
【前に戻る】
【目次】
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】
ドラクエブログランキングはこちら
↓

