カインの冒険日記 -140ページ目

カインの冒険日記

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「くそ!これじゃ魔兵たちが言ったとおりじゃないか!俺たちが何を言おうとも、王は耳を貸さない!」王の間を出たザーンバルフが床を蹴った。
「イッドの計画がここまで隙のないものだとは思いませんでしたわ。」
「おいらイッドのやつがもっとキライになったぞ!」
「しかし、こうなると突破口が見出せませんねぇ。」
「いったい、どうすればいいんだ。」
 アディールが頭を悩ませていると「ぼくにはわかっている。」とリュートが歩いて来た。
「きみはウソなどついていない。ぼくに力を貸してほしい。」
「フォステイル。」
「ぼくのことを知っていたんだね。きみの名前は・・・いや当ててみせよう。レーンから来たアディールだ。きみは・・・それに後ろの仲間たちも、見た目の種族とは何か違うようだね。」
 アディールの戸惑う表情を見ながらフォステイルは続けた。
 「ぼくは予知の能力の血筋をひいている。ぼくはずっと昔から予知していた。いずれ大いなる災いに見舞われるとき、アディールという旅人が現れ、この国を救うだろうと。今プクランドは、魔瘴によって滅びようとしている。王は王家の儀式を行おうとしているが、儀式の間はすでに汚された。そうだね?」
 アディールがこくりと頷くのを確認してまた続けた。
「ぼくには未来が見える。王の儀式では国は救えない。それどころか、このまま儀式をやれば、プクランドはさらなる災いに見舞われる。だが、ひとつだけ国を救う方法が残されている。アルウェ王妃のノートだ。ノートがあれば魔瘴から国を守ることができるはず。」
「アルウェのノートを探すのを手伝えばいいんだね。それで、なにか手掛かりはあるのかい?」
「アルウェ王妃はリンクル地方の別荘で亡くなったそうだ。突然むごい死に方をしたと言われている。もしかしたら、王妃は3つ目の願いをノートに書いてしまったのかもしれないな。ノートの願い事はひとりにつき3つ。別荘にいけば、なにか手掛かりが見つかるかもしれない。」
「リンクル地方。銀の丘の近くだ。行こう、フォステイル。」
「頼む、アディール。王が儀式を行う前にノートを見つけなければならない。急ごう。」


 メギストリスの城門を出ようとすると「来たな、アディール。」と横から声がした。
 黒ローブの男。
「ベルンハルト!」アディールが素早く短剣を抜いて構えた。
 そんなアディールを気にとめる様子もなく、ベルンハルトはリュートのプクリポを見ていた。
「ほう。フォステイルではないか、久しぶりだな。」ベルンハルトの言葉に、しかしフォステイルはきょとんとしている。
「きみは誰だ?ぼくはきみのことなんて知らない。」
「なんだ?私のことを忘てしまったのか?それはそうだな、もう500年も経つんだからな。ん?いや?500年間も生きていられるわけがない。お前は本当にフォステイルか?」
「きみは何者なんだ?ぼくはフォステイルだ。」
「ほーう。そう言うのならそれでもいいだろう。さて、アディール。よく来たな、と言いたいところだが、私の仕事はもう終わってしまったぞ。遅かったではないか。」
 そう言うベルンハルトをアディールが睨む。
「お前がイッドに入れ知恵したのか!?」
「入れ知恵などしていない。私は魔瘴石を与えただけだ。イッドはもともと魔瘴の研究をして、その知識を利用してプクランドを支配する算段をしていたのだ。長い時間をかけて王に取り入り、虎視耽々と機が熟すのを待っていた。感心なことではないか。」
「ホーローに聞いた。ベルンハルト、あんたは500年前、破邪舟の術を使ってふたつ目の太陽を止めようとしたんだ。」
「ほう。よく調べたじゃないか。」
「そして、それは報われず帰らぬ身となった。そう歴史書には書かれていた。」
「ふん。歴史家が知り得る情報などたかが知れている。あの場には私しかいなかったのだ。歴史家などに何がわかる。」
「あんたは破邪舟の術でグレンの人々を助けようとしたんだろ。なんでそのチカラを僕たちに向けるんだ!なんで冥王に向けないんだ!なんで破邪舟の術を残そうとしないんだ!」
「そうさせなかったのは人間たちだ!」ベルンハルトははじめて感情をむき出しにした。「お前になにがわかる!いや、わかろうはずがない。破邪舟の術が途絶えた無念さが、お前などにわかろうはずがないんだ!」
 アディールは、その剣幕にたじろいだ。ベルンハルトがそこまで激昂するとは思っていなかった。
「さあ、私に構っている暇などないのではないか?ここで戦うというのならそれでも構わぬが、お前たちは王の儀式を止めるという目的があるはず。ここで私を倒せばよいという話ではない。私はお前の戦略眼を見越してわざわざラッカランまで出向いてやったのだ。目先の無益な戦いに身を投じて、大局を見誤るような愚かな判断はしてくれるなよ。私を失望させないでくれ?」
 アディールは「くっ」っと言ってベルンハルトから目を切って街の出口へと足を向けた。短剣を鞘に戻すアディールを見て「よいのですか?」とパルポスが言う。
「いいわけじゃないけど、ベルンハルトの言うとおり僕たちが急いでやるべきなのはノートを探すことだ。イッドを倒しても、王を助けても、それでプクランドが救われることにはならない。もちろんベルンハルトを倒しても。」
「それに、私たちがイッドを倒すことだって楽なことではないですわ。プーポッパン王は、私たちよりもイッドのほうを信用していますものね。」
「ノートのチカラでイッドを倒すのか?イッドを懲らしめてプクランドをもとに戻させるのか?おいらよくわからないぞ。」
 わからないことは多いが、今はフォステイルを信じてアルウェの別荘に行くしかない。草原を走るリュートを先頭に、アディールたちはリンクル地方を目指す。





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目次
序章:誕生【1】【2】
1章:エテーネの民【1】【2】
2章:旅立ち【1】【2】
3章:ランガーオの戦士【1】【2】【3】
4章:ジュレット【1】【2】
5章:グロリスの雫【1】【2】
6章:赤のエンブレム【1】【2】【3】
7章:港町【1】
8章:嘆きの妖剣士【1】【2】
9章:風の町アズラン【1】【2】
10章:世界樹の約束【1】
11章:ガラクタの城【1】【2】
12章:五人目の男【1】
13章:団長の策謀【1】【2】【3】【4】
14章:娯楽の島【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】
15章:三つの願い【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】
16章:太陽の石【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
17章:白き者【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】
18章:恵みの歌【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
19章:錬金術師【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
20章:時渡りの術者【1】【2】【3】【4】
21章:ふたつ目の太陽【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】
22章:冥府【1】【2】【3】【4】【5】【6】【7】【8】【9】【10】【11】【12】【13】
終章:レンダーシアヘ【1】【2】



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